軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

〈第二層〉

星の祭壇ダンジョン・第二層。戦闘エリア。

階段を降りた先は、広いホールだった。天井に虚晶の照明。床は敷石。そして──中央に、円形の闘技場のような窪み。

【第二層・試練の間に進入しました】

【ウェーブバトル開始──全5ウェーブを突破せよ】

「ウェーブバトルか……」

「何ウェーブまでありますか?」ハルが杖を構えた。

「五だ。見聞録でも先のウェーブの構成は読めない。一ウェーブずつ対応するしかない」

【ウェーブ1/5──虚晶の歩兵×6 Lv82 HP:22,000】

六体の虚晶の歩兵が、床から結晶化して立ち上がった。人型。第一層の番兵より小型だが、数が多い。剣を持っている。盾はない。

「HPがやけに低いな」ゼクスが目を細めた。

「【属性なしモンスター】だからだろう。防御力と属性耐性が、桁違いに高い。──ゼクス、左三体を頼む。アストレア、右三体を受けてくれ」

「了解!」

「了解です!」

ゼクスが影に潜った。左の三体の背後に回り込み、星虚の短剣を振る。

一撃目。背後からの奇襲。

【クリティカルヒット! ダメージ:3,800】

「クソ……硬いな。どうなっている、ここのモンスターは!」

HP22,000歩兵に対して、一撃で二割弱。続けて二撃、三撃。影から出て即座に次の影に潜る。歩兵の防御力は異常だが、モンスターが振り返った時には、ゼクスはもう別の場所にいる。死角を付いて攻める、暗殺者の戦い方。

右側では、アストレアが聖剣ルミナスを構えていた。二重属性の斬撃。聖属性の金色と虚晶の透明な光が刃に纏われている。

【二重属性攻撃! ダメージ:5,200】

「一撃で四分の一! コーティングの効果がすごいですね、トワさん!」

「虚晶系の敵に虚晶の武器だからな。同系統の属性は、耐性を無視しやすい」

トワは見聞録で六体の歩兵の行動パターンを読んでいた。同時に、弱点をスキャン。

「弱点は第一層の番兵と同じ。胸の結晶核。ただし歩兵は核が小さい。──ゼクス、左から二番目のやつ、核が背中側に偏ってる。正面からだと当てにくい」

「了解。裏から行く!」

ゼクスが影潜りで歩兵の背後に回り、核を直接突いた。

【弱点クリティカル! ダメージ:7,600】

歩兵が砕けた。核を直撃すれば二倍ダメージ。一撃で三分の一以上飛ぶ。

アストレアも聖剣の突きで核を貫いた。

【弱点ヒット! ダメージ:9,400】

「アストレアの火力がエグいな。二重属性の弱点ヒットでほぼ半分か」

「聖属性と虚晶属性の相乗効果です。──ガルドさんに感謝します」

三分で第一ウェーブを殲滅した。タマキが全員のHPを確認。誰も被弾していない。

「全員無傷。──今のところは」

【ウェーブ2/5──虚晶の弓兵×4 Lv84 HP:18,000】

【虚晶の盾兵×2 Lv84 HP:30,000】

「弓兵が来た。遠距離攻撃──全員散開!」

弓兵が結晶の矢を放った。四本同時。一本がトワの頭上を掠めた。

「トワさん!」

「大丈夫だ、矢の軌道程度は見切れる、当たらない」

盾兵が弓兵の前に立った。前衛と後衛の陣形。盾兵のHPが30,000。硬い。正面から削るのは効率が悪い。

「ハル。弓兵の注意を引けるか」

「引けます! 導師の煙幕スキルで──!」

ハルが杖を振った。白い煙が弓兵の視界を塞ぐ。弓兵が混乱して矢を乱射する。盾兵がその矢を受けている。味方への誤射。

「盾兵が、味方の弓に当たってる!」

「虚晶のモンスターは連携が粗い。味方への誤射判定がある。敵の連携を崩せば、同士討ちを誘発できる」

「敵に同士討ちさせるなんて、性格が悪いですよ師匠」

「戦略的と言え」

盾兵がよろめいた隙に、ゼクスが背後から核を突いた。アストレアが正面から聖剣を叩き込む。挟撃。

【弱点クリティカル! ダメージ:7,200】(ゼクス)

【弱点ヒット! ダメージ:9,800】(アストレア)

盾兵が砕ける。一体撃破。残りの盾兵も同じ手順で。弓兵は煙幕が晴れた後にトワが弓で射抜いた。

【弱点ヒット! ダメージ:9,600】

弓兵のHP18,000が半分以上飛んだ。残りをゼクスが仕留める。

【ウェーブ2/5 クリア!】

「第二ウェーブ、五分。ペースはいいな」

第三、第四ウェーブも切り抜けた。敵のバリエーションが増える。虚晶の術士(遠距離魔法)、虚晶の暗殺者(ステルス接近)、虚晶の重装兵(HP50,000の壁役)。

第四ウェーブの暗殺者が、ステルスからタマキを狙った時──ルーナが反応した。

「──タマキ、左!」

ルーナが影から紺色の手を伸ばし、暗殺者の足元の影を掴んだ。暗殺者の動きが一瞬止まった。

「影の記憶で位置がわかる。この洞窟の影は古いから──全部、わたしが見える」

「ルーナが索敵してくれている。ステルス持ちの敵には、最高の対策だな」

「ルーナちゃんありがとう! 命の恩人です!」

「……えへへ。──役に立てた」

ルーナが少し嬉しそうだった。

【ウェーブ5/5──虚晶の隊長 Lv88 HP:85,000 +虚晶の護衛×4 Lv85 HP:25,000】

「最終ウェーブ。ボスと雑魚つきか……」

虚晶の隊長が現れた。番兵より二回り大きい。全身が金色の虚晶で覆われていて、両手に大剣を持っている。HP85,000。防御力や耐性も桁違いに高いだろう。これまでの雑魚とは格が違う。

「護衛を先に処理するか、隊長を集中するか」

「護衛が邪魔だ。先に片付ける」ゼクスが影に潜った。

「アストレア、隊長を引き受けてくれ。時間を稼ぐ」

「了解です。──聖騎士の盾で受けます」

アストレアが聖剣を掲げ、隊長の大剣を受け止めた。金属──いや、虚晶と聖剣がぶつかる音が響いた。衝撃でアストレアの足が床を滑る。

「重い──! さすがLv88!」

「受けきれるか」

「受けきります。三分は持ちます!」

三分。その間にゼクスとトワで護衛四体を処理する。

ゼクスが護衛の核を突く。トワが弓で弱点を射抜く。

【弱点クリティカル! ダメージ:11,400】(トワ・弓・霊薬バフ込み)

「師匠の弓、ダメージ上がってますね。ペンダントのスキャン精度で弱点がより正確に読めてるのでしょうか」

「ああ……核の中心点が見える。以前は核全体を狙っていたが、核の中の最も脆い点を直接射抜けるようになった」

護衛四体を二分で処理。残りは隊長のみ。

「アストレア、退け。──全員で叩く」

アストレアが後退。ゼクスが側面から、トワが正面から。

見聞録で隊長の行動パターンを読んでいた。大剣の振り下ろし。横薙ぎ。突進。三パターン。──そして、HP50%以下で新パターンが追加されるはず。

削り始めた。ゼクスの短剣とトワの剣が交互に入る。アストレアが隙を見て聖剣の二重属性を叩き込む。

HP50%を切った。

隊長が──両手の大剣を床に突き刺した。虚晶の結晶が床から噴き出す。

【虚晶の棘・全域攻撃!】

「跳べ!」

全員が跳んだ。床から突き出した結晶の棘が、立っていた場所を貫いている。

「【全域攻撃】か。──地面にいたらアウトだな」

「トワ。天井、天井にぶらさがれる場所がある」ルーナが影から伝えた。「天井の虚晶の照明、足場になる。影が教えてくれてる」

「ルーナ、ナイス。──全員、天井の照明に飛び移れ!」

六人が天井の虚晶照明にしがみついた。不安定だが、床の棘の射程外。

「天井にぶら下がるパーティ。……絵面がひどいですね、師匠」

「絵面はどうでもいい。生きていればそれでいい」

「師匠の美学はいつも『生存第一』ですよね」

「旅人はHP360で戦っている。美学の余裕はない」

床の棘が引っ込んだ。隊長がふらついている。大技の後の硬直。

「今だ。──全員、落ちろ!」

天井から六人が同時に落下した。落下の勢いを乗せた攻撃。ゼクスの短剣、アストレアの聖剣、トワの弓──三人の同時攻撃が隊長の核に集中した。

【弱点集中攻撃!】

【ゼクス:ダメージ 8,400】

【アストレア:ダメージ 12,600】

【トワ:クリティカルダメージ 13,200】

合計34,200。残りHP42,500から一気に削った。

「あと一割!」

隊長がよろめいた。最後の抵抗──大剣を振り回す。

ゼクスが影で回避。アストレアが盾で受ける。トワが隊長の背後に回り──

剣に持ち替え。旅立ちの剣。ATK48の初期装備。だがバフを重ねた上で、核の最弱点を三連斬。

【弱点クリティカル三連! ダメージ:4,800、5,100、5,400】

合計15,300。

隊長が──砕けた。金色の虚晶の破片が、花火のように散った。

【ウェーブ5/5 クリア!】

【第二層・試練の間を突破しました!】

【全員のHP・MPが回復します】

「クリアだ。──全員、怪我は」

「ゼロです。全員無傷です!」タマキが確認した。「薬を一本も使ってません。──初めてですよ、トワさんのパーティで、薬ゼロのダンジョンなんて」

「それは……俺が無茶をしなかったからか?」

「そうです。無茶をしなければ薬は減りません。学習しましたね」

「成長したと言え」

「成長しましたね、おめでとうございます」

「褒められた気がしないぞ」

虚晶の隊長の残骸から、アイテムがドロップした。

【星の柱・欠片(1/3)を入手しました】

「柱の欠片。──三分の一。残り二つはこの先にあるのか」

「第三層にボスがいるはずだ。そこでもう一つ。最後の一つは──わからない」

第三層への階段が現れた。下へ降りていく。