軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

〈星の祭壇〉

翌日。回廊の転送でオルテリアに戻った。

リーリアの案内で、星読みの塔から南へ。山岳地帯に入る。

「この辺り、子どもの頃に一度だけ来たの。星読みの修行で山に入って、迷って──洞窟を見つけた。怖くて、すぐ逃げたけど」

「何が、怖かったんだ?」

「洞窟の中から──音が聞こえたの。ゴーンって。鐘の音みたいな」

「鐘の音──祭壇の音か」

「かもしれない。十四年間、ずっと気になってた」

山道を登る。新大陸の山岳地帯は、表の世界の山とは植生が違う。星花が岩の隙間から咲いている。空気が澄んでいて、見通しがいい。

二時間登ったところで──洞窟の入口が見えた。

岩壁に開いた穴。高さ三メートル、幅二メートル。入口の周囲に原初の文字が刻まれている。そして──入口の上部に、星の紋章。壁画で見た、一つ目の祭壇のマークと一致する。

【星の祭壇・入口を発見しました】

【推奨レベル:Lv80以上】

【パーティ上限:6人】

「推奨レベル80。──俺はLv1だが」

「師匠は毎回推奨レベルを無視してますからね」

「無視ではない。見聞録で補っている」

「補い方が異常なんですよ」

洞窟に入った。

最初は狭い通路。天井が低い。だが百メートルほど進むと──広い空間に出た。

天然の鍾乳洞──ではなかった。加工された空間。壁に星の紋章が等間隔に並んでいる。床は敷石。回廊と同じ古代の建築。だが、回廊より古い。原初の文字が壁に刻まれている。

「ここ──回廊より古い建築だ。星王朝の前の文明が作ったものだ」

見聞録でスキャン。ダンジョンの構造が──少しずつ浮かび上がる。

「三層構造。第一層が探索エリア。第二層が戦闘エリア。第三層が──祭壇の間」

「典型的なダンジョン構成ですね」ハルが地図を描き始めた。

「ああ。だが中身は未知だ。──行くぞ」

第一層。探索エリア。

分岐が多い迷路型のダンジョン。見聞録でマッピングしながら進む。壁の紋章がヒントになっている。星の紋章が付いている通路が正解ルート。付いていない通路はデッドエンド──もしくはトラップ。

「師匠。右の通路に紋章がありません」

「左だ。──待て」

見聞録のスキャンが異常を検知した。左の通路の床に──圧力板がある。踏むと天井から何かが落ちてくる仕組み。

「トラップだ。床の圧力板。左の通路は正解ルートだが、罠が仕掛けてある」

「紋章があっても安全じゃないってことですか。意地悪ですね」

「試練だからな。簡単に通してはくれない」

トワが圧力板の位置をマーキングした。全員に共有する。

「ここと、ここと、ここ。踏むな」

「三つもあるんですか」

「四つだ。もう一つ、壁の中に隠れている。触れると壁ごと崩れる」

「よく見えますね」

「ペンダントのスキャン範囲拡張のおかげだ。──ガルドに感謝しろ」

トラップを避けながら進む。ゼクスが先行して影の中から安全確認。アストレアが後方を守り、タマキが全員のステータスを監視。ハルがマッピング。リーリアが壁の文字を読む。トワが全体を指揮しつつ見聞録で索敵。パーティの連携が円滑だった。

「ゼクス。次の部屋、生体反応が二つ。Lv85前後」

「了解。──先に仕掛ける」

ゼクスが影に潜った。影潜り。部屋の中に入って──二体のモンスターの背後を取った。

【虚晶の番兵 Lv85 HP:35,000 属性:なし ×2】

人型のモンスター。虚晶で構成された騎士の姿。透明な身体に、金色の光が脈打っている。剣と盾を装備している。

「虚晶のモンスター。──番兵か。祭壇を守っている」

ゼクスの星虚の短剣が閃いた。背後からの一撃。

【8,200】

「通る。虚晶の敵に虚晶の武器が有効──同属性だからか」

番兵が振り向いた。剣を振り下ろす。ゼクスが影で回避。アストレアが前に出て聖剣で受けた。

【ガード成功! ダメージ軽減!】

「聖属性と虚晶のコーティング──ダメージ軽減が大きい!」

「二重属性の防御が効いてるな。ガルドの仕事に感謝だ」

トワが見聞録で番兵の構造をスキャンした。弱点──胸部の核。虚晶の結晶核が動力源になっている。そこを狙えば一撃。

「ゼクス。胸の核を狙え」

「ああ、言われずとも見えている!」

ゼクスの短剣が、核を突き刺す。番兵が砕けた。虚晶の破片が散らばる。

【虚晶の番兵を討伐しました!】

もう一体はアストレアが聖剣の二重属性攻撃で粉砕した。

【虚晶の番兵を討伐しました!】

「二体同時処理。──連携が良くなったな」

「新大陸の回廊で一緒に走った仲ですから」アストレアが聖剣の刃を確認した。「コーティング、少し減ってますが問題ないです」

タマキが番兵の破片を拾った。

「この破片──虚晶の素材として使えそうです。精製すれば星虚晶と同等のものが作れるかも」

「拾ってくれ、全部」

「はい、薬師は素材を見捨てませんよ」

ルーナが影の中で囁いた。

「……この先。もっと強いのがいる。影が教えてくれてる」

「影が教える?」

「この洞窟の影は──古い影。千年以上前からここにある影。その影に、記憶が残ってる。『もっと奥に、もっと強い番兵がいる』って」

「影に記憶が残るのか。──ルーナの能力、ソルシアの時より成長しているな」

「成長──したのかな。【月夜の帳】を使うようになってから、影の声が聞こえるようになった。セレスと力を合わせたおかげ」

「セレスのおかげ?」セレスが肩の上で首を傾げた。

「うん。セレスの月光が、わたしの夜を強くしてくれた。だから──影の声が聞こえる」

「ルーナ。それ、うれしい。セレスのちからが、ルーナのちからになったの、うれしい」

「わたしも嬉しい」

「じゃあ、おそろい。セレスとルーナ、おそろいのちから」

「おそろい。……うん。おそろい」

二人の精霊が微笑み合った。

「いい光景だな」ゼクスが珍しく穏やかな声で言った。

「ああ。──いい光景だ」

第一層をクリアした。第二層──戦闘エリアへの階段が見えている。

「行くぞ。試練は始まったばかりだ」

「はい!」