軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

〈計画〉

虚空の門の地下施設を拠点にして、今後の計画を立てた。

壁画と石碑の情報を元に、リーリアが新大陸の地図にマッピングした四つの祭壇の位置。

「整理するぞ」

トワが全員に切り出した。

「一つ目。星の祭壇。場所はオルテリアの星読みの塔の近く──といっても、塔から南に十五キロほど離れた山岳地帯。リーリアが案内できる」

「知ってる場所だよ。子どもの頃に迷い込んだことがある。すぐ引き返したけど──洞窟の入口があった」

「洞窟が、ダンジョンの入口か」

「たぶん。あの頃は怖くて入れなかった。今なら──入れる」

「二つ目。月の祭壇。海底都市の方角。ダリオに海路の確認を頼む。海底にある可能性が高い」

「海底か──潜水装備が要るな。タマキの星海の呼吸薬の出番だ」

「三つ目。太陽の祭壇。ナハルの南西。砂漠の奥地。まだ踏破していない。砂漠の熱と乾燥への対策が必要だ」

「砂漠用の装備と薬を準備します」タマキがメモを取った。「耐熱薬と脱水防止薬。あと日焼け止め」

「日焼け止めはゲームに必要なのか」

「VRの体感フィードバックで暑さを感じるんですよ。日焼け止めは……気分の問題です!」

トワはタマキを見た。……親指を立てている。なぜか肩に乗ったセレスも親指を立てている。

トワはあえて気にしないことにした。

「四つ目。紋章なしの祭壇。北東の未踏エリア。情報がゼロ。何があるかわからない」

「情報ゼロのエリアに行くのか」ゼクスが眉を上げた。

「行く」

「お前は情報ゼロの場所に行くのが、本当に好きだな」

「好きじゃない。必要だから行くだけだ」

「好きだろう。目が輝いているぞ」

「輝いていない」

「輝いてますよ」ハルが追撃した。

「トワ、かがやいてる」セレスも。

「トワ……目が……」ルーナも。

「おい待て、俺の目を観察するのをやめろ」

トワはやりづらそうに目をそらした。

話を戻して、攻略順を決めた。

「近い場所から順にやる。まずは星の祭壇。リーリアが案内できる。次に月の祭壇。ダリオと合流して海底を探索。三番目に太陽の祭壇。砂漠の準備を整えてから。四番目は──他の三つをクリアした後に」

「四つ同時進行は無理なんですか?」ハルが聞いた。

「無理ではないが、パーティを分割すると一つ一つの戦力が薄くなる。試練の内容がわからない以上、全員で挑む方がいい」

「了解です。──じゃあ、明日から星の祭壇ですね」

「ああ。オルテリアに戻って、リーリアの案内で山岳地帯に入る」

リーリアが地図を片付けながら言った。

「トワ。一つ聞いていい?」

「何だ」

「四つの祭壇を全部クリアして、門が開いたら──その先に何があると思う?」

「わからない。行ってみないと」

「また、それ」

「また、それだ」

「その答え、何回目?」

「数えていない」

「わたしは数えてる。今日だけで三回目」

「数えるな」

「星読みは記録するのが仕事だよ。──トワの台詞も、記録対象」

「ハルと同じことを言うな」

ハルが「同志!」とリーリアに手を差し出した。リーリアがハイタッチで応えた。導師と星読みの記録者同盟が結成された。トワはため息をついた。

夜。虚空の門の地下施設で野営。

タマキが虚空の泉の水で作ったスープを全員に配った。虚花の葉を刻んで入れた即席スープ。

「これ──美味しいですね」アストレアが目を丸くした。

「虚花の成分が出汁になるんです。ほんのり甘くて、体が温まる。──新しいレシピ開発できました。『虚花のスープ』」

【新レシピ「虚花のスープ」を開発しました!】

【効果:HP小回復+満腹度回復+全属性耐性+3%(30分)】

「属性耐性がつくスープだと!?」

「料理に全属性耐性がつくのは珍しいです。虚晶系の素材だからでしょうね。──量産できたら、パーティ全体の底上げになります」

「タマキ。お前は本当に──」

「天才じゃないです。BCOの薬師を真摯にやってきただけです」

「同じ台詞を何度も聞いた」

「何度でも言います。事実ですから」

「誰かの受け売りか、それ?」

「誰かのじゃなくて、トワさんの、ですよ」

スープを飲みながら、ルーナが影から手だけ出してカップを受け取った。

「ルーナちゃん、外に出て飲まない?」タマキが声をかけた。

「……出る。──ここの光は平気だから」

ルーナが影から出てきた。全身。紺色の髪。紫の瞳。スープのカップを両手で包んで、ふーふーしている。

「ルーナ。ふーふーしなくても、そこまで熱くないから火傷しないぞ」ゼクスが指摘した。

「知ってる。──でも、ふーふーしたい。千年間、温かいものを飲む機会がなかったから。ふーふーすることが……たのしい」

「じゃあ、好きなだけふーふーしろ」ゼクスが言った。

「うん。──ふーふー」

「ルーナ、ふーふーしすぎ。もうぬるいよ」セレスが覗き込んだ。

「ぬるくなっても、ふーふーする。──儀式だから」

「ぎしき。──セレスも、やる。ふーふー」

二人の精霊がスープにふーふーしている。とっくに冷めているスープに。

「タマキさん。温め直しますか?」ハルが聞いた。

「いえ……冷めたスープにふーふーしてる精霊が可愛すぎて、温め直すのがもったいないです」

星空の下。虚空の門の地下で。冷めたスープにふーふーする精霊二人を眺めながら、六人と一匹が夜を過ごした。