軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

〈百二十八体〉

海底都市アビスの再探索。

前回は排水路で図書館まで迂回した。今回の目標は中央区画。精製設備がある場所。排水路が通じていない区画。つまり、百二十八体の守護者と向き合う必要がある。

メンバーはトワ、ゼクス、タマキ、リーリア。それにダリオの航海士チーム四人。合計八人。セレスは陸上待機。水中はもう嫌だそうだ。

【水中行動可能時間:105分】

「百五分で中央区画の精製設備を見つけて、必要な情報を持ち帰る。時間は十分あるが、敵が多い」

「百二十八体を全部倒すのか」ダリオが聞いた。

「全部は倒さない。倒すのは最小限にして、すり抜ける」

「すり抜けるって、あの密度で?」

「前回の図書館スキャンの中に、都市の警備シフトのデータがあった。守護者は全体が一斉に動いているわけではなく、八体ずつの班に分かれて巡回している。班と班の切り替えタイミングに三十秒の空白がある」

「三十秒の空白! その間に移動するのか」

「ああ。三十秒あれば一区画分は移動できる。中央区画まで七区画。七回の空白を繋げば、戦闘なしで到達できる」

「計算上はな。一回でもタイミングを外したら」

「八体に囲まれる」

「それは避けたいな」

見聞録で巡回パターンをリアルタイム解析しながら、海底都市の中を進む。守護者の位置を赤い点として視界にオーバーレイ表示。赤い点が移動し、消え、また現れる。パターンが見える。

「今だ。一区画目」

八人が一斉に移動。壁際を走り、建物の影に滑り込む。三十秒。次の班が巡回を開始する前に隠れた。

「セーフ。次の空白まで四十五秒」

「四十五秒待つのか」

「待つ。焦るな。呼吸を整えろ」

水中で壁に背中を預けて待つ。守護者の足音が石畳を叩く音が、水を通して伝わってくる。重い足音。規則正しい。機械的な巡回。

リーリアが壁に張り付きながら、建物の装飾を食い入るように見ている。

「リーリア。観光するな」

「ごめん。でもこの彫刻、古代星王朝の中期のものだよ。教科書でしか見たことなくて」

「帰りに見ろ。今は集中しろ」

「はい……」

テンが光っていない。守護者は闇の存在ではない。純粋なシステムの防衛兵器。テンの闇感知は反応しない。見聞録だけが頼り。

「空白。二区画目」

移動。隠れる。待つ。移動。隠れる。待つ。

二区画目の隠れ場所は建物の入口の窪みだった。八人が体を寄せ合って、狭い空間に収まる。水中だから呼吸音はないが、装備がぶつかる音が気になる。

「タマキ、薬瓶がカチャカチャ鳴ってるぞ」ゼクスが小声で言った。

「すみません。布で巻きます」

「次からは、最初から巻いておけ」

「次があるんですか」

「あるだろうな。この手の探索は一回で終わらない」

三区画目でアクシデントが起きた。

ダリオの航海士チームの一人が、角を曲がった瞬間に守護者とはちあわせた。空白のタイミングが数秒ずれていた。巡回パターンに例外がある。

「見つかった!」

守護者が反応。光の槍を構える。

「一体だけだ。ダリオ、三秒で黙らせろ」

「了解!」

ダリオが潮流斬りで守護者の関節を切断。水中ではダリオの方がトワより速い。三秒で行動不能にした。

だが、倒した守護者が光の信号を発した。周囲の班に警報。

「警報が──」

「走れ! パターンが崩れた、ここからは時間勝負だ!」

隠密行動から一転。全力疾走。水中を蹴って、建物の間を縫うように駆ける。

守護者が集まってくる。通路の前方に三体。後方に二体。挟まれた。

「前を抜く。ゼクス、俺が二体引きつける。お前が一体を抜けろ。後方はダリオに任せる」

「了解」

トワが前方の守護者二体に向かって突進した。槍を水中で回転させ、水流の盾を作る。守護者の光弾を水流で逸らしながら接近。二体の間をすり抜ける瞬間に、両方の関節を槍の石突で打った。

【損傷により、守護者の行動が2秒間停止しました】

「二秒で抜けろ!」

ゼクスが影のように滑り込み、停止した守護者の間を通過。タマキとリーリアが続く。

「リーリア、大丈夫か!」

「大丈夫! 走るのは得意! 泳ぐのは初めてだけど!」

「泳ぐと走るは違うぞ!」

「細かいことは、気にしないの!」

後方ではダリオが潮流斬りで守護者を押し留めている。航海士の水中戦闘力が存分に発揮されている。

「ダリオ! 追いつけ!」

「先に行け! こいつらは俺が抑える!」

「無茶するな。三十秒で離脱しろ」

「航海士を舐めるなよ! 二十秒で十分だ!」

七区画目。中央区画の入口が見えた。大きな扉。星の紋章。

「リーリア! この扉の文字を!」

リーリアが扉に張り付いた。泡を吐きながら文字を読む。

「『知の核心。許可なき者は入るべからず。ただし──学徒の証を持つ者は、この限りではない』」

「学徒の証?」

「わたしが持ってる! 星読みは古代星王朝の学徒の後継者だから!」

リーリアが額の紋章に手を当てた。紋章が光り、扉が反応。

【星読みの血統を認証──中央区画を開放します】

「開いた!」

八人が中央区画に飛び込んだ。扉が閉まる。守護者が中には入ってこなかった。中央区画は学徒の領域。守護者の管轄外。

「助かった……」ダリオが壁にもたれた。「ギリギリだったな」

【水中行動可能時間:残り71分】

「七十一分ある。十分だ」

中央区画は静かだった。守護者がいない代わりに、壁の星の紋章が淡く光っている。部屋がいくつも並んでいる。研究室。実験室。そして──

「あった」

一番奥の部屋。扉に「精製室」と星読みの文字で書かれている。リーリアが読んだ。

「精製室。【深淵の根】のエネルギーを精製するための部屋。ここだよ、トワ」