軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

〈星の試練〉

南の星峰から下山し、三日かけてオルテリアに戻った。

古代星王朝の遺跡、試練の扉の前。

星の欠片を三つ、扉にかざした。北の温かい欠片。東の熱い欠片。南の柔らかい欠片。──三つの光が、扉の紋章に吸い込まれていく。

【星の欠片×3が認証されました】

【試練の扉を開放します】

扉が、ゆっくりと開いた。重い石の音。千年以上開かなかった扉が、動く。

「開いた──」

扉の向こうは、暗かった。だが、一歩踏み入れると、天井に星が灯った。無数の小さな光。プラネタリウム。──いや、深星の森の苔と同じ仕組みだ。遺跡の天井が夜空を映している。

部屋の中央に、石の台座がある。台座の上に──何もない。ただの平らな石。

【星の試練:「星読みの問い」】

【この試練は戦闘ではありません】

【星読みの資格者が、旅人に問いかけます】

【旅人は、己の旅で得た答えを返してください】

「星読みの問い──リーリア、お前が問いを出すのか」

リーリアが台座の前に立った。十四歳の少女の顔が──変わっていた。星読みの顔。真剣な目。

「わたしが、問いを出す。古代の星読みから受け継いだ問いを、三つ」

「三つか。──知の試練と同じだ」

「似てるけど、違う。知の試練には正解がある。星の試練には──正解がない。あなたの答えが、あなたの答え」

「正解がない試練……」

「でも、星が認めなければ、祝福は完成しない。正解はないけど、星は嘘を見抜く」

リーリアが──目を閉じた。額の星の紋章が、光った。

「第一の問い」

リーリアの声が、変わった。十四歳の声ではない。もっと深い、古い声。──古代の星読みの声が、リーリアの口を通じて語っている。

「旅人よ。──お前は、なぜ歩く」

最もシンプルな問いだが、最も答えるのが難しい問い。

なぜ歩くのか。七千時間。三年間。世界の全てを歩いた、なぜ。

トワは、考えた。

始まりの町で歩き始めた理由。あの頃は、ゲームが面白かったから。単純にそれだけだった。だが今は──

「──見たいものがあるからだ」

「見たいもの、とは」

「まだ見ていない景色。まだ会っていない人。まだ知らないこと。世界には、俺が知らないことがまだある。だから歩く。それだけだ」

天井の星が一つ、明るくなった。

「第二の問い。──旅人よ。お前の旅に、仲間は必要か」

「必要だ」

即答だった。

「最初は、一人でいいと思っていた。一人の方が速い。一人の方が楽だ。──だが、間違いだった」

「なぜ、間違いだったのか」

「一人で見る景色と、誰かと見る景色は……同じ場所でも違うものが見える。セレスがいるから気づけたことがある。タマキがいるから助かった場面がある。ゼクスがいるから戦えた敵がいる。──仲間は、俺の目を増やしてくれる」

セレスが肩の上で、角をぽわっと光らせた。声は出さなかったが、光が返事だった。

天井の星が──もう一つ、明るくなった。

「第三の問い」

リーリアの目が──開いた。古代の声と、リーリア自身の声が重なっている。

「旅人よ。──お前は、この旅の終わりに、何を残す」

旅の終わり。──BCOの旅に、終わりがあるのかは知らない。だが、いつかはログアウトする日が来る。その時、何が残るのか。

「……道だ」

「道?」

「俺が歩いた道は、後ろから来る者の地図になる。始まりの町でグランが待っていたように。ヴィアがオアシスにいたように。カレンが聖都に戻ったように。俺が歩いた道を、次の旅人が歩く。それが、俺の残すものだ」

天井の星が──三つ目。

三つの星が、一直線に並んだ。輝きが増していく。部屋全体が、星の光に満たされた。

リーリアの額の紋章が、強く光った。

「星が──認めた」

リーリアの手が、トワの手に重なった。今度は、以前とは違った。手のひらから、星の力が本当に流れ込んでくる。温かく、深く、大きな力。

【星の試練──突破しました】

【星読みのリーリアから「星の祝福」を受けました──完了】

「星の祝福が……完成した」

「残りは、太陽の祝福ですね」タマキが確認した。

「ここを探索したら、聖都に戻る必要があるか」

「帰りますか?」

「いや……まだ条件不明の鍵がある。それが分からない限り、【深淵】へ急いでも仕方ない」

「帰らない、の?」

リーリアの不安そうな声に、トワは、

「帰らない。まだまだ、やることがあるからな」

リーリアが、ぱっと顔を輝かせた。

「じゃあわたし……まだ案内できるね。南の海岸線には星珊瑚の浜があって、夜になると海全体が光るの。あと、オルテリアの北に──」

「一つずつだ。全部回る。焦って旅をする必要はない」

「焦らない……トワさんらしいですね」

セレスが肩の上で大きく頷いた。

「トワ、だいさんせい。──あたらしいばしょ、もっとあるく。おやつも、もっとたべる」

「おやつは本題ではない」

「ほんだい、です」

テンがブーツの上で光った。一回。賛成の光。

リーリアがトワの手を両手で握った。

「トワ。この大陸を、全部見せてあげる。星珊瑚の浜も、双子星が一番きれいに見える丘も、砂漠の地下水脈も──全部!」

「頼む、案内役はお前だ」

「任せて、わたし旅人じゃないけど、案内くらいできるから」

新大陸アストラム。踏破率30%。残りはまだ、70%もある。