軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

〈砂と星〉

オルテリアを拠点に、新大陸の探索を続けた。

山脈の北側に、砂漠が広がっていた。ルミナリアの光の荒野とは違う。白い砂ではなく、金色の砂。そして砂粒の一つ一つが──微かに光っている。星の砂。

【星砂の砂漠に到達しました】

【アストラム踏破率:18.7%】

「また砂漠か」ゼクスが呟いた。「ルミナリアでも、砂漠を歩いたが──」

「全然違うだろう。──この砂、踏むと光るぞ」

足を踏み出すたびに──足元が淡く輝く。星の砂が体重で圧縮されると発光する。六人の足跡が──金色の光の道になっていく。

「わわっ……!」タマキが振り返って足跡を見た。「わたしたちの歩いた跡が光ってます!」

「セレスのあしあとは──ない。かたにのってるから」

「セレスちゃんは、足跡残らないんだ」

「のこらない。でも、トワのあしあとは、セレスのあしあとでもある。いちぶだから」

「その理屈、新大陸でも使うんですね」

砂漠を歩いていると、前方にプレイヤーの集団が見えた。十人ほど。装備が見たことのない形をしている。

「あれ──新職業?」ハルが目を細めた。「大型アプデで追加された、『航海士』クラスの人たちじゃないですか?」

新大陸と同時に実装された新職業「航海士」。船の操縦と海戦に特化したクラス。旅人と同じく汎用型だが、海上に特化している。

集団の一人が──トワに気づいた。

「おい……あれ、トワさんじゃないか?」

「トワさんだ!」

「うわやべ、本物じゃん!」

走ってきた。日焼けした男。航海士の装備──船乗りの革ジャケットに、腰にサーベル。

「初めまして! 俺、航海士のダリオ。──あんたの配信、ずっと見てたんだ!」

「配信はしていない。ミコトの配信や、ゼクスのアーカイブに映ってるだけだ」

「それそれ! ミコトさんの配信で! いやー、リアルで会えるとは! あ、リアルじゃないか。ゲームだけど」

ダリオは陽気な男だった。航海士の集団のリーダーらしい。大型アプデ初日から新大陸に乗り込み、砂漠を探索していたという。

「俺たち航海士は海が本職なんだが、砂漠にも来てみたんだ。で、困ってる」

「何に困っているんだ」

「モンスターの倒し方がわからん。星属性ってのが全然わからなくて、攻撃が半減する。見聞録もないし」

「そうか……航海士には見聞録がないか」

「ない。航海士のスキルは【海図】と【潮読み】。海ではめちゃくちゃ強いんだが、陸だとただの人だ」

「海では強いのか?」

「海のモンスターなら任せてくれ。陸のモンスターは、正直お手上げだ」

トワは少し考えた。

「取引しないか。俺が陸のモンスターの攻略法を教える。お前は海の情報を教えてくれ。この大陸は海にも未踏エリアがあるだろう」

「海の情報──! あるよ! めちゃくちゃある! 海底神殿とか、巨大渦潮とか、海上都市とか──」

「海底神殿?」

「ああ。砂漠の沖合に、海の底に沈んだ神殿がある。潜水装備がないと行けない。──中に何があるかはまだ誰も見ていない」

「……面白いな」

「でしょ。──で、攻略法、教えてくれるの?」

「教える。星属性のモンスターは、弱点を突けば属性半減を上回る。弱点は星の光点が集中している場所だ。目で見たらわかる」

「光点の集中場所──! なるほど! そういうことか!」

ダリオが仲間に振り返った。

「おい、聞いたか! 光点の集中場所が弱点だ! 目で見えるらしいぞ!」

「マジか!」

「やってみよう!」

航海士の集団が、早速砂漠のモンスターに挑み始めた。弱点を狙う。当たる。ダメージが通る。

「通った──! 倒せる! トワさんありがとう!」

「礼はいらない。海の追加の情報があったら、後で聞かせてくれ」

「任せとけ!」

砂漠を半日歩いた先に──オアシス都市があった。

【星砂のオアシス都市ナハルに到着しました】

【アストラム踏破率:22.4%】

ナハルは活気のある街だった。砂漠の真ん中とは思えないほど緑が多い。中央にオアシスの湖があり、その周囲に建物が密集している。屋根が丸い。壁がカラフル。──異国情緒がある。

そしてプレイヤーが多い。一万人以上。

砂漠を抜けたプレイヤーたちが、オアシス都市に集まっている。

「プレイヤーが、もうこんなにいるのか」

「砂漠は直線ルートだから、到達者が多いんですね」タマキが見回した。

街の中に、露店が並んでいた。プレイヤーが出している露店。新大陸の素材を売買している。

「プレイヤー間取引が、もう始まってる」

「新素材の相場がまだ定まってないから、今が稼ぎ時だな」ゼクスが露店を眺めた。

「星の粉一個で500Gか。──表の世界では手に入らないから、値段が高い」

「タマキ、お前の星果実のジャムは?」

「うーん……売れるでしょうか?」

「新大陸の料理バフアイテムは、まだ出回っていない。お前が最初の供給者になれるぞ」

「じゃあ……露店、出していいですか!」

「ああ、出せ」

タマキが露店を開いた。星果実のジャム、光砂のスープ(新大陸版)、星の粉の万能バフ料理。

三十秒で、行列ができた。

「タマキさんの露店だ!」

「星果実のジャム、なんか友好度が上がるやつでしょ!?」

「光砂のスープの新大陸版か……買う買う!」

「万能バフ料理は、いくら?」

「作り方を教えてくれ!」

「作り方は、企業秘密です!」

タマキが忙しそうに、でも嬉しそうに、アイテムを売っている。

ナハルの街を歩いていると、NPCの老人に声をかけられた。

「お前さん──海の向こうから来た旅人かい」

「ああ」

「旅人は、この街では珍しい。昔はいたんだがなあ。星読みが全部を案内してくれるようになってから、自分で歩く者がいなくなった」

「昔は……旅人がいたのか」

「いたとも。わしが子供の頃には。『星巡りの旅人』と呼ばれていた。星を頼りに大陸を歩く者たち。だが……もう何百年も見ていない。いまじゃあ、旅人という言葉すら忘れ去られた」

【ナハルの長老サディクと会話しました。友好度が上昇しました:0/10 → 1/10】

「星巡りの旅人……」

「お前さんが旅人なら……西の丘に行ってみるといい。昔の旅人たちが、何かを残している。わしにはわからんが……旅人ならわかるかもしれん」

西の丘。──探索先が増えた。

「トワさん。この大陸にも、旅人の歴史があるんですね」

「どの世界にも、歩く者はいる。名前が違うだけだ」

「では、これから名前を残しますか?」

「残そうとはしない。結果的に残るのなら、受け入れる」

「トワさんらしい言葉ですね」

新たな都、新たなエリア。

みんなで歩みを進めていく。