軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

〈古代星王朝〉

山脈を越えた。三日間にも亘って山を越える。

標高が上がるにつれて植物が変わり、空気が変わり、星の光が強くなる。高山帯では──昼間でも星が見えた。

「昼間に、星が見えるのか……」

「標高が高いと、星の力が強くなるの。この大陸の頂上に近づくほど、星に近い」

山の向こうに、遺跡が見えた。

巨大な石造りの建造物。ピラミッドのような形だが──表面に星の紋章が無数に刻まれている。風化しているが、威容は健在。

【古代星王朝の遺跡に到達しました】

【アストラム踏破率:15.3%】

「これが──古代星王朝」

遺跡の入口に、結界が張られていた。透明な光の壁。触れると──弾かれる。

「結界だ。──星岩の心臓を使えるか」

トワが星岩の心臓を結界に近づけた。鉱石が──反応した。虹色の光を放ち、結界に共鳴する。

【星岩の心臓が結界と共鳴しています】

【結界を解除しますか? ──「はい」】

結界が──消えた。入口が開く。

遺跡の内部は暗いが、壁に刻まれた星の紋章が自ら光を放っていて、足元は見える。

「自動照明……千年以上前の文明なのにハイテクだな」ゼクスが見回した。

「ハイテク……? 星の力で光ってるの、普通のことだよ」リーリアが訂正した。

「この大陸に、電気の概念はないのか」

「電気って、何?」

「……話が噛み合わないな」

遺跡の奥に進むと、壁画があった。

巨大な壁画。遺跡の一番奥の、大広間の壁全面を覆っている。

「これは──」

壁画に描かれているのは、世界の成り立ち。

最初の絵。一つの大地。一つの空。一つの世界。そこに、三つの光がある。金色の光(太陽)、銀色の光(月)、虹色の光(星)。

「三つの光──太陽と、月と、星」

「ソルシアの壁画には太陽と月しかなかった。──ここには星がある」

次の絵。三つの光が分かれていく。太陽が一つの世界を照らし、月がもう一つの世界を照らし──そして星が三つ目の世界を照らしている。

「三つの世界──表の世界が太陽。ソルシアが月。そして──この新大陸が、星」

「三つの世界は別々の光で照らされていたのか」ゼクスが呟いた。

次の絵。三つの世界が──離れていく。間に、【黒い空間】が生まれる。何もない空間。虚無。

「【深淵】だ。三つの世界が分かれた時に……分離しきれなかった部分が、【深淵】になった」

「アルヴァの手記に書いてあったことと同じだ。壁画で裏付けが取れた」

そして──最後の壁画。

三つの世界と深淵の図の上に、大きく描かれた紋章。三つの光が、一点で交わっている。

太陽と、月と、星。その交点に──文字。

トワが見聞録で翻訳した。

【「三つの光が一つになる場所──そこに、深淵への門がある。門を開くには、三つの世界の祝福が必要。太陽の祝福。月の祝福。星の祝福。──しかし、祝福だけでは門は開かない。門を開く最後の鍵は──(以降、壁画が欠損して読めない)」】

「三つの祝福──」ハルが声を上げた。

「月の祝福は──セレスだな。間違いない」

セレスがトワの肩の上で角を光らせた。

「セレスはつきのせーれー。つきのしゅくふくは、もうトワにある」

【深淵への門の開放条件:月の祝福──達成済み】

「じゃあ太陽の祝福は──アストレアの光か? カレンの聖属性か?」

アストレアが聖剣ルミナスに手を触れた。──だが、何も起きなかった。

「……反応がありません。わたしの祈りは第四位階ですが──祝福とは、違うようです」

「祝福は……スキルや属性とは別物だ。月の祝福もセレスのスキルではなく、セレスとの契約そのものが祝福になっている」

「つまり……太陽の祝福は、太陽の力そのものを持つ者から受ける必要がある」ゼクスが推測した。

「カレンだ」トワが言った。「カレンは聖王だった。ルミナリアの太陽そのもの。──だがカレンは聖都にいる。同行できない」

「聖都に戻って受けるしかないのか」

「おそらく。──だが今ではない。新大陸でやるべきことがまだある」

壁画の続きを見た。星の祝福についての記述がある。

【「星の祝福は──星読みの一族が与える。ただし星の祝福は、星の試練を越え、星の力を身体に宿した者にのみ、真の祝福が降りる」】

「星の試練──?」

リーリアが壁画を見つめていた。

「わたしは星読みだから──祝福を与える側の資格はある。でも──壁画に書いてある通り、あなたが星の試練を越えないと、祝福は完成しない」

「星の試練とは、何のことだ?」

「わからない。この遺跡のもっと奥に、試練の間があるはず。でも今日は……ここまでしか入れなかった。奥にはまだ、結界がある」

壁画の大広間の奥に、もう一つの扉がある。扉に結界。星岩の心臓では反応しなかった。

「別の鍵が要るのか」

「星岩の心臓は入口の結界の鍵。──奥の試練の扉には、別のものが必要。たぶん──この大陸をもっと歩けば、見つかると思う」

【深淵への門の開放条件】

【月の祝福──達成済み】

【星の祝福──未達成】

【太陽の祝福──未達成】

【最後の鍵──不明】

「四つのうち一つしか揃っていない。……まだ先は長いな」

「トワさん、嬉しそうに言わないでください」

「嬉しそうか?」

「とっても嬉しそうです。やること増えた、って顔してます」

「やることが多い旅は──いい旅だ」

セレスが肩の上で笑った。

「トワらしい。いそがない、あるく。ぜんぶみる。それから、いく」

「ああ。新大陸にはまだ知らないことがたくさんある。星の試練の鍵も、この大陸のどこかにあるはずだ。踏破率はまだ15%。──歩く理由なら、いくらでもある」

遺跡を出た。山の上から、新大陸が広がっている。まだ歩いていない場所が──果てしなく。

「トワ。よいたびを」

「ああ……よい旅を、セレス」