作品タイトル不明
〈知識と牙〉
オルテリアの外。山脈への道。
新大陸のモンスターは、表の世界ともソルシアとも、ルミナリアとも違う生態系を持っていた。
【 星纏(ほしまと) い猿Lv91 HP:105,000 ×6体】
猿型モンスターの群れ。木の上から星の光弾を投げつけてくる。動きが素早く、木から木へ飛び移る。地上からでは追えない。
「木の上にいる──弓で撃つか?」ゼクスが聞いた。
「弓でもいいが、効率が悪い。星属性で半減するうえ、動きが速くて当てにくい」
トワは見聞録で群れの行動パターンを解析した。
──猿型モンスターには「群れのリーダー」がいる。一番体の大きい個体。リーダーが叫ぶと群れ全体が連動して動く。逆に言えば──リーダーを黙らせれば、群れの連携が崩壊する。
「リーダーは、あの木の最上部。一番大きいやつだ」
「記憶干渉を使うか?」
「いや、もったいない。もっと簡単な方法がある」
トワがアイテムストレージから、星果実を取り出した。
「猿は果物が好きだ。──どの世界でも」
星果実をリーダーの猿に向かって投げた。放物線。木の最上部に、正確に届いた。
リーダーの猿が、果実をキャッチした。そして──食べ始めた。
食べている間、叫ばない。叫ばないと群れが動かない。
「食べてる──攻撃が止まった!」
「今だ」
トワが走った。木の幹を蹴って跳躍──枝を足場に、猿の間を飛び移る。
果実を食べているリーダーの横をすり抜けざまに、夜銀の一閃。弱点──背中の星の光点を斬った。
【弱点攻撃:108,000】
リーダーが倒れる。──その瞬間、群れの猿が混乱した。リーダーを失って、統率が崩壊。バラバラに逃げ始める。
「逃がすな──散開して追え!」
ゼクスが影から飛び出して一体。アストレアが聖剣で一体。タマキが走ってくる猿に陽光のポーションを投げつけた。バフ剥がし、動きが鈍った猿をハルが杖で殴った。
「ハル──また杖で殴ってるぞ」
「導師流・杖殴打術です! 正式採用されました!」
「誰に採用されたんだ」
「わたしにです!」
六体全滅。
【星纏い猿×6──討伐】
【ドロップ:星猿の尾毛(素材)×3】
【ドロップ:星果実×2(猿が持っていたもの)】
「果実で釣って、リーダーを潰して、群れを崩壊させる。一個の星果実で六体分の経験値か」ゼクスが感心した。
「力で押すだけが戦いじゃない。モンスターの生態を知れば、もっと効率的に倒せる」
「知識無双ですね!」ハルが興奮気味に言った。
「無双ではない。──旅人の基本だ」
トワが戦陣を切って新エリアを探索していくところ、当然他のプレイヤーも目撃している。
フォーラムには、トワのおかげでこの攻略法が直ぐに広まっていった。
──「星纏い猿の倒し方。果物をリーダーに投げろ。食べてる間に叩け」
──「トワ式攻略法また来たな」
──「果物で倒すRPG初めて見た」
──「知識が武器って本当にこういうことなんだな」
──「脳筋では新大陸やっていけないぞ。弱点攻撃が有利すぎる」
──「見聞録なくても、弱点は目で見えるしな。星の光点が集中してる場所を狙え」
──「それを目視で見分けられるのが、プレイヤースキルなんだよ」
──「10Lvでも倒せる新大陸。俺は90lvでもボコボコにされた」
──「それもまたプレイヤースキルだな」
──「草」
◇
山道を登っていくと──新しいモンスターに遭遇した。
【 星岩巨人(せいがんきょじん) Lv96 HP:280,000】
岩でできた巨人。全身に星の鉱石が埋まっている。──高さ十メートル。
「でかい──!」
「ルミナリアの陽炎の巨人と似てるが──こっちは実体がある。蜃気楼じゃない」
星岩巨人が腕を振り下ろした。地面が陥没する。
【衝撃波ダメージ:全員に3,000】
「範囲攻撃! 一撃が重い──!」
トワが見聞録で解析。弱点は──背中の中央。星の鉱石が集中している場所。だが背中に回り込むには、正面を突破しなければならない。
「正面突破は無理だ。──セレス」
「うん?」
「覚醒形態で、巨人の注意を引けるか。巨大な鹿が目の前に現れたら、巨人でも気を取られるはず」
「セレスがおとり?」
「三秒でいい。巨人が前を向いている間に、俺が背中に回る」
「さんびょう……やる。でも、おやつ」
「後でだ」
「さきがいい」
「後で二つやる」
「やった。──いく」
セレスが覚醒形態になった。巨大な白銀の鹿。──角に星角鹿の祝福が残っている。
星岩巨人が、セレスを見た。巨大な鹿と巨大な岩。向き合う。巨人の動きが一瞬止まる。
その間に、トワが巨人の脚を駆け上がった。岩の隙間に手足をかけて、壁を登るように。背中に到達。
星の鉱石の集中点に──夜銀の剣を突き刺した。
【弱点攻撃:142,000】
巨人のHPが半分以上削れた。──だがまだ動いている。振り返ってトワを振り落とそうとする。
「ゼクス!」
「了解!」
ゼクスが影から飛び出し、巨人のもう一方の背中の鉱石に短剣を打ち込んだ。
【弱点攻撃:98,000】
合計ダメージで──HP280,000が削りきれた。巨人が──ゆっくりと崩れていく。星の鉱石が散らばる。
【星岩巨人──討伐】
【ドロップ:星岩の心臓(超希少素材)】
【ドロップ:星鉱石の欠片×5】
「超希少素材──星岩の心臓!」タマキが拾い上げた。「これ──すごいエネルギーを感じます。薬に使ったら……」
「リーリア。この素材は、何に使える」
「星岩の心臓は、古代星王朝の時代に、結界の鍵として使われていたの。遺跡の結界も……これがあれば開けるかも」
「遺跡の結界を開ける鍵が、モンスターのドロップで手に入るのか」
「この大陸では、モンスターも星の循環の一部だから。倒すと星が巡って、新しい道が開ける」
遺跡の結界を開く鍵が手に入った。あとは、遺跡に行くだけだ。