作品タイトル不明
〈星降る街〉
月曜日。ログイン。
新大陸アストラムの探索を続けていた。港町から内陸に入り、草原を抜け──新しい街に辿り着いた。
【星降る街オルテリア に到着しました】
【アストラム踏破率:8.2%】
オルテリアは、聖都ルクスとは全く違う雰囲気の街だった。石造りではなく木造。屋根が円錐形で、壁に星の模様が描かれている。空中に光の粒が漂っていて……街全体が淡く輝いている。
「きれい!」タマキが声を上げた。「街が光ってる!」
「星の粉が自然に空気中に漂っている。この街全体が、星の力に満たされているのか」
リーリアが隣を歩いていた。
「オルテリアは──わたしの故郷。星読みの一族が暮らす街」
「お前、ここの出身だったのか」
「港で出会ったのは偶然じゃないよ。──星が教えてくれたの。港に行きなさいって」
「星に従って港まで歩いたのか。素直な性格だな」
「星読みは足腰が丈夫なの。星を追いかけて走り回るから」
街に入ると、NPCの住人たちがリーリアに声をかけてきた。
「リーリア! 帰ってきたの!?」
「リーリア、外の人を連れてきたのね。初めて見るわ」
「その人たち──旅人? 何する人たちなの?」
「旅人っていうのはね──」リーリアが説明し始めた。「歩いて、世界を見て、人と話して、モンスターを倒す人たち。この大陸にはいない職業なの」
「へえ、歩くのが仕事なんだ。変わった仕事ねえ」
「変わってるけど、すごいよ。この人たち、海の向こうの世界を全部歩いたんだって」
「全部!? そりゃすごいわ。うちの街も、ゆっくり見ていってね!」
【オルテリアの住人の友好度が上昇しました:0/10 → 1/10(リーリアの紹介ボーナス)】
「紹介ボーナス! リーリアが紹介してくれたから、友好度が1からなんだ」ハルが画面を確認した。
「リーリアさん、ありがとう」タマキが言った。
「お礼はいいよ。──わたしが連れてきたんだから、当然」
◇
街を歩いていると、他のプレイヤーが既にいた。
「あ、トワさんだ!」
見覚えのあるプレイヤーが手を振ってきた。聖都の友好度レイドに参加していた剣士。
「この街のNPCの友好度、全然上がらなくて……何かコツ、あります?」
「何を渡した」
「表の世界の素材とか──」
「それじゃ上がらない。この大陸のNPCには、この大陸の素材を渡せ。星果実とか、星の粉を使った料理とかだ」
「なるほど! 星の素材か!」
「タマキ──星果実のジャム、まだ余っているか」
「ありますよ、五個。あ、配ります?」
「配ってくれ、友好度の足がかりになる」
タマキが星果実のジャムをプレイヤーたちに配った。プレイヤーがNPCに渡すと──
「まあ! 星果実のジャム! 好きなのよこれ!」
【友好度が上昇しました:0/10 → 2/10】
「上がった!! タマキさんのジャムで上がった!!」
「タマキさん神!」
「えへへ……薬師ですから」
「薬師関係なくない?」
「関係あります。人を元気にするのが薬師の仕事です。ジャムで元気になるなら、それも薬です」
「ジャムは薬じゃないだろ」ゼクスがツッコんだ。
「ゼクスさん、そういうの言うと大人気ないですよ」
「大人気なんてなくていいさ、ゲームの世界なんだからな」
◇
オルテリアの奥に高台がある。星読みの塔。リーリアの一族の拠点。
「ここから、あの遺跡が見える」
リーリアが塔の頂上から、北の方角を指差した。山脈の向こうに、巨大な石造りの建造物が見える。風化しているが、輪郭がわかる。
「あれは……古代星王朝の遺跡。この大陸で最も古い文明の跡。──普通は入れない。結界で守られてるから」
「結界──?」
「星の力で作られた結界。千年以上前に、古代の星読みが張ったもの。わたしたちの一族でも開けない」
「どうすれば、開く?」
「わからない。──でも、あなたなら開けるかもしれない。星が、そう言ってる」
「星が言ってるのか。根拠は?」
「星に根拠なんてないよ。ただ、そう見えるの。星の配列が──あなたを指してる」
トワは遺跡を見つめた。見聞録で解析──距離が遠すぎて詳細はわからないが、エネルギー反応がある。強い。
「近づいてみる必要がある。──だが、途中の道は」
「山越えだよ。モンスターだらけ。この大陸で一番危険なルート」
「なら、行く理由があるな」
「あなた、やっぱり変な人」
「よく言われる」