軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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どこかを削られながらも、ノーライフキングを1体1体潰していく。目が回るような消耗戦の中で、少しずつ疑念が膨らんでいた。

全然魔法を使わねえ。

それに、脅威度が低い。なんつーか、本当にこっちがされて嫌なことをしてこない。

もしこの敵がロボだったら、とっくに牡羊の会は皆殺しだろうし、もっと一斉にかかってきていた気がする。

発生している戦闘が散発的なんだよ。

まるで何かを試されているような不快感がある。

『おい。何が目的だ?』

目の前にいる個体に訊ねた。中国拳法のツルの構えみたいなふざけたポーズをしてやがる。

『ちょっと考え事しててね。どこまで話したものか』

『ロボもそうだったが、お前らモンスターってのは面倒くせえ話し方するよな』

『はははははは! そう言われるとそうだ!』

ひらりひらりと、宙に落とした紙のような動きで回避してくる。うざってえ。

『まぁ、話している最中に死ぬような弱者に、それ以上の情報を伝えても仕方がない。段階的にお話してあげるくらいの方が、むしろ自然ではないか?』

野生と知性の変な組み合わせの価値観だな。

情報を伝えコミュニケーションをとり、相互理解する必要性は認識している。そして、それと殺し合いが両立し、根底には弱肉強食の概念が流れている。

『で、俺は今そのお眼鏡にかなってんのか?』

『うーん、ギリ落第だ』

そう言って笑った個体の体表がボコボコと泡立つ。

嫌な予感。急所を腕で庇いながら、跳び退った。

パァン!

軽い音と共に炸裂した。鋭い骨の破片が幾つも体に突き刺さる。

『世界樹の仔とは何度かやりあったことがあってね』『再生力にはそれぞれ差があったけど』『共通点があるんだ』

次の個体が目の前に来た。

痛みに耐えながら剣を構え直す。少しずつ視野の中で薄暗い部分が増えてきた。

落ち着け、集中力と呼吸を意識しろ。

『体に入った異物は取り除けない。純粋な再生ではないから、削られれば消耗していく。そうだね?』

それはそうだ。

世界樹の苗は、あくまで切られた部分を繋ぎ止め、失った組織の穴を埋めるだけ。別に傷がなくなるわけでもないし、撃ち込まれた弾丸はそこに留まる。

『それを理解して削っていけばいい。ちゃんと《《効く》》攻撃ならどれだけ小さくてもいい。のんびり消耗戦していたら、気づけば死んでいるのが世界樹の仔だよ』

ぎりっと奥歯が鳴った。

完全に俺の弱点を把握されている。ひでえもんだ。こっちはノーライフキングの情報を全然持っていないっていうのに、向こうは何でも経験済み。ふざけんな。理不尽過ぎるだろ。

『俺が死ぬのが早いか、てめえが死ぬのが先か』

それでも、斬り付けることをやめない。数は減らせているんだ。

それに。狙っての消耗戦とわかっていても、俺に出来ることはこれしかない。戦うしかないなら、戦って勝つまでだ。

『勇者でも目指してるのかな?』

『そんなガラじゃねえよ』

しかし――俺がどんどん削られている反面、山里のところは大きな被害は受けていない。

もちろん、シャベルマンを軸にした連携が上手いのはある。しかし理由はそれだけじゃなさそうだ。

『あのさぁ』

『うん?』

『お前、マルチタスク苦手だろ』

なーんか、ずっと違和感はあったんだよな。

腕が8本あったのに活かしきれていないとか、メインの戦場が1か所だったりとか。

強力な手駒と攻撃手段を有しているのに、全然活用できてねえ。

フルで上手に使えば、とっくに俺らは壊滅していそうなのに。

『わかるか。昔からどう頑張っても上手くならなくてな。努力はしたのだが、それでもやっぱり下手くそだ』

キンッと甲高い音がした。

山里の長剣が、別の個体が持つ剣に折られ、刀身がくるくると宙に舞っている。

『だが、十分だろう?』

結局のところ、俺以外が脅威じゃねえって言いたいのか、こいつは。

マルチタスクが出来ていなくとも、他は足止めできればそれで良し。意識のメインで俺を削っていく、と。

弱点を弱点として成立させるには、最低限の攻撃力が必要になる。それが足りていない。

じりじりと追いつめられる焦燥感。

砂漠で水筒を覗き込むように、命の残量が気になって来る。

ダンジョンは本当に俺らにとって都合の悪いことだらけだ。

不思議な魔法の力とか、覚醒した意思の力とか、そんな夢や希望は与えてくれりゃしない。

前蹴りを浴びた槍使いが吹っ飛ばされ、地面にごろごろと転がる。起き上がろうと藻掻いているが、震える手足に力が入っていない。

カバーする仲間を失った鈍器使いの胸に肘が入った。

これでまた、戦力が2枚落とされた。

『エルフ! 誰でもいい、負傷者を巻き取れ!』

『で、世界樹の仔。お前はマルチタスクが出来ているのか?』

『――は?』

『よそ見ばかりして』

背中に加わった衝撃が、腹を貫通した。

スケルトンがよく持っている小汚いショートソードの刃が、腹から生えてきている。

振り返れば、投擲後のフォームの個体がいた。

背後からの攻撃かよ。しかも背中の真ん中から刺されているせいで、自力では抜けなそうだ。

『ぐっ……う』

膝をついた俺の頬に、冷たい手が添えられた。

至近距離で覗き込む目は、無駄に透き通っている。

『世界樹の仔。物を知らぬ可愛い仔。仲間に恵まれれば英雄になれた、哀れな仔』

『肯定も否定も出来ねえ骨ばっか従えた、裸の王様に言われてもな』

『だから死んだのかもしれない』

するりと撫でるように、指先が首筋まで下りた。

『骨となれば迎え入れてあげよう。人の子よ』