軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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この冷たい肉の塊に飲み込まれたら終わりだ。

皮膚と肉を潰し、神経に直接触るくらいの力で、足首を握りしめられている。これが首まで届けば確実に死ぬ確信があった。

戦い方がキモいんだよ!

ツヴァイハンダーを振り下ろし、数体まとめて切り裂く。すぐに再生するが、その前に片足を引っこ抜けた。

溺れる子どものようなガムシャラな抵抗。

『キーティア! 段差作れ!』

『わ、わかったのじゃ!』

空中に生まれた階段を、ノーライフキングのボールと一緒に転げ落ちた。頭や肩をボコボコに打ち付けたが、落下で死ぬよりよっぽどマシだ。

『ナイス!』

「ナガ、ばらすよ!」

地面についた瞬間に、スイが錫杖を肉の玉に捻じ込む。強烈な突風が内側で発生した。俺もノーライフキングたちも風に押し流され、バラバラに離散させられる。

すぐに立ち上がろうとした。が、バランスを崩してよろめく。見れば、足首の肉が指の太さで抉りとられていた。

傷口を見た瞬間に、どっと痛みの稲妻が足から頭まで駆け抜けた。ぶわっと毛穴が開き、汗が噴き出す。

「ナガさん! 治療を――」

そう言ったトウカの目の前に、ノーライフキングが1体躍り出る。

『君がヒーラーか。潰すよ』

『させない』

ノーライフキングは、スイが突き出した錫杖を手で軽く打ち払い、足払いをかけた。スイの体が空中で1回転半し、地面に叩きつけられる。

流れるような動きでトウカに掌底を打ち込んだ。

「かふっ……」

軽い、空気の漏れるような声。トウカの口と鼻から真っ赤な血が溢れだした。

それでも。反撃のパイルバンカーがノーライフキングを吹っ飛ばす。

「トウカ!?」

「だいじょう……ぶ、です」

どう見ても大丈夫じゃない。

「うおぉぉぉぉぉ!」

大音声で叫びながら、 比嘉(ひが) が走り出した。

トウカを見るノーライフキングに向け、斧を振りかぶる。

「あのバカをカバーしろ!」

戦斧がノーライフキングの首を刎ねた。宙に舞う頭部が、そのまま 比嘉(ひが) の腕に食らいつく。

「な、なんだこいつ!」

歯が深く食い込んでいる。思わずといった様子で、斧を取り落とした。

「こっち向けろ!」

山里がそう叫びながら、ノーライフキングの下顎を切り落とした。転がる頭に上から長剣を突き刺し、トドメを入れる。

まずい。スケルトン相手なら有利だった戦線が、一気に崩壊した。

戦力的な話をすれば、トウカは大駒だ。

将棋で例えるなら、角くらいの存在感がある。それがこうも簡単に落とされる。

「無理だァ、逃げろ、ナガァ!」

うるせえおっさんが吠えている。

囲まれた牡羊の会は、必死に魔法を連発しながら小さく固まっていた。

傷口は世界樹の苗で塞がった。だが、どうにも違和感がすごい。相当量の筋肉を削られているから、動きが悪くなっている。ちょっと負荷をかけるだけで、捻挫5回分みたいな痛みが走った。

それでも。

足を踏み出す。地面を蹴る。体は前に進む!

まずはトウカとスイのカバーに入らなきゃな。囲まれたらマジで命まで持っていかれる。この状況だと、逃げるのもままならねえ。目くらまし程度じゃ退路がねえ。

進路を塞ぐ位置にいるノーライフキングに斬りかかった。

袈裟懸けを、体を落としてかわされる。下がった顔面に膝を入れた。仰け反って剥き出しになった首に噛み付く。

「ルルルルルルルァァアアアア!!」

唸りから咆哮へ。

振り回し、首をへし折って投げ捨てる。手足をぐにゃりと絡ませて吹き飛んだノーライフキングの体が燃え上がった。

「いいぞ、スイ! ダウンしたやつにトドメ頼む!」

「それくらいしかできなくて、ごめん」

泣きそうな声で叫んでいる。気にすんな、再生力の高い相手を再起不能にすんのは、値千金の戦果だ。

『まるで狼だ』

笑いながら飛び掛かって来たノーライフキングの顔面を、ツヴァイハンダーの刃が無い部分でぶん殴る。頭が変な方向に曲がっているくせに、足が止まらない。しがみついてきやがった。

『これは平気かな?』

ざくり。胸から腹に、鋭いものが刺さる感触。

ノーライフキングの胴体から飛び出した肋骨が、挟み込むように突き刺されている。

バックドロップで頭から地面に叩きつけてやった。ようやく剥がれる。スイが焼いた。

息が上がる。

殺せない相手じゃないが、1体1体が捨て身でこっちを削って来る。

ダルすぎる。あと気持ち悪ぃ。

『大層な名前のくせに、割と安いな』

『安い?』

『簡単に殺せるじゃねえか』

『言うね。それもそうだ。スケルトンに肉をつければ、それは人間の肉体なのだから』

人間ではねえだろ。

いつの間にか手汗をかいていたらしい。服で拭い、ツヴァイハンダーを握りなおした。

3体くらいの集団に斬り込んでいく。

「なんで、なんでまだ向かっていけるんだァ……」

低い位置での薙ぎ払いで、1体の足を切り飛ばす。

飛び掛かって来たやつに左肘を噛ませた。逆に利用して、肘と膝で挟んで頭を破壊。

「死ぬぞ、無理だろォ」

うるせえな。

一刀両断。ノーライフキングを真っ二つにして蹴り捨てる。

「仲間を守りたけりゃ戦うしかねえだろうが! 俺のいる場所が、最前線なんだよ!」

生身の肉体に痛みを得て。それでも一歩踏み出すから、後ろの仲間も前に出られるんだ。

大事な仲間なら、自分が盾になれ。支えられている自覚があんなら、しっかり立て。信頼されているなら応えろ。

「くそォ……!」

腹を貫かれ、右手首の先を失ったメガネは立ち上がらない。

「老いたな」

「何がァわかる」

ノーライフキングをもう1体始末して、ついに合流を果たした。

「見ればわかる。富、権力、武器に手下。色んなモンで上塗りしても、中身のシワが隠せちゃいねえ」

息があがって、余計に猫背がひどくなっている気がする。

出血のせいか、動いた以上の疲労感が両肩にのしかかっていた。

それでも、ツヴァイハンダーを担ぎ上げて声を張り上げる。

「俺が打開する! みんな、耐えろ!」

この程度の絶望で折れてちゃ、ダンジョンで25年も生きられねえんだよ。