軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

219

仲良く丸太を抱えている探索者の集団に、視線を走らせる。どいつが丸太マンなのか一瞬で分かった。

俺よりも上背が高く、海外のプロレスラーみたいに分厚い体で、赤色のタンクトップを着ているモヒカンのバカだ。なんでダンジョンにタンクトップで来てるんだ。そういう変な奴、事前に弾いたよな!?

ヒルネが丸太の先を『黙り込むチャタレー』に向けた。

「やっちゃいます!」

なんか、もうどうでも良くなってきたな?

「おうおう、行け!」

俺の言葉に、歓声が上がった。探索者たちが丸太を小脇に抱え、突進していく。

丸太ん棒持ったバカが群がると、静謐さから来る神秘性というか、ホラーな雰囲気が一瞬で消し飛んだ。

立て続けに重たい音が鳴り、ビシビシと外壁にヒビが走る。

「下がれー、2発目だ」

「うおおお!」

蓮まで楽しそうに叫んだ。いやまぁ、絶対楽しいだろうけどさ。

丸太マンがぶち込んだやつだけ突き刺さっていて、引き抜けないようだった。持ち込んだ張本人は寂しそうに親指を咥えている。

次の衝突で、外壁のヒビがさらに大きくなった。漆喰が割れて真っ白な破片がぱらぱらと降り注ぐ。女の金切り声のようなものが聞こえた。

「ナガさん、この音!」

「お前ら、離れろ! 丸太を盾に!」

一斉に探索者が退避する。丸太を立てて壁のように並べ、後ろに隠れた。

甲高い音が断続的に響き、そのたびに白い粉が吹き出す。ユエが首を傾げた。

「モンスターか? 魔法的な気配は感じられないのだが……」

「物理現象だ。金属の延性破壊じゃねえかな。板バネ式のトラップが露出した可能性が高ぇ。近寄るなよ、何がぶっ飛んでくるか分かったもんじゃねえ」

「ほう。板バネ……」

「ユエの国にはなかったか?」

ユエは頷いた。どの技術がどんな順番で発達するかなんて、それぞれだもんな。

例えば天文学。あんま外洋に興味の無かった日本だと、農業や吉兆を占うための暦関連の天文学だけが発展した。一方でポリネシアでは生身で星の位置関係から現在地を把握する、星辰航法が発展したし、西欧では六分儀みたいな機械で天体を観測する方法がとられた。

ま、技術や科学のツリーは色々だ。

「要するに金属の弓だな。力を掛けて曲げて、離したときに勝手に戻る力を使うモンだ」

「なるほど、弓か」

そう言った瞬間、壁を突き破って黒い塊が飛んできた。ツヴァイハンダーをバットのように振って打ち返す。

「なんか歯車みてぇなの飛んできたな」

連鎖的に反応し、壁のあちらこちらが割れて中身が弾け飛んだ。俺とユエに飛んでくるのは打ち落とす。探索者たちの方では、丸太に多種多様な金属パーツがめり込んでいた。

しゃがんで頭を抱えたヒルネが目を輝かせる。

「なるほど~! 壁に隠された物理罠は、壁を壊せばいいんですね!!」

「壊せねえ壁もあるだろ、それこそ地下室とか」

「むむっ!?」

むむ、じゃねえんだよな。

ようやく静かになった外壁は、表面が思い切り剥がれてボロボロの柱を晒していた。建物本体の骨格は石造りで、トラップとか仕込んでいる部分は、木造に漆喰なのかもしれない。

つーか、内側に空洞を作りやすい構造に決まってんだよな。

「よし、外側から罠を探って薄い壁を壊してからエントリーするぞ!」

空洞があると分かれば余裕だ。ヒルネを連れて建物に近寄る。

身軽そうな探索者も数人呼びつけた。康太もひょこひょこ着いてくる。

建物の角を剣の柄でガンガン叩くと、硬い感触が返ってきた。音はあまり響かない。やはり端っこには柱が入ってるな。

壁を叩きながらぐるりと回れば、ところどころに音が響く箇所があった。特に響く場所には、剣の切っ先で傷をつけて目印にする。

とりあえず建物の外周を回り、罠がありそうな部分をマークした。

「これ全部、丸太で壊すんですか?」

「可能ならトラップ部分も1つはサンプルが欲しいな。それを見れば内部の罠も見破りやすい」

「なるほどですね?」

「あとは魔法的な紋章が内部にねぇかもチェックだな」

目印の周囲をさらに入念に叩き、内部に構造物がない場所をさらに割り出す。マジで何もない空洞部分目掛けて刃を突き込み、崩し始めた。

「このやり方で罠の回りの壁ごと削り出してみっか。ちょっと離れとけ、どう事故るか分からねえ」

「たぶん大丈夫ですよ~」

ヒルネはそう答えつつ、地面に伏せた。目はしっかり俺の手元に向けている。ちゃっかりしてんな。

ガツガツと壁を削っていくと、罠の端っこらしき、錆びた鉄の板が露出する。

「キツツキみたいですな~」

ヒルネがほのぼのとした口調で言った。

キツツキねぇ。確かにこんなん、木の皮叩いて中の芋虫掘り出すのと……木の皮……芋虫……??

「あばばばばば」

「大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫だ。もう大丈夫だ」

なんか変な記憶が一瞬割り込んできた。冷たい汗がどっと噴き出し、背中がぬるぬるしている。指先が強ばるような、嫌な感じがした。

変に思い出さねえ方がいいやつだ、きっと。

ようやく外周部分を掘り出す。壁に埋め込まれた角材にしっかり固定されているようだ。角材表面は真っ黒に炭化している。焦がすことで、腐食に強くしたんだな。

「なるほど、金属が劣化しすぎてっから、簡単に弾け飛ぶんだな。ちょっとこれ出すの怖いな……」

「なんかで包んで固定しますー?」

「いいのあるか?」

ヒルネはドローンを呼び寄せると、コンテナから太いラップの筒を取り出した。

「じゃじゃーん、お肉包むやつです! ぐるぐるにしたら頑丈ですよ!」

ラプトルを解体したときの便利アイテムだ。