軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

218

地下25層で一度野営を挟む。

偵察と警戒の初歩を教え、全員がテントと柵を張って簡易的な拠点を設営した。交代で睡眠や食事をとり、持ち回りで夜警を行う。

俺はヒルネと一緒に計画を立てていた。

空き缶に穴を開けただけの、簡易的なアルコールストーブの上で、レトルト食品を温める。片手鍋が湯気を立てていた。

ヒルネが、アルファ米に赤紫蘇のふりかけを混ぜながら言う。

「階段というか……『黙り込むチャタレー』最深部のボス部屋通って下に降りる感じですよね?」

「ああ。調べた感じ、固定でレイスが出るらしいな。俺は最深部まで潜ったことがねえから、そこまで情報が多いわけじゃねえが」

「そうですね~。一応、協会からの共有マップ情報にいろいろ載ってますよ~。いかにもなんかありそう感で、一時期すっごく調べられたんですよね」

まぁ、確かにめっちゃ何かありそうな雰囲気だ。

冒険者でも同じことを考えて、たくさんのパーティーが潜った。死人もたくさん出た。だが、誰も儲からなかった。

冒険者はガチで金の為にやってたから、誰も潜らなくなったのは自然なことだ。

「ちょっと気になる要素が多いんだよ。と言っても別に強敵がいるとかじゃねえんだけどな」

「どーいうことですか?」

「黒塗りの禁書。これ、ユエやキーティア、ドルメンみたいな、魔法に長けた奴ら目線だと違うモンが見えてきそうだなってのが一つ」

「あ~~」

なんも分からんからって理由で価値なし判定されているが、俺ら人間側にもダンジョン種族との繋がりが増えた。解読の手がかりがあるかもしれねえ。

「次にボス部屋。マジで存在が分からん。分布している階層も限定的だ。深層で発見されていないのが、余計に謎なんだよな。もしかすると、中層に存在していた文明の遺物かもしれねえが、それにしてはダンジョンの階段と繋がっているっていう異質さもある」

ボス部屋は存在が周知されて何度もアタックされているはずなのに、全く解明されていない謎の一つだ。

割とダンジョンそのものの成り立ちというか、神々に関わっている感じがする。

王権を集めている今なら、前と違う情報が手に入るかもしれねえ。

「う~ん。なんとなく分かりましたけど、それならトウカがいた方が良かったかもですね」

ヒルネは眉間に皺を寄せながら言った。

「そりゃあいるに越したことはねえけどな。たまにはこういうのも良いだろ。罠の解除練習もしておこう」

「罠の解除……構造……うっ」

ヒルネがひっくり返った。死ぬな、諦めんな。

野営明け。朝の6時から行動を開始する。

地下26層は元々はロボの縄張りだ。彼がいなくなった現在は、大型生物の空白地帯になっていた。

俺らが移動すると、小型の齧歯類みたいなのが逃げ回る。捕食者がいなくなったせいか、草食動物がめちゃくちゃ数を増やしていた。

「ナガさん、リスみたいなのいましたよ!」

ヒルネが嬉々として草むらから顔を出してきた。目が飛び出た、ブチ切れ顔のリスみたいなのを握っている。頬袋が垂れていて、なんか気の短いジジイみてえだ。歯が黄色いし、全体的に小汚い。

「焼くか」

「焼きません! あ、ここでシャルルのお散歩したら良さそうですね~」

「滅ぼす気か?」

猫の捕食圧ナメんな。

まぁでも、もしかするとこのリスが現環境での捕食者なのかもな。リスはたまに狩りして肉食うらしいし。

汚ねぇリスを逃がし、さくさくと進む。

危険なモンスターもいなければ、位置のマッピングもされているため、『黙り込むチャタレー』には信じられないほど楽に辿り着けた。

見た目はただの洋館だ。

草原に建てられた、少し大きめの屋敷。

すっかり錆びきった金属の柵や、一つ残らず割れた窓が多少は不気味な雰囲気を出してはいるが、全体的に小綺麗な雰囲気だ。

漆喰なのか壁は真っ白なまま。屋根などは暗い青色の建材が使われ、落ち着いた魅力を発している。

ただ、それが逆に異様な空気感を生み出していた。

探索者は誰もが口を閉ざしている。それぞれ警戒心を強くし、微に入り細を穿つように建物を観察していた。

ユエが険しい表情で呟く。

「精霊の数がおかしいな……。何がこんなに惹き付けているのだ」

「何かしら魔法的な作用があんのか」

「魔法。魔法は魔法だが、イメージとしては聖域……いや、呪いと呼ぶべきかもしれん。少なくとも、化学的や生物的な作用で成り立っているものではないな。下手すると、王が使う戦槌と同じくらいの密度で精霊が集まっている。用心せよ」

精霊は単純な感情だけを持つ、力の纏まりのようなもんだ。

ここに集まっているということは、精霊にとって魅力的な何かがある。それが人間にとって好ましいかどうかは別として、やはり『黙り込むチャタレー』には特異的な要素があるということだ。

「この建物自体が魔法道具ってことか。外から解体して持ち帰っちゃダメか?」

俺の問いにユエは首を捻った。

「んんんん? アリ……アリなのか?」

「ダメな理由ないだろ」

「いや……いやまぁ、そう。そう、なのか? 分からん。えぇ……?」

「折角人数居るんだし、解体工事やろうぜ。根こそぎ戦利品にしちまおう。分解して研究、組み立てて研究って出来た方が調査も楽だろ」

振り返ると、ヒルネを筆頭に探索者たちが丸太を構えていた。

「準備バッチリです!」

「どこで手に入れた!?」

「持ってる人いました!」

「丸太マン!?」