作品タイトル不明
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それっぽい格好の奴だけになったところで、まずダンジョン内に入る。さらに1割くらい人が減った。探索者資格を持っていなかったらしい。マジで何しに来たんだよ。
野次馬を排除できたところで、集団を分別する。
自力で地下15層の拠点まで行ける奴は、さっさと行ってもらった。現地で待たせ、後から俺たちが行く流れだ。
地下一層に残っているのは、浅い層でウロウロしているだけの新人たちだ。それでも30人くらいいる。
落ち着きなくペチャペチャ喋っている声が、狭い地下通路に反響していた。
「ナガさん、これどうするんですかー? 油断でだるだるです。一緒にいたらこっちまで死にません?」
「3人くらい死んでくれたら気が引き締まるんだけどな。そういうわけにもいかねえ、と」
とりあえず、思い切り壁に前蹴りをかました。轟音が話し声を塗りつぶし、砕けた石材が粉塵を巻き上げる。
新米たちは体をびくりと竦ませ、一斉に口を噤んだ。
「てめぇらうるせえ」
あえて冷たく吐き捨てるように言う。怒気を感じた新米たちは気まずそうに視線を逸らした。
「お前ら、ダンジョンで自由に楽しく過ごせるくらい実力あんのか? 話し声を聞きつけたモンスターが大量に集まってトレイン起こしても生き残れんのかって」
俺の声だけが響く。ヒルネが「すっごい嫌な空気~」と呟き、ユエがその口を押さえた。
こういう誰かが怒られてる空気、クソ気まずいよな。自分に矛先向いてなくても、なんか怒られてる気分になる。
「ヒルネ、こいつらにちょっとした試験をやる。通過した奴らを拾って纏めといてくれ。少し先で待機だ」
「その言葉を待ってました~!」
「あ、待て、脇、ちょっ!」
ヒルネは素早くユエを持ち上げ、通路の先に連れて行く。無駄口叩いた新人への説教から逃げるときに、自分のお喋り相手を確保していくのか。メンタルごっっっつ。
俺は怯える新米たちの前に立ちはだかり、指の骨をごきごきと鳴らした。
「一人ずつ、自分が死ぬシチュエーションと、対策……もしくはどうしようもねえときは、せめてどう死ぬのが最善か答えろ。答えられた奴だけ通過しろ」
予想していなかった問いなんだろうな。全員よく分かってねえ顔をしている。
「例えば――」
一番手前の少年を引き寄せ、片手で胸ぐらをねじ上げる。簡単に宙に浮き上がり、足をバタバタさせた。蓮とか康太くらいの歳じゃねえか。やっぱ若い奴は体が軽い。
「俺の気が急に変わって、お前ら全員を轢き殺したとする。まぁ、完全に有り得ねえ話じゃない。世界ではだいたい年間5万人が人を殺してる。誰がいつ気変わりして人を殺すかなんて、分かったモンじゃねえ」
半分以上の腰が引けた。数人だけ、武器の構えを変えたのがいる。
俺は吊るされてる奴と目を合わせた。すっかり顔が赤くなっている。首に力が入っていない。筋力不足だ。
「さて、今から俺がお前をどうやって殺すかと、対処方法を答えろ」
「う……も、もう片手の剣で斬る……?」
「ハズレだ。ツヴァイハンダーは近距離を斬るのに向いてねえ。まず観察力不足だ、やり直し」
少年は目を白黒させた。
「あう……、あ、ええと……じゃあ、床に叩き付けて殺す」
「よし、一歩前進。成長したな。じゃあどうする?」
「う……」
少年は俺の手を掴み、引っ張ろうとした。当たり前だが微動だにしない。次に足を振り回したり体を捻ったりしたが、悲しいほど抵抗になってねえ。
諦めの表情が浮かんだ。
「配信に……遺言を……うぅっ、ぐすっ」
言っているそばから想像してしまったのか、目に涙が滲んでいる。いいね、やっぱり素直だ。若い世代ってこれが凄いんだよな。
俺は少年を降ろし、ユエたちの方に背中を押した。
「合格だ。こういうことを一個ずつ想像して、受け止めて覚悟すんだよ」
少年はカクカク頷くと、恥ずかしかったのか小走りで立ち去る。次は近くに居たハタチくらいの女性。
「よし。この程度の簡単な座学に、あんま時間掛けてても仕方ねえ。さっさと済ませるぞ。次はお前だ」
「ご、ゴブリンの集団に囲まれることです!」
ちょっと現実的なのが来たな。
「対処は?」
「可能な限り攻撃しながら下がります!」
「減点だ。ゴブリンの詰めは速い。あいつらは前屈みからの飛び掛かりが優秀だ」
「では、背中を見せて走って逃げます」
「正解。正面から倒す技量がねえなら、ゴブリン相手は一か八かで走るのが一番逃げやすい」
四足歩行で走るコボルト相手には、背中を見せない方がいい。ゴブリン相手には思い切り走って逃げた方がいい。
ゴブリンの方が戦士として優秀なんだが、地味に機動力の質に差があるんだよな。
「よし次!!」
思っていた以上に大変だな、これ。
途中から心を無にして処理していく。ようやく最後の一人になったときには、ゆうに30分以上の時間がかかっていた。
ラストは俺の指示で服を着替えてきた青年だった。ちゃんと作業服みたいな装備に変わってるな。鉄パイプ持ってるのも相まって、ぱっと見で足場屋の兄ちゃんだ。
絶対趣味は車で、まだ実家に住んでる。あと数年経ったら彼女とアパート借りて、10年後にはローンで地方都市の郊外に家建ててるタイプだ。決めつけだが。
「死因は?」
「ナガさんを狙う、王とか亜神みたいなのに巻き込まれてプチッとされることっす」
「縁起でもねえな。で、どうすんだ?」
「戦うっす。薩摩クランみたいになりたいっす」
くそでかい溜息が出た。あんなん、憧れるもんじゃねえだろ。
俺は親指で背後を指した。
「行け」
「うす!」