軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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帰還するに当たって最大の課題は、どうやってモンスターを輸送するかというものだったのだが――。

なんとこれについては、大手の商社が名乗りをあげてくれた。配信を見て「世界と言えばウチですよ」と言ってくれたのだ。

不安を煽るような配信をしてしまったかと、少しだけ反省していたが、早くも良い流れが生まれている。

巨大な商船に乗り込んでいくモンスター達の姿を、波止場から眺めていた。国内とはいえ大型船を一隻動かすのには相当な金が掛かっているはずだが……。

無償での手伝いには、きっちり別の形で報いなければならない。少しだけ未来が不安になった。

ヒルネと一緒にケットシーが入ったキャリーを持っていたユエが、俺の表情をじっと見る。

「王よ、不安か?」

「ああ。なんか見た目にでけェもん動かされると、思い知るわ」

「仕方あるまい。今や数万の妖精種を率いる王だ。船の一つや二つ動かして当然だ。ただし……信賞必罰は忘れんようにな」

それが不安なんだよ。信賞必罰って、商船動かした褒美とか思いつかねえよ。

「ドワーフの手を借りて、船の魔改造してあげたら?」

ただの黒猫になっちまったシャルルを抱きながら、スイが隣に立った。

何の気なしにシャルルの頭を掻いてやると、気持ちよさそうに目を細めてゴロゴロ言う。マジで猫だな。

「また安直な。けど、そういう技術交流も与えられるメリットか」

「いまのところ、ナガだけの強みなんじゃない?」

「そうだな。いっそのこと、俺の紹介だって分かるシンボル作って身内に共有しておくか」

「朱印みたいじゃん」

「言い得て妙だな」

思わず、くつくつと喉の奥から笑いが漏れた。

ドローンに配信、スマートウォッチに立体ホログラム。これだけ技術が進歩した現代社会で朱印なんて俺らっぽいじゃねえか。

「あ、じゃあシンボルマーク作りましょうよ~~!!」

ヒルネが楽しそうに言った。

「紋章ですね。それに、ロゴデザインも用意していいかもしれません」

トウカまで乗っかってくる。

話を聞きつけた隼人まで寄ってきて、余計なことを言う。

「王国旗って感じだね。それ掲げて行進なんてしたら、今以上に人が集まってくるんじゃないかな?」

「楽しそうな顔してんじゃねえ。ダサいデザインにして、お前にも着せてやるよ」

「いいよ、もちろん!」

なんでもウェルカムスタイルやめろ。強すぎんだろ。

「私は使わない」

ようやく否定的な人物――柚子が現われる。だが、その頭を小松が荒々しく撫でた。

「嬢ちゃんも使え。強い者の寄り合いってのは、それだけで更なる力を齎してくれるもんだ。デザインが出来たら教えてくれ。薩摩クランも、同じ旗を掲げるとしよう」

「ぐぅ……」

鬼翔院の兄妹と薩摩クランには、俺達の知らない繋がりがある。言い返せないのか、柚子は唇を尖らせた。

俺達だけじゃなくて、兄妹と薩摩クラン、あとメガネと山里まで使う紋章ともなれば、かなりしっかりしたものを考えなきゃいけねぇな。

――視聴者から募集するか?

船の方を眺めると、最後尾のシャベルマンがゴブリンマザーに跨がって乗船するところだった。心配そうにブランカが見守っている。

そろそろ時間だ。俺は小松の手を握り、しっかりと目を見た。

「薩摩クランの行く末は分からねえし、トラウマの苦しみは続くんだろう。だが、戦ってきた意味が見つかったなら良かった」

小松は苦笑を浮かべる。

「行く末なんて決まってるだろうがよ。ドワーフ共のお片付けが終わったら、儂らもそっちに行く。もちろん、残りたい奴らは残しておくけどな」

「まだ戦うつもりか?」

冷静を装っていた瞳の奥に、再び狂気的な炎が蘇る。

「色々と考えたんだが、今更戦いと縁を切ることは出来ないわな。戦わず平穏に過ごす方法を考えるよりも、楽しく戦える生き方を探すことにした」

「はぁぁぁああ。お前ららしいよ。好きにしてくれ」

「じゃあ、達者でな」

俺達もタラップに足をかけ、船に乗り込んでいく。甲板の上から見下ろした鹿児島の地は、急に遠く離れた場所のように感じられた。

思えば随分と戦い散らかしたもんだ。その分だけ、多くのものを得られたような気がする。

見送りに来た薩摩クランメンバーと、手伝いをしてくれたボランティア達が集まっているのが見えた。皆大きく手を振ってくれている。俺達も手を振り返す。

なるほどな。こういうときに旗がありゃあ格好がつく。

集まりとは少し離れたところに、二人きりで立つ男達が見えた。総長と息子さんだ。

またボケてんのか、よく分かっていなそうな総長の手をとり、息子さんがこちらに振ってくれる。どんな風に折り合いを付けたのかは知らないが、少しだけ関係がほぐれたようだ。

冬の緩い風がふっと止まった。

別れの声が一気に耳に届く。それを塗りつぶすように、大きな汽笛が響いた。

「ナガ。ギリギリハッピーエンドに出来たのかな?」

隣で一緒に手を振るスイが言った。

「まだまだこれからだ。どこかで最悪な終わりが来たらバッドエンドだ。目指し続けんだよ」

「ふーん。じゃあ、一生頑張らないとだね」

スイの言葉に不安を感じて、まじまじと顔を見た。

「おいまさか、それも一緒にやるとか言わねえよな?」

スイはしれっとした顔で肩をすくめた。

「そのときどき考えるよ」

「今どきの子かよ」

「今どきだからね」