作品タイトル不明
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エルフ族ティコ系レヒ氏族の里。
またの名を、牡羊の会地下拠点。その実体は、ナガが好き放題するための秘密基地である。
実質的にここの管理人をさせられている、牡羊の会リーダーのメガネは、大きな溜息をついた。エルフの里長、キーティアが背中をさする。
二人は仲良く、巨木の間に張り巡らされた鉄板の足場に腰掛けていた。
『元気を出すのじゃ。しかし、惜しいのう。折角役に立つようになってきたというのに、地上に帰してしまうなんてのう』
「惜しくねェ……。むしろ早く出て行って欲しいがァ、ここから出すのも嫌ァな予感がする」
メガネの視線の先には、地下に拉致された理事の姿があった。
樹皮を叩いて作った腰巻きだけ身につけ、やけに筋骨隆々になった肉体を晒している。
一心不乱に木の棒でサルの皮を叩いていた理事が上を見上げ、メガネと視線が合う。理事はにかっと爽やかに黄色い歯を出して笑った。
「どうしたのですか、村長! なめすにはまだかかります!」
腹から出た、いい声だった。
「いやァ……。その、なんだ。木の棒がァ、似合うようになったなァ……」
理事が握る棒は、先端に向けて太くなるいかにも棍棒といった見た目だ。
――どむっ。それを切り株に置いた皮に叩き付ける。誇らしげに胸を張った。
理事達は現地で武器を調達して戦ううちに、全員が木の棍棒に辿り着いていた。
重たい棍棒を振り回し、狩った肉を喰らう日々。死の危険と綱渡りをし、未知という刺激をビンビンに浴びて、生を実感する。
その繰り返しの果てに、理事達は若返り活性化していた。
「ちょっと話があってなァ。他の理事全員集めちゃくれねェか?」
「イエッサー!」
走り出した姿を見下ろし、メガネは顔を擦った。
――体育会系に育て過ぎたなァ。
メガネ達の言うことを聞いてキビキビと行動しなければ、あっという間に死んでしまう環境だった。しばらくは反抗的だったり無気力だったりした老人達も、いつの間にか新兵のようになっていた。
もしかすると、ダンジョン深層……あるいはエルフの里には、人を若返らせる効果もあるのかもしれない。
モンスター肉、何が染みているか分からない水、他色々と心当たりが多すぎて、定かでは無い。
あっという間に集まってきた理事。全員筋肉質で、棍棒が標準装備だ。うちの一人は、殴り殺してきたのか鹿に似たモンスターを引きずっていた。
もはやフィジカル面では、魔法使い主体の牡羊の会よりも強いかもしれない。
整列し見上げる彼らに、メガネは淡々とした口調で告げる。
「多摩支部のォ支部長さんから連絡だァ。鹿児島で戦ってる我らが親分がァ……協会経由で、知事に働きかけて自衛隊を動かすよォにと言ってるらしいなァ」
「はっ。知事を殴ればよろしいでしょうか?」
「違ェ」
キーティアが隣で頷く。
『違うのう。貴様らは、牡羊の会の者達の教えを受けておらんのか』
「はっ。申し訳ございません!」
『家族の写し絵を用意して、それを見せながら、部下の一人でも半殺しにするのじゃ。暴力を見せつけながら、我が事として降りかかる様を想像させるのじゃ』
「違ェよ!」
メガネはキーティアの頭を叩いた。ぽこん、と軽い音が鳴る。キーティアが言ったのは、かつて牡羊の会がやっていたが、今はしていないやり口だ。
――余計なことを教えやがってェ。
メガネは歯がみした。
「では、どのように要求を伝えれば……」
元議員の理事が不思議そうに首を傾げた。
「頭悪くなりすぎだろォ!!! 普通の政治やってたんだよなァ!?」
メガネは思わず声を荒げた。
理事達は不思議そうに互いの顔を見合わせた。
「なんで分かんねェんだよ!!!」
「ひとまず地上に戻り、要求を飲ませればタスクは完了でしょうか?」
「殴るなよォ!」
「ぃぇっさぁー……」
「信用できねェなァ!?」
キレ散らかしたメガネは大きく肩で息をする。
――不安しかねェが、やらせるしかねェ。色々と教えている時間もねェ。
「いい、行けェ。バイクは貸してやるゥ。おい、誰かァ案内してやれ! ついでに買い出しも済ませてこォい!」
「イエッサー!」
「うすうす。物資確認したら出ますわ!」
駆け寄ってきた若い魔法使いが、軽い調子で答える。
メガネは腰蓑姿で出て行った理事達の様子に、頭を抱えた。
『大丈夫かの? 村長がそんな姿を見せては良くないのう』
「お前がァ! 里長のはずだろォ!?」
キーティアは胸を張り、ふんすと鼻息荒く言う。
『責任は、ないないしたのだ! お前達が里を占拠したからのう!』
「ぐおおおおおォ……」
――罪には罰がつきものとは言えェ……これはあんまりじゃねェかァ?