作品タイトル不明
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打撃点から、半球状に衝撃波が飛ぶ。
凄まじい震動と圧力が俺の全身を震わせた。
戦槌の回転弾倉から、左右へ青い炎が噴き出す。
ガギン! と硬い音を立てて、弾倉が回った。
まるで落雷が直撃したようだ。背骨の奥まで痺れる。歯を食いしばり、ただただ耐えた。
世界樹が、揺れた。
風にそよぐように、小さく穏やかな揺れだ。
目の前の球状に抉れた大穴の縁を蹴り飛ばし、踏み割った。
足場を整え直し、揺れのリズムを意識する。
「もう一発ッ!!」
振り抜いた戦槌が、放射状にひび割れた繊維にめり込んだ。一発目を超える爆音が轟いた。
穴はより大きくなり、世界樹がはっきりと感じられるほどに揺れた。
「がぁっ……!?」
背中から腹にかけて、急に灼熱が駆け抜ける。
見下ろすと、腕ほどもある太さの枝が腹から飛び出し、幹に突き刺さっていた。
血が出ているのか出ていないのか、もう分からねえ。既に全身、色んな奴らの血と汗を浴びてしまっている。
世界樹も……亜神も、悪足掻きするんだな。笑える。いや、笑えねえ。死ね。
必死に枝を曲げ、どうにか小枝を俺に届かせたなんて……いじらしいことする。有効打を出そうとすればするほど、凄みがなくなるぞ?
「助かるわ。ちょっとばかり、足がふらついてたんだよ」
貫かれたまま、一歩を踏み出す。
真っ直ぐに刺してくれたおかげで、歩みは止まらねえ。
三発目を振りかぶる。木が揺れているのか、俺が揺れているのか……。まぁ、だいたい今だ。
「固定してくれて、ありがとうな!」
目を開けていられないほどの爆風が吹き荒んだ。迸る衝撃波に、口を開き、声とも呼べない音を吼える。血も唾液も吐き散らしながら、それでも戦槌を握り締めた。
世界樹が、傾いた。
裂けてひび割れた枝を握り、砕く。傾いだ幹に片足を乗せた。
バチバチと放電に似た音を立てながら、ゆっくりと繊維が引きちぎれる音が響く。
傾きが大きくなる度に、大きな震動が足から腹までを突き上げた。
息が荒い。
開きっぱなしの口から、熱い蒸気が漏れる。
痛みと疲れから、丸くなりそうな背中を精一杯伸ばし、戦槌を振りかぶった。
「あばよ、世界樹。あと、お疲れさん、ドワーフ王。後は任せろ」
永く捧げた者に、眠りを。
四発目を振り下ろした。
回転弾倉から白い光が放たれる。
貫く爆風に煽られ、宙に飛ばされた。浮遊感とともに、全ての感覚が遠ざかるような気がした。
実体の薄いふわふわとした痛みに包まれながら、舌に絡まる血の味で、生を再確認する。
巨大な山のようにも見えていた世界樹が、少しずつ遠ざかる。
俺が吹き飛んでいるだけじゃねえ。ゆっくりと、だが確かに世界樹は倒れ始めていた。
山が壁になり、壁が幹になり、そして木のシルエットがハッキリと見えるようになった。
最後に足掻くように、激しく枝葉がのたうち回る。まるで蜘蛛の巣に絡まった蟲だ。声なき奴が、眼前に現れた死神に悲鳴を上げている。
めきめきと植物が壊れる音。倒れゆく幹の下から、離脱する人影が見えた。よし。
地下空間そのものを揺るがす地響き。ついに、世界樹が完全に地に伏した。
粗く裂けた断面が晒されている。
世界樹は諦め悪く、傷口から無数のツタを生やし、繋ぎ直そうとしていた。
「残念だったな。世界樹がどこまでも面倒くせえってのは、知ってるんだ」
宙で体を捻り、横倒しになりながら一回転。
脇に戦槌を構え、重力に手を引かれながら、世界樹の切り株に落ちていく。
ぐんぐんと迫ってくる地面。剣山のような世界樹の断面。解像度が上がっていく世界。
ラスト一発、浴びとけ。
ひとつの神話の終わりだ!
脇を締めながら、思い切り戦槌を叩き付けた。
空間が歪みながら、ぼこりと泡のように膨らんで――弾けた。視界に映る全てが消し飛ぶ。
世界樹の根を丸ごと抉り、巨大なクレーターが生まれていた。
脳がズキリと痛み、耳の中で甲高い音が鳴る。
戦槌の横から弾倉が飛び出し、煙を吹き出した。痺れた手から、くるくると回りながら遠ざかっていく。
血煙を彗星の尾として、俺の体もクレーターの真ん中へ。
仰向けになりながら、浮遊感に包まれる。
一秒、二秒。意外と高い。このまま落ちて死ぬのか。
そんな考えが脳裏を過った。
「ナガ、頑張ったね」
耳元に囁き声。背中に回された二本の腕に支えられた。
下からの風が俺を包む。煤けた顔で、スイが覗き込んでいた。
空中でお姫様抱っこされてんのか?
「よお。ロマンチックなお出迎えだな。カボチャの馬車はあるか?」
「ロマンスがしたくても、ここには王子様っぽい人、いないよ」
「違いねえな」
臭いのと汚いのと、目が血走った奴しかいねえ。終わってる。
「ねぇ、ナガ」
「なんだよ」
ゆっくりと、強ばった体から力が抜けていく。どっと疲労感が押し寄せてくるのを感じていた。
それに、なんだか脱力感が凄まじい。傷つき過ぎたのかもしれない。
「なんか、色々とんでもないことになってるよ?」