軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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根に打たれ、ゴブリン達が吹き飛ぶのが見えた。砕けた体が、なんとなく人型を保ちながら拡散して肉の雨となる。

くっそ。根を打ち払うべきか。いや、それじゃあ本末転倒だ。

あいつらは、俺の足が止まったときに背中を押すために来ている。「かもしれない」を、体張って止めるために、命を懸けてんだ。

俺が足止めて枝打ちしてたら、戦いの意味すら失われる。

「2回目!」

クロスさせた根が空を切った。今度は真横への回避だ。

地に足を着き、再度走る。足を絡め取ろうとした細い根は踏み潰した。

「3、4回目!」

多段で叩きに来た根を、ジグザグに飛んで掻い潜る。攻撃終わりに隙を晒したそれらの根が、背後でバラバラになった。小松が追いついて来ている。

「上からピクシーだ。中に入れ!」

――空が落てくる!!

本能的に背筋が冷たくなった。首をすくめてしまいそうな、視界を埋め尽くす圧力。

降り注ぐピクシーに、足が鈍った。

世界樹側にとっても、ここが正念場なのかもしれない。俺たちが持つ何かしらが、世界樹から見て脅威になっているのだろう。

もう、ここで全て使い切っていいと言わんばかりの勢いで、ピクシー達が俺目掛けて飛んできていた。

ぐっと小松に腕を引かれた。

薩摩クランの隊士達が俺を包む。さらに、隊士たちにゴブリンがよじ登った。

隙間にドワーフやシャルル達も潜り込んだ。外へと砲口が突き出される。

俺を守る為だけに作り上げられた、肉のトーチカだった。

『撃て撃て!』

『余波は問わん! 笑って火傷しろ!』

砲声が轟く。ドワーフ達が吼える。

初めて見せる凶暴さだった。

「おい、外側死ぬぞ!」

俺の怒声に、小松が怒鳴り返す。

「死んでも構わん!!」

「良くねえだろ!」

「誰の死も無駄じゃなかった! 意思を理解してくれる奴がいた! 希望が残った! 儂らの居場所があった!」

にぃ、と白い歯が浮かんだ。

「これまで死んだ奴らは、今日救われた。ならば、その後を追うのも悪くない。お前さんが勝てば、勝ちさえすれば、儂らは救われるのだ」

上から凄まじい衝撃が落ちてきた。

歯を食いしばり、覆い被さる奴らを押し上げる。

隣で隼人も小松も、顔を真っ赤にして踏ん張っていた。

ぽたり、ぽたりと生ぬるいものが頬に触れる。

俺の真上で、ゴブリンと肩を組んでいるオッサンの隊士が、口と鼻から血を垂れ流していた。ふっと口の端に血の泡を浮かべながら笑う。

「ゴブリンと肩を組んで死ぬとはな。戦友みたいじゃないか」

最期の言葉だ。

名前は知らねえが、顔は覚えた。

ピクシーの滝が終わったのか、圧力が弱くなってきた。小松の号令に合わせ、脱皮するように、表層の犠牲者たちが脱ぎ捨てられる。

そこに現れたのは、腰の高さまで積み上がり、ぴくぴくと震える蝿の山。

まだ生きているのか、不気味な顔が俺の方を向いた。

一斉に、世界樹の種が撃ち出される。

迫る弾丸を前に、小さな影が割り込んだ。

真っ赤なハットとマント。全ての種を浴び、仰け反って吹き飛ぶ。

目の前で、穴だらけになったハットがくるくると舞う。

煙が広がり、中からシャルルが出てきた。足をガクガクと震わせながら叫ぶ。

「行くにゃ! こいつらは、シャルル達で掃除するにゃ!」

「良いところ持っていくじゃないか!」

小松がシャルルの背中を叩き、一緒にピクシーの山に切り掛かった。

「あとは世界樹だけだね」

隼人の腕を掴むと、一気に世界がズレる。

「5回目!」

ピクシーの山を越える。

「6回目!」

根の射程を越える。

「7回目!」

ついに枝の射程内へ。これより先は禁足地。亜神の足下だ。

振り下ろされる巨大建築物じみた枝を前に、視界が横へ。

「8回目!」

最後の天狗跳びで、空振りした枝の斜め上に出た。

隼人は俺の腕を掴み、枝に向かって投げた。親指を立てながらふわふわと落下していく。そこを小枝――というには大きすぎる枝が打ち払った。仰け反りながら吹き飛ばされていく。

クソ。死ぬなよ。

心の中でも、謝罪の声は短く。心配している余裕もねえ。

着地と同時に前転し、落下の勢いを前進の力に変える。今の俺が出せる最大の速度で枝を駆け上がった。

無数の側枝、小枝、ツタが襲いかかってくる。

デカイのだけ躱し、細い枝に殴られるのは甘んじて受けた。

下から何発も爆音が聞こえる。きっと、あいつらは上手くやってくれているはずだ!

ついに辿り着いた枝元。枝から枝へ飛び降りるように、右回りに移動する。

――だいたい、こんなところだろ。

世界樹の木肌に手を当てる。強い覇気と、なんとなく体に馴染む不思議な温かさがあった。

敵ながら、俺を構成するものと共通点が多いもんな。

だからこそ、仇敵なんだ。

戦槌を肩に担ぎ、大きく体を捻った。

肉体が持つ全ての力を溜めて引き絞る。

――信じろ。全員で積み上げた血の道は、無駄になんてならねえ。

頭から爪先まで、筋繊維が引きちぎれそうな勢いで、十三式対熊戦槌を振り下ろした。

視界が、白い光に塗りつぶされる。