軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六百十七 真・天空王

ガアルにどことなく似た面影のある謎の天空族。

長い金色の髪を靡かせ、白き翼を羽ばたかせ、どこか神々しいオーラを全身から発し、そしてその目はどこまでも冷たく、地平にいる者たち全てを見下している。

「邪魔な地上のゴミは排除。ギガツイスター」

「「「「「ッッッ!!??」」」」」

そして、何をするかと思えば、いきなりその者は始めた。

右手を突き出し、魔力を漲らせ、そして振り払うかのように手を振る。

「ッ、まっ、ダディッ!」

「ごらぁ! いきなりギガ級の……って、だでぃ?」

「ガアルさん、あの人、って、わ、わわわ?!」

「こ、これは、いかん! セイソ、お前たちは逃げよ!」

「お父さんッ!?」

「わ、わわ、飛ばされちゃうよお~!」

「アミクス、魔力を展開し障壁を! 三姉妹を守れ!」

「うおおお、なんだぁ~、これ!」

それは、戦場においては天変地異級の災厄にすらなる魔法。

巨大故、無闇に使うことすら本来は憚られるような力を、現れた天空族は使う。

だが……

「我、真・天空王なり」

「くっ……ならば、逆回転の渦で……紋章眼よ! 解析、分析、理解! ギガツイスターッ!」

ガアルが声を荒げながらも飛び、そしてその両目に紋章眼を発動させ、早速同じ魔法をぶつける。

それは、小さな辺境の島を一瞬で荒くれさせるほどの二つの巨大竜巻のぶつかり合いだった。

「……紋章眼か……」

「ダディ……一体いきなり何を! そして、その姿は! いや、それよりも……ダディ……なぜ、天空世界から姿を……」

いつも余裕に満ちたキラキラとした爽やかな笑顔を見せる天空王子のガアルだが、このときばかりは悲痛な少女の顔を浮かべて叫ぶ。

異常なほど若返り、変貌してしまったが、それでも自分の父親本人だと分かるからこそ、ガアルはもう何が何だか分からなかった。

だが、そんなガアルを前にしてもその男……ディクテイタは……

「紋章眼……我が瞳……お前のものではない。我が物なり」

「ダディ、何を……一体……」

「ギガサンダーストーム」

ガアルの叫びに興味を示さず、ただガアルが保有している紋章眼にしか関心を示さず、そのまま顔色一つ変えずに再び魔法を放った。

「ッ、ギガサンダーストームッ! ダディ、話を―――」

「ギガウィンドカッター」

「ギガウィンドカッター」

「ギガスコール」

「ギガスコール!」

「海よ……天変海異となりて飲み込め。ギガウェーブ」

「こ、これは!?」

魔法を放たれたなら、同じ魔法を放って相殺する。だが、そこでガアルは「ありえない」と顔を青ざめた。

「バカな、ギガ級をこれほど連発で……ダディにそれほどの力は……それに、こんな魔法までダディは使えない……」

明らかに自分の知る父では考えられない魔力。魔力の総量、魔法力、そして使える魔法の数まで、自分の知る父とはかけ離れた力。

「第一世代の血縁と、瞳さえ残ればよい……テラ――――」

「ッ、な、ま、まさか?! や、やめろ、ダディ! そんなもの、この島ごと――――」

さらに、ディクテイタは止まらない。

これまで以上の魔力を全身に漲らせて、更なる魔法を放とうとしている。

それがどれほどのものかを、瞬間的に理解したガアルは驚愕。

もし、それが放たれたなら―――

「ごらあああああ、ドメスティックバイオレンスムーブかますってんなら、わっちも望むところだぞ、この野郎うううう!!」

「カペ――――」

しかし、その魔法が放たれる直前、

「え……ダ、ディ……」

「「「「「あ…………ッッ!?」」」」」

怒り狂ったドクシングルがジャンプし、その巨大ハンマーでディクテイタの頭部を叩き潰し、そのまま上半身丸ごと潰れたのだ。

「ツラはイケメンだけど、心は不細工だなこの野郎! わっちと結婚したらしばらくコキつか……って、やば、殺しちった!?」

「ダダダダ、だ、だ、ダディ……あ、ああ……」

「あ、姐御~~~! や、やや、やり過ぎッ!?」

「ドクシングル様……」

「ひいい、つ、潰れ、ひいいい」

「お、おええ」

そこに、一切の容赦もなく、ガアルが「ダディ」と呼んでいたことによる忖度も頭になく、ドクシングルが怒り任せにディクテイタを潰した。

そのあまりにも惨たらしい惨状に、アミクスや三姉妹は半泣きして震えている。

「ダディが、あ、あ……」

さらに、変貌した父とまだ何も話ができていなかった中で、目の前で父が殺されてしまったことに、ガアルも整理できないでいた。

「ダディ……どうして―――」

肉片飛び散らせ、もはや下半身だけとなった父の肉体が上空から落ちてきて、それに不意にガアルが手を伸ばそうとした、その時だった。

「ギガウィンドシュート」

「ぐはっ、がっ!?」

ソレは、足だけで動いた。

「はっ!?」

「ガアルさんッ!?」

「なん、だと!?」

もはやただの死体の一部と思ったそれは、ガアルが手を伸ばそうとした瞬間に身を翻し、そしてその足に魔力を漲らせて、蹴りと共にガアルの身体に刻み込んだ。

「あ、ばか、な、あ……」

まるで、剣で袈裟斬りされたかのように肩口から深く切られたガアル。

真っ白い服が真っ赤に染まり、そのままガアルは倒れた。

そして……

「未熟な……」

「そ、ん、な……、それは……」

上半身を潰されたはずのディクテイタの身体が再生していく。

それは、

「あの再生……そうか、あのヨーセイってやつと同じ……」

ドクシングルが舌打ちをする。

それは、ディクテイタがヨーセイと同じ再生能力を持っていたからだ。

いや、

「愚かなる娘よ……我が妻を殺してまで生まれながら……所詮お前は我が血と、偶然その瞳を授かっただけにすぎん……愚かしい。地上や魔界の下等種族たちと同じ空気を吸うことを享受したからだ。我が臥せている間、天空王の真似事をしていたようだが、出来損ないめ―――」

ディクテイタもそう「改造」されていたのだ。

「うおおお、メガファイヤ!」

「…………?」

するとそのとき、助太刀というより、怒り心頭で我慢できなかったと思われるマルハーゲンが、圧倒的な力差が分かっていながらも果敢に魔法を放ち、そして剣を持ってディクテイタに構えた。

そして……

「ダーリンだけじゃねえ、あたいも! 暗黒魔法・メガダークフレイム、連射!」

「……?」

それは、ショジョヴィーチも同じ。

立ち上がり、二人はそろって構えて怒りに満ちた表情をしていた。

「お父さん、お母さん!」

「ちょ、ナニヤッテンノ!」

「ダメだよ、ざこざこざこなんだから、逃げようよぉ!」

そんな二人に、娘である三姉妹は大慌てで二人を止めようと半泣き。

だが、マルハーゲンとショジョヴィーチは怒りが収まらない様子。

それは、唐突に現れたディクテイタに、思い出の詰まった我が家を破壊されたから?

違う……

「貴様ぁ、自分の子供に―――」

「―――――――――出来損ないとか言うなぁぁ!!」

親として、我慢できなかったのだった。

「くだらぬ……下等種族どもめ」

しかし、その叫びがまるで響くことなくディクテイタは手を翳す。

「先生、私たちも! ガアルさん、少し我慢して! すぐ助けるから!」

「分かっている! 隙を作り、そして小生の転移魔法ですぐにアース・ラガンたちに―――」

「オラオラオラァ、再生しようが関係ねぇ、わっちがぶっ潰してやらァ!」

二人だけに戦わせるわけにも、そしてこのままではガアルが死んでしまう。

アミクス、ラルウァイフも立ち上がり、そしてドクシングルも暴れる気満々である。

だが……

「愚かな……ならば、見せてやろう。真・天空王となった今だからこそ、この屈強に生まれ変わった体ならば……肉体の崩壊を一切気にすることなく――――」

そんな一同に対して、ディクテイタは迎え撃つ。

そして唸り、その身に魔力を漲らせ、さらに……

「これが使える。我が出来損ないの娘もまだ知らぬ……真・天空王の更なる高み! エンジェラキングダムエナジーよ、我に力を!!」

その全身に纏う魔力がさらに増えていく。

それはまるで……

「な、なんだァ? アース・ラガンが使ってた、ブレイク――――」

「「「「アレとは全然ちがーーーーう!! ……でも、なんだろ?」」」」

ドクシングルが思わず「ブレイクスルーみたい」と言いそうになるが、それだけは認めないとアミクス、そして三姉妹が叫ぶ。

だが、実際にはドクシングルがそう言ってもおかしくないほど……

「うごぉ!?」

「「「「「え…………」」」」」

と、ほんの僅かな一瞬の油断。ほんの少し、目を離した隙に、目にも見えない速度でディクテイタの拳がドクシングルの屈強な腹筋を貫いてメリ込んでいた。