軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六百話 夢が現実に爆誕からの暴発

顔を赤くして拗ねたように唇を尖らせて上目遣いのクロン。

それがあまりにも心を乱すほど魅力的で、アースの心臓の鼓動が加速する。

早く寝なければいけないのに、疲れも眠気も吹っ飛ぶほど。

「あ、あ~、そ、そうだ、さっき部屋の前に置いてあった袋はなんだったんだ? プレゼントって書いてたけど」

「あ、そ、そうですね。はい、そうです。それを見ないで寝るところでした。みんな私たちにとってもよくしてくれているので、お礼を言うのは私たちの方なのですが……」

とりあえずこのままこの空気はまずいと思ったアースが話題を変えるように一言。

それでクロンも思い出したように、部屋の外に置いてあった『プレゼント』の袋を開けて中を覗き込んで……

「え? これは……? ……ッ!?」

「どうした?」

中を覗き込んだまま固まるクロン。

アースにはまだ中が見えない。

「まあ、これは……わぁ~……でも、わぁ……」

「おいおい、どうしたんだよ、クロン。気になるだろ。俺にも見せてくれよ」

「え、ええ……でも、これ……とある衣装です」

「衣装? 何の?」

そう、袋の中身は『とある衣装』である。

しかし、それが何の衣装なのかをクロンは答えない。

何故それほどまでに躊躇うのか?

すると……

「……『ゲットだぜ』……ですか」

「ん?」

「……そうです……シノブにもあの御胸の大きいアミクスという人にもサディスにも負けられないのです」

「あ? は? だから何だよ、クロン」

袋の中にもメモのようなメッセージがあり、それに目を通しながら色々と考えるクロン。

やがて、強く決心したように頷いて立ち上がり……

「アース、ちょっと向こうを向いていてください」

「……は?」

「これ、着ます!」

「は!? き、着るって……待て待て待て待て、今、着替えるのか!?」

「はい、着ます!」

クロンがこの場で衣装に着替えると宣言。

何の衣装か分からずも、男の自分が居る同じ部屋で着替えようとするクロンにアースは顔を真っ赤にして慌てて背を向ける。

「んしょ、んしょ……わぁ……かわいい……ふさふさです……わ、で、でも、ちょっとちっちゃくないでしょうか……わぁ……」

「ちょ、おま、やめろって、いや、本当に着替えて? いや、何に着替えてんだ?」

「まだ見ちゃダメです! 別にアースに着替えを見られることは大丈夫なのですが、これはサプライズというものにしたいので、お楽しみです!」

「え、ええ? ええええ?」

布の擦れる音、パサっと服が床に落ちる音、全てがアースをドギマギさせる。

同年代の超絶美少女、しかも自分を好きだと言ってくれ、自分も激しく意識している女の子の生着替え。

落ち着けと言うのが無理な話であった。

そして……

「……アース……そろそろ……いいです……にゃん♥」

「っ!? ……ん? にゃんって……クロン……ッッ!!??」

許可が下り、振り返ったアース。

そこには……

「なっ!?」

毛皮で面積の小さいビキニ。

伸びている尻尾。

頭にはピョコンと生えている猫耳

そして、両手は猫の手。

ただでさえ露出の多い格好で衝撃を受けているのに、そこからさらにカスタマイズされた姿。

そして、姿だけでなく、クロンは手を「にゃんにゃん」とさせながら両膝を床について……

「にゃ、にゃ~」

「ッ!?」

「拗ね拗ねぷんぷんクロン猫ですにゃ~……大好きなアースに構ってもらえないと~、ひっかいちゃう~にゃん♥」

魔性の猫女神がそこにいた。

「ッッッッ!!?? ふぁばおっ!?」

それはかつて、エルフの集落で族長の嫁であるイーテェが爆誕させた拗ね拗ねプンプン猫。

「ば、ばかな、これは俺の脳内で……まさか、いつのまにかヴイアール世界!? それとも暁光眼か!? 俺は夢を!? 夢が現実に!? どうなってんだ!?」

かつてそれを見たアースは、脳内で色々と妄想していた。

その妄想が妄想した通りのまま、今現実になった。

そして、拗ね拗ねプンプン猫はついにその猫の手でアースに物理接触する。

「にゃん♥」

「わっ、あ、わ……」

座っているアースの腿を軽くタッチ。

「にゃんにゃん♥」

「わ、あ、ちょっ、く、クロン?」

また一回、また一回と軽く叩き、アースの至近距離でクロンは上目遣いで……

「アースは色々な女の子と仲良しになって、私は遠くで見ているだけ……プンプンなので、ひっかいちゃうんですにゃ」

「お、おお、そ、そっかぁ……な、で、でも、……あ、あざといから止めた方が~ほ、ほら、俺はそう、うん、こういうのでは揺るがないから」

「あざとい? うふふふ、でも、拗ね拗ねのままだとつらいので、今日は甘え甘え猫さんになって、アースに甘えちゃうんですニャ♥ アマエ以上にごろにゃんですにゃ~♥」

「ぬぱりゃっ?!」

あざとい。

そんなことで揺らぐわけには……とアースも数秒ぐらい思ったが、秒殺された。

「ん~、皆の前ではできなかったけど、今なら独り占めなのですにゃ~」

「ちょ、く、クロン、さ、さすが、に、あ、甘えす、すぎといいますか……」

「今の私は猫さんなのでいいんですにゃ~♥ 大大大好きなアースに甘えちゃうんですニャ~♥ だめって言われたら、にゃんにゃんひっかいちゃいますニャ~♥」

甘えモードに入ったクロンは、アースの反応や久々にアースと接触できる喜びに自分でも思っている以上に興奮してしまい、ついには座っているアースの膝に頭を乗せる膝枕の形になり、その膝の上でゴロゴロくねくねとさせてアースを見つめる。

「あ、う、ぐ、クロン……ちょ、タイム……これ以上は……ギブ」

「にゃ?」

「……もう、ストップで……ほら、俺も困るし……」

「……にゃにが、困るんです……にゃ?」

アースは心の中で「ええ~~~?」となる。

そしてクロンも素で、天然で「何が困る」のかが分からず小首を傾げる。

さらに……

「ほら、アース……尻尾もあるんですにゃ~♥」

「ッ!?」

天然から、クロンはここから閃き、打算。

それは……

(そうです、理想の夫婦性生活に記載……『お尻の章』にて『男が大きな乳房が好きというのは、女を知らぬ男の戯言であり、女を知れば男は皆が尻好きになる。いや、男を尻好きにさせるのじゃ。トレンドは巨乳ではなく美尻』と書いてました……そう、お尻です!)

尻尾付きの衣装を着けた状態で、小ぶりなお尻を横に振るクロン。

アースが顔を真っ赤にして硬直。

だが……

「す、すとっぷ、も、もう、すとっぷ、かんべん、クロン、だ、ダメだってばぁ!」

「にゃ~?」

「ほ、ほら、お、お互い、あれだ、な? お、俺も男なわけだから……その、どうなっちゃうか――――」

「………あ……」

そこで、クロンも少しわかった。

顔を真っ赤にプルプル震え、唇を噛みしめて堪えるアースを見て、「ちょっと調子に乗り過ぎた」と恥ずかしいやら、申し訳なさが芽生え……

「そ、そうですね、アース……ごめんなさ…………」

しかし、申し訳ないと謝罪しようとした途中でクロンは止まった。

たとえこんな色仕掛けのような誘惑でも、アースはメチャクチャ自分を意識してくれている。

それがクロンの「女」としての本能をと抑えることができず……

「ど、どう……」

「クロン?」

「っ……どうなっちゃうかって……どうなっちゃうんですか?」

「ッ!?」

「男の子は……アースは……何がどうなっちゃうんですか?」

ソレを聞いてしまった。

「え、っと……ほ、ほら、お、男はみんな、け、けだものであり、我慢できなくなってクロンを襲ったりとか―――」

「……襲って……くれるんですか?」

「ッ!? バッ、ほら、お、お前、お前が嫌なこととかいっぱい――――」

「たぶん……私……アースにされることで嫌なことなんて……よっぽどのことだとしても無いと……」

「ちょっ―――――」

「あと……けだもので、我慢できなくなるのは男の子だけじゃないと私は思います……」

クロンがのそっと四つん這いのままゆっくりとアースに最接近。

それはまさに四足歩行の獣のようで……

「信じてもらえないかもしれませんけど……私も……これでも……今、すっっっごい我慢してるんです……」

そのとき、バサリと床に理想の夫婦性生活の本が落ちた。

落ちたはずみでページが捲られ……

――妻の心構え:拒否るなら 犯してしまおう 男の子

という、筆者のメッセージが書いてあるページが開かれた。

『(臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前)』

部屋の隅で背景と化して座っている師匠は目を閉じて無言のまま、心の中で何かを繰り返し呟いているだけ。

誰も止める者も、邪魔するものも二人の間には無い。

「アース……」

毛皮ビキニと猫耳猫尻尾肉球手袋を纏った拗ね拗ねプンプン猫のクロン。

だが、今はまたそれが変わった。

先ほどまでのように拗ねて頬を膨らませたり、イタズラっ子のような表情だったものが、今では頬を紅潮させ瞳をトロンとさせた艶っぽい、発情した猫になっていた。

「アース……もう一度聞きます……どうなっちゃいますか?」

どうにかなってしまう。で、どうにかってどうなるのだ?

まさか、クロンがそこを追及してくると思わず、アースも激しく動揺した。

何故か床の上で正座してしまう。

「い、いや、く、クロンさん、もちつきましょう。ど、どうなるかは物のたとえであって、どうならないのであって、何も問題ないのだ」

「では……何も問題はありませんか? ……ッ……こ、こんなふうに……」

「はわん!?」

自分でも何言ってるか分からなくなったアースに、クロンは少しムキになって身体をもっとアースにすり寄らせて間隔を詰める。

床で正座するアースに、ピトっとくっついて、そのままゆっくりと一緒に床の上で並んでゴロンとする。

「ひゃ、あ、あな、の、ぉ、く、クリョンッ!?」

「……にゃあ……すんすん」

「はふっ!?」

床の上でアースにくっつくクロン。

そのままアースの首筋に顔を近づけて匂いを嗅ぐ。

「……アースの匂いです」

「あ、あせくちゃいのだぞ! お、おれ、今日は熱戦烈戦超激戦続きで風呂にも入ってないのだあ! ばっちいのだぞ!」

「大好きな匂いです」

「ふぁっ!?」

「……すりすり」

「にゃば!?」

匂いを嗅ぐだけでは我慢できない。

いや、余計に酔ってしまったかのように、クロンはアースの頬に自分の頬をこすり付ける。

体も重ね合わせて擦りつける。

「アースの温もり……温かい……いいえ、熱いです」

アースもまたクロンの香りや温もりを感じた。

女神のような母性に癒される……わけではなく、どうしようもないぐらい魅力的な女の色香に興奮が止まらない。

全ての理性をかなぐり捨てて、もう本能のままに力いっぱいにクロンを抱き尽くしたいと思ってしまうほど。

「……アース……身体がピーンとなってます……その……私……うっとおしいですか?」

「い、いや、んなわけないというか、いや、緊張―っ!」

「……ふふふ……すっごい強い人たちにも果敢に挑むアースが、こんな……カッコいいだけじゃなくて、かわいくて、胸がきゅ~~ってなってしまいます。抱きしめちゃいたいです。……あっ、とっくに抱き着いてました」

アースは棒のように真っすぐの姿勢で硬直し、そんなアースをクロンは抱き枕にするかのように両手足をアースに巻き付け、スリスリする。

本当はアースが僅かでも拒否したり抵抗するようであれば、クロンもすぐに離れるつもりだったが、アースが嫌がってるわけではないと分かると、どんどん行動が大胆になってしまった。

肉球手袋を脱ぎ捨て、素手となって……

「アースの手……えへへ、にぎにぎ」

「~~~~っ」

抱き着きながらアースの手を握る。幾多の強敵を殴り、砕き、貫いてきた強靭な拳がクロンの無垢な手で染められる。

指一本一本を絡めるようにしたり、その手で自分の頬を撫でさせたり……

「……ぱく」

「ッ!?」

その指を咥えたり……

「ぺろぺろ……」

「く、あ、あ、くろ、ん、なにを……」

「おいしい」

その指を舐めた。

クロンがアースの指を咥えて舐めた。

それは、アースの人生にとって未知な行為。

なんで?

くすぐったい。

ドキドキが止まらない。

いや、そもそもこの慣れたような舌の動きは!?

「アースは……キスをしたことありますか?」

「うぇ!? え、な、なんで!?」

「私は無いです……だけど……いつかのときのために、訓練しているのです」

そう言ってクロンは、アースを押し倒したまま手を伸ばして、テーブルの上に置いてあるさくらんぼに手を伸ばす。

そしてさくらんぼを三個口の中に入れて……

「もにゅもにゅ、むにゅむにゅ、あむあむ……んふふ~、ほら」

「ッ!?」

舌をペロっと出すクロン。

舌の上には、さくらんぼのヘタが三つ、結ばれていた。

「あ、あわ……」

舌を出すクロン。

テラテラと光る舌と唾液に濡れたさくらんぼのヘタ。

色気のある女の顔で微笑むクロン。

その全てが……

「……いいですよ……アースも」

「ッ!?」

「い、いいって……な、なにが……」

「……にゃぁ……」

「ッ?!」

何が? するとクロンは素手で軽くアースをひっかいた。

まるで、今更そんな分かり切ったことを聞くのかと言っているように。

「……私……そんなに……美味しそうじゃないですか? お胸は小さいですし……」

「ッ、あ、いや、そんなこと……」

「でも、負けたくないのです。シノブにもサディスにもフィアンセイにも……あのアミクスという女の子にも……」

「クロン、あ、あの、俺は……」

「私は……あなたが欲しいです!」

何も言えずにただ狼狽えて震えるアースに対し、クロンは行動も言葉も全て正直だった。

「く、クロンッ! お、俺は―――――」

「アースッ!」

これほど魅力的な女にここまで言われ、ここまでされ、何も言わない何もできない自分の恥ずかしさ。

(シノブ――――サディス――――あああ、ダメだよぉ、こんなの、まだシノブに何も言ってないのに、こんな勢いで、そんな不誠実なこと―――フィアンセイだってまた泣くし……)

ジャポーネで、まさに今日の今日までこの数日間何度も自分に好きだと言ってアピールしてくれたシノブへの想い。

分かってる。そのシノブに対しても答えを示せてないのに、今だって自分に好きだと言ってくれるクロンに対しても答えを示せていないのに、こんなことはダメだと分かっている。

しかし、疲れ切った身体と精神と、男としての欲望がもう抑えられそうになかった。

もう、どうにでもなれ。そう思ってしまいそうになる。

アースの理性が崩壊しそうになった――――

だが、それでも―――――

――明日改めてね。だからハニー……明日以降と言っておきながら、私に『行ってらっしゃい』もさせずに旅立ったりしたらどうなるか分かるかしら?

あのただただ真っすぐな目に対して、何の筋も通さないまま、ついさっき「また後で」と言って離れただけの女に対し、「なんかヤッちゃいました」じゃないだろう。

それがアースの最後の理性を繋ぎとめた。

「やっぱり……今は……ダ――――」

ギリギリで踏みとどまり、「今はダメだ」と口にしようとするアース。

だが、事態は思いもよらない事故……いや必然を起こす。

「あっ――――」

それは、生物として、人間として、男としての、そして経験不足やら色々とため込んだあらゆるものが起因して……

「はうっ、く、うう、あうっ!?」

「……アース?」

「ッ、あ……あわ………」

暴発―――

「アース? どうしたのです? そんな、急に体を震わせて……」

「……あ、あわ……あ……う、あ……」

アースがクロンの身体に手を伸ばして止めようとし、クロンはアースが自分に手を出そうとしていると思ってそれを受け入れようとした瞬間、寸前でアースは固まった。

(う、うそだ、お、おれ、おれ、……まさか……クロンとどうにかなる前に……で、出――――ッッ!!??)

そしてアースは真っ赤だった顔を青ざめさせ、そして薄っすらと涙が浮かんでいた。

「アース?」

アースに何があったのか? 異変を感じたクロンがアースの顔を覗き込もうとしたその時……

「そこまでだぁぁ!」

「ふぁっ!?」

「ッ……大声出してごめん……クロン…………ここまでされ、ここまで言われ、だけど今はダメだ……クロン」

「……え?」

そのとき、先ほどまで混乱してパニくってされるがままだったアースが、途端にクロンにそう告げた。

『ぼふっ!? ぶっ、ぷぷぷ、ぶっ、ぷぷぷぷぷ』

瞑想していたトレイナ、口を手で抑えながらも耐え切れず大爆笑。