軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百七十四話 四人

「ぬう? なんなのじゃ? なんかあのデカブツがまた暴れようとしているのじゃ?」

アースたちの後を追いかけようとしていたノジャたちは、王都の外に運ばれたゴドラの様子の異変に気付いた。

「え? うそ、なんで? だって、エスピ姉さんの力で抑えてるのに?」

「ふむ……何かあったのかな? それとも余裕のつもりで遊んでいるのかな?」

「いくら何でも……いえ、分からないわね。あの二人がハニーに良いところ見せようとあえてそうしていたり……」

いずれにせよ、自分たちも早く駆け付けて様子を確認しなければならない。

そのはずなのだが……

「排除。殲滅モード」

「ターミニーチャン、殲滅モード」

エスピやスレイヤが大暴れして大体の数は減らしたはずだというのに、王都にはまだまだターミニーチャンたちが残存していた。

これを無視して自分たちまで王都の外に出たらどうなるのか?

「えええい、うざったいのじゃあああ! 雷霆!!!!」

「早くアース様たちのところに行きたいのに……」

「まったく、骨が折れるね……」

「でも、これを放置するわけにはいかないわ!」

まずは綺麗にこれらを片付けなければならない。

ノジャたちは足止めをくらい、その間にも王都の外ではゴドラがその巨大な身体を捩り、足踏みし、轟音が響いていた。

そして……

「ダメだ、ブレイクスルーも魔呼吸も……なんだ? 魔法がキャンセル? いや、うまく吸い込めない? どういうことだ?!」

実際にアースたちはピンチだった。

「私も能力がいつものように発動できない……これは……」

「まさか、魔封じの……いや、そういった封印術の魔力を感じない……それならこれは一体?」

三人は自身の身体の異変に即座に気づいた。

魔力を使った戦いに慣れているアースとスレイヤ、類似した能力を使うエスピ。

三人の力が発生しなかったのである。

『なんだか分からない、けど、拘束が解けた! 今すぐ踏みつぶす! 薙ぎ払う!』

ゴドラの中のマクラも何が起こっているのか分からなかった。

しかし、これまでゴドラごと自分を拘束していたエスピの戒めから解放されたことに気づき、即座にゴドラを動かす。

「お、おおお!?」

「うわ、な、やばい、ちょ、離脱するよぉ!」

「お兄さん、走って!」

想定外の事態。

別にアースもスレイヤもエスピも、魔法や能力なしで戦えないわけではないし、ソレを使わなくても常人よりはるかに優れた力を持っている。

アースも対人戦では魔法を使わずに戦うことも多い。

しかし、流石にコレは話が変わる。

魔法や能力なしで戦うのはありえない大怪獣。

まずは事態の把握よりも距離を取ることが先決と三人は慌てて走り出す。

しかし……

――モンスタースタンプ!

「どわわああ、すっごい揺れ!?」

――モンスターテイル!

「まっ、まずい! 衝撃が!?」

地面を揺らし地形すらも変えるほどの踏みつけ、尻尾の薙ぎ払い。

王都のど真ん中でやったときのように、強烈な衝撃波が三人を吹き飛ばす。

「うお、あぶ、ね、ぐぅ! ドわあああああああ! やべえ、二人ともぉ、いるかぁ!? ぐっ、土煙で……岩とか土の塊とか、レーダーでっ……て、使えねえ!」

ふきとばされ、地面を転がり、何とか立ち上がるも、三人ははぐれてしまった。

さらに、すぐに視界を覆うほどの土煙が周囲を覆いつくし、アースたちの視界を奪う。

踏みつけと尻尾攻撃によって巻き起こる土煙の奥から、巨大な大地の破片、無数の砂利までアースたちに降り注ぐ。

「いったあ~、ちょっと体打った~……っ、いるよぉ、お兄ちゃん! って、土煙ひどすぎて……ぐっ、気配を探ろうとしても……色々飛んできて、ッ!?」

「ぐっ、とにかく、今はこの場から離れよう! まずはそれからだ! 離れた場所へ出て、そこから合流は考えよう!」

回避しようにも、合流しようにも、三人には、魔法も、能力も、感知もできない。

――モンスタービーム!

そして、ゴドラは止まらない。その無機質な両目を光らせて、輝く光線を放った。

「なんか光って……何か出てきた!?」

「分かんないけど、触れたらヤバそうだよ!」

「エスピ、お兄さん、気をつけて!」

放たれた光線をバラバラに飛び退いて回避するが、その威力は絶大。

大地に深々と巨大な穴を作るほど。

いつものアースたちの力であればこれぐらいのことは造作もないのだが、魔法を何も使えない状態では、まともにくらえば死に直結する。

――ビームビームビームビーム

それを、マクラは遠目から連射してきた。

「ちょ、まずいぜ、まだ力が使えないし……エスピとスレイヤも声は聞こえるけど……正確な位置が……集中しようにもあのデカいのが気になって集中できねーから光る道も見えやしねえ……ちょっと侮り過ぎていたかもしれねーな……」

さっきまでは、もっと簡単に倒せると思っていたが、こんな奥の手があり、こんな状況になるとは思っていなかった。

アースだけでなく、それはエスピもスレイヤもであった。

巨大な土煙の中、ゴドラや飛んでくる砂や岩やらばかりが気になって、エスピとスレイヤとも合流できない。

どうにかしないと。

そう思ったそのとき……

『童、そこで止まるな! 左斜め後ろへ向かって走れ! そこが一番安全地帯だ! 足を止めるな! 生身であろうと、石の一つや二つに当たったところで致命傷にならぬ! 気をつけるのは光線のみ。ソレは余が見極める』

「ッ!?」

『エスピには右斜めに向かって走るように伝えよ! そしてスレイヤにはそのまま真っすぐ進むように言え! そうすれば合流できる!』

アースの傍らから聞こえた。その言葉をアースは欠片も疑うことなく応えて走る。

「エスピ、スレイヤ、聞こえるか! まずは合流する! エスピは右斜めに、スレイヤはそのまま真っすぐ走れ!」

「え、おにいちゃ……」

「お兄さん!」

そんなアースの声に驚くエスピとスレイヤだが、迷っている場合ではなく、ただアースの言う通りに走る

そして……

『……ふん……まだ尻尾を振り回し……童、エスピに一旦しゃがむように言え!』

「エスピ、一旦しゃがめええええええ!」

「うぇ!? え……しゃがむ……? うわっ、今、大岩が……え?」

『スレイヤは一旦直角で右に!』

「スレイヤ、その場で右に直角真っすぐ!」

「ッ、……うわ、い、いま……お兄さんの指示通りにしなければ……光線みたいなものが」

走る三人は途中で視界を覆う土煙の中で背後から飛んでくる攻撃を、全てアースの声通りに動いて回避。

避けた後でエスピとスレイヤは驚きを隠せない。その指示が的確だったからだ。

「無事みたいだな、あいつらも……つか、あんたの目ならこの状況下でも……」

『当たり前だ。余を誰だと思っている?』

もちろん、今の状況下でレーダーも使えないアースは、エスピとスレイヤの正確な位置は分からない。

ましてや、そんな二人に対して飛んでくる攻撃も分かるはずがない。

しかし、アースの傍らの人物にはすべてが分かる。

「おっ、少し視界が晴れて……だいぶ走ったし、ここまでくれば……わ、お兄ちゃん!」

「エスピ、お兄さん! 良かった、合流できたようだ!」

そして、ようやくゼロの視界が少し落ち着いたところまでたどり着いたとき、三人はまさに同時にピンポイントに合流できた。

「よう、大したケガもなさそうだな」

「うん、でも、すごいよ、お兄ちゃん! お兄ちゃんの指示が全部ドンピシャだったよ? しかも、ちゃんとこうして合流できて……」

「うん。レーダーは使えなかったんじゃないの? どうして……」

合流に喜びながらも、アースの指示の的確さに驚いて尋ねるエスピとスレイヤ。

だが、口に出したのはアースであっても、指示したのはアースではない。

それは……

「俺じゃねえよ」

「「え?」」

「俺の師匠だよ」

「「…………ッ!?」」

そう言って、アースが自分の隣の何もない空間を指さすことに、一瞬首を傾げたエスピとスレイヤだが、すぐにハッとして気づいた。

そう、トレイナだ。

『やれやれ……三人そろえば無敵みたいな空気を出しながら、少し魔封じの状況に追い込まれた途端にこのザマか……情けない。ふはははは、やはりまだまだだな、貴様らは』

「は、はは……」

『この世には魔封じだけではない、魔法を反射して跳ね返す力を使う者や、魔法無効化という特殊な能力を持つ者だっている。それを頭に入れていれば、この事態とて別にそれほど特殊な状況ではない。まぁ、そういう者との戦い方についての指導はまだしたことはなかったが……それにしても、やれやれだな。まだまだ余が色々と教えてやらんとダメだなぁ~』

三人にとっては予想外のピンチの状況下。

しかしそれが何だか嬉しいのか、得意満面の笑みで身を乗り出すトレイナ。

そんなトレイナの様子にアースも思わず苦笑。

「お兄ちゃん……つまり、今のはそういうことなの?」

「つまり、……お兄さんのことだけではなく、僕たちのことまで……助けてくれたと?」

そう、これから先、エスピとスレイヤはアースとどこまでも一緒に行くと誓っていた。

しかし、それは三人ではないのだ。

四人なのである。

「ああ。魔法を使えないぐらいで慌てるなんて情けない、まだまだだなって、鼻で笑ってるよ」

「むう、べべ、別に慌てたわけじゃ……ちょっと驚いただけだし……」

「……まあ、とはいえ、ちょっとここからどうすればいいのか悩ましいところだったけど……」

三人の力を合わせたら何でもできる……わけではなかった。

しかし、それが四人になれば……

『うむうむ、仕方ない仕方ない。ならば、ここは一つ余が手を貸してやるしかないようだな。やれやれ、本当に手がかかる。童一人でも手がかかったというのに、今度からは三人になるというわけか。やれやれ、少しは余を楽にさせて欲しいものだがなぁ』

四人になれば本当に不可能というものがなくなる。

口では「仕方ない」と言いながらもどこかご満悦のトレイナに、アースはあえてツッコミ入れずに苦笑していた。