軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百七十五話 それではつまらん

世界の果てで、現在の天地魔界含めた者たちを左右させる黒幕は大忙しだった。

「ひははははは、なんとか音声を遮断できた~。ひはははは、『マジカル・ミュート』……まさかこの機能を使うことになるとはね~」

空に映るのは、ゴドラと離れた距離で対峙する、アース、エスピ、スレイヤ。

三人は何か会話をしている。

しかし、その会話は一切聞こえてこない。

そう、エスピが合流して少ししてから、空の光景は途絶えることは無いが、音だけは途絶えてしまったのだ。

その状況に世界中が困惑して首を傾げている。

何故急に声が聞こえなくなったのだ?

三人は一体何の話をしているのだ? ……と。

『あの、どうされたのですか? 何か不具合ですか?』

それは全てが、黒幕であるパリピの判断であった。

生配信ということで編集できないということもあり、パリピはこれからアースたちが恐らく「ちょっとまずい会話」をすると予想した。

パリピの独断であるため、ジャポーネに現在いるコマンは不思議そうに問いかけてきた。

「ひはははは、ま、いーじゃないのよコマンちゃん。今はただ、巨大デカブツに挑む三人ってことで。それに、音声が漏れてアースくんに気づかれる方が嫌だし」

『はあ……でも、七勇者のエスピとスレイヤはこの配信のこと知ってますよね?』

「うん。だけど、色々とそれどころじゃなかったアースくんと違い、二人は『音だけが途絶えた』ということにはもう気づいたはず。ならば、二人はこのまま知らんぷりして続行するはず。だって二人は、『大好きなアースお兄ちゃんが世界の人たちに驚かれる~』、『自分とお兄ちゃんの力を合わせた最高のコンビプレーを世界中に見せつけちゃうんだ~』とかいうことが、たまらなく嬉しいだろうからね~♪」

『そ、そうですか……?』

「それに~、あえて音を流さない方が~みんな気になって気になって仕方ない~ってなるじゃん♪」

そう言いながら、パリピは中継先が映っているアース、スレイヤ、エスピの姿を見る。

すると、エスピとスレイヤが、コッソリ耳打ちするように……

『……ところで、スレイヤ君。気づいてる? 空……』

『うん。声が……ね。どうやら、黒幕が何やら小細工しているようだけど……』

『……じゃあ、いいのかな?』

『さあ。だけど、奴はどうやらこのことについてはまだ世界にバラす気はないんだろうね。鑑賞会でも「バキューン」とか入れてたし』

現在、世界中はこの光景は見れても、音は流れていないため、エスピとスレイヤの今の会話も聞こえない。

そう、「パリピ以外」は。

そして……

『じゃあ、とりあえず今は気にせず?』

『……で、イイと思う。その上で僕とお兄さんの……』

『違う違う、私とお兄ちゃんの……』

『『息のあったコンビプレーを世界中に見せつるということで……あ、お兄ちゃんの(お兄さん)の師匠も入れて』』

ここは知らんぷりし、そしてアースには内緒にし、そのまま世界中に自分たちのことを見せつけようという会話。

まさにパリピの予想と全くズレが無かった。

「ひははははは、ほらな」

無論、音を途絶えさせたのは、このことを知らないアースに「気にさせない」というだけではない。

(ひはははは、とにかく、もし会話の中でウッカリあの御方の名前が出て来ちゃったら……世界中がそれどころじゃなくなっちゃうからな……今はただ、あのデカブツと戦う、『再会した家族』というテーマで盛り上がるのがいい感じだろ。あの御方の名前を出すのは……もうちょい先でいいだろ。ま、他の六覇はもう皆が気づいてるだろうけど……残りの七勇者のバカや、ミカド……そして―――)

そこは、パリピなりの忖度というものがあったりした。

すると……

『ねえ、ところでさ~。アースっちにばかり気にしてたけど……』

「ん?」

通話の向こうでコマンの隣にいる、オウナの声が聞こえ……

『ゴクウと、あの鳥の姉さん……あと……国王……いないんだけど』

「……ひはははは♪」

その情報に、パリピは愉快に笑いながら……

「だいじょーぶ。ちゃ~~~んと、把握してるよ。把握してるだけだけど♪ 所詮、力はあってもただのバカだからさ、あいつらは~」

『『??』』

「さ~て、どこにあるのかね~新しい竜宮城は。ひはははは、場所さえ分ればいつでもどうにでもできらぁ~」

と、意味深に呟いた。

圧倒的不利な状況に陥ったはずのアースだったが、今は大して悲観していない。

「さて、じゃあ、私たちはどうすればいいのかな?」

「僕は言われたとおりに動くよ」

「ああ。さ~って、どうするんだ?」

負ける気がしないからだ。

エスピとスレイヤは、アースがそこまで自信を持てるほどトレイナを分からない。

だが、ここまでアースが信じるのだから、自分たちも信じるだけだと、迷いはなかった。

『よいか、童。あのデカブツが発している能力は、魔力の波を乱すこと。よって、練り上げたり、コントロールしたりして放とうとする魔法を全て乱すことによって、不発させたり、恐らく場合によっては暴発させたりするのだろう』

まず、トレイナがそのあらゆるものを見極める瞳でゴドラを分析し、それをアースに伝える。

『だが、それはあくまで『乱している』のであって、魔力そのものが『消失』しているわけではないのだ。だからこそ影響の範囲外に出れば問題なく魔法をまた使える』

トレイナの声はアースにしか聞こえないため、その説明を漏らすことなくアースは頭に入れる。

『範囲は、ここから更に後ろに10歩の距離だ。まずは七歩下がれ』

「ああ。エスピ、スレイヤ、もう少し下がる」

「「了解」」

言われるがまま、もう少しだけ後退するアースについていくエスピとスレイヤ。

そして、まさに丁度7歩目ほどで、三人は自分の身体の異変が元に戻ったことに気づいた。

「おお、この感じ!」

「ん、戻ったね」

「すごいな……この数歩、景色に特に変化はないのに、魔力を感じる」

元に戻ればこっちのもの……と、再びアースたちが向かおうとするが、そうではない。

『待て、そこから内側に入ったら、また魔法は使えなくなる』

「え? あ、待て、エスピ、スレイヤ、まだストップ。近づいたらまた元に戻るらしい」

「「うぇ?」」

『ここからあのデカブツへの直線距離分を半径とした、奴の周囲、空も含めて、全てにあのジャミングが広がっている』

「ちょ、ちょっと待て。それじゃあ、俺らはこの距離から動けないじゃねえか! ここからアレに攻撃しろってのか?」

『それもダメだ。例えばここから魔法攻撃をしたところで、奴のジャミング有効範囲内に入れば、その魔法は形を保てずに四散する』

「マジかよ……じゃあ、魔法攻撃が通じない? まさか、素の力でアレを倒せってのか? しかも向こうはデッカイ光線とか足踏みで衝撃波だしたりとかできんのに!? つか、それならあんたでも倒せなくね?」

『ふん。余ならばジャミング干渉不可の魔法やらを使えるのでな。まあ、それを今から貴様らに身に着けさせるのは不可能なため、それはしないがな』

サラリと『トレイナには対象外』という、改めてトレイナが規格外であるという情報を口にされたが、今の自分たちにはどうしようもない話であり、その話は一旦置き、その上でアースがトレイナの言葉を待つと……

『確かに一見すると、死角のない怪物のように見えなくもない……が、アレを起動するのに膨大なエネルギーを使用しているのは見て明らか。気づいていないかもしれぬが、アレが登場した時と今では……あのデカブツの温度がとてつもなく上昇している』

「え? 温度……?」

『まあ、当然ある程度の冷却機能は持っているのだろうが……先ほどのジャミングやら光線やら癇癪やらで、その表皮が非常に高温になっている。冷却が追いつかぬほどの力を使わせ続ければ、オーバーヒートを起こして停止するだろうし、そうでなくてもエネルギーがすぐに底を尽く』

「……えっと……あ~、ようするに」

トレイナに言われたことをアースは自分の頭で整理しながら口に出す。

そうしなければ、エスピとスレイヤも分からないからだ。

そして……

「あのデカブツは動いたり攻撃したりするのにすごい力を使う……から、放っておいても勝手に止まるし、むしろこのままもっと暴れさせてればもっと早くに止まる……ってことか?」

『まあ、そんなところだ。攻撃する必要などない。奴を動かし、そして避けることだけに従事すれば勝手に終わる』

「おお、そうだってよ!」

「「へぇ~~、そんな方法が……」」

そう、ゴドラは生物ではない。そして、莫大な力と引き換えに、活動可能な時間も限られているのである。

それは盲点だったと納得するアースたち。

「じゃ、あいつをおちょくって走り回るか? 鬼ごっこは得意だしな。ブレイクスルーを使えなくてもな」

「ん~、素の力で鬼ごっこ~……私は微妙だなぁ~」

「ならば隠れていればいいよ、エスピ。僕とお兄さんの二人で華麗に―――」

そして、それならばと、その方法でゴドラを機能停止させてやろう……と思ったアースたちだったが、そこでトレイナはニヤリと笑みを浮かべた。

『だが、この四人が揃って、そんな消極的な方法はつまらんな!!』

「え?」

「「?」」

『四人で勝つというのはそういうことではなかろう? あのデカブツが活動可能限界に達する前に倒し切る。それこそが、勝利というものだ』

と、ここに来て、ピンチを乗り越えるだけではトレイナは微塵も満足しない。

勝つということは、倒すということだと口にした。

「うぇ?! あ~……いや、ちょっと待て、エスピ、スレイヤ、なんか師匠がソレはつまらんとか言い出した! 勝利とは、倒すこと、だってさ」

「……え!? いや、つまんないって、どういうこと? 倒すって……昔は気づかなかったけど、トレイナって意外とワンパク? 熱いね」

「いや、これは別にゲームなわけでも……え、トレイナさんってそういう人なの?」

これにはエスピとスレイヤも驚いた。

『では行くぞ? まずはエスピが―――――』

「「「………え?!」」」

自分たちがイメージしていた大魔王トレイナが、まさかそんな熱いことを言うなどと思ってもいなかったからだ。

「あー! あそこに居た、あの三人! 逃がさない……踏みつぶす! 私の人生をもう誰にも邪魔はさせないッ!!」

そんな作戦会議をしている三人だが、ようやく巻き上がった砂埃などが晴れて、マクラもアースたちの位置に気づいた。

そして、今度こそ殺すとばかりに、再びゴドラを激しく動かそうとする。

そこで……

『ふっ、地上とは大地があってこそ……そして大地は全て繋がっている。たとえ、奴の周囲で魔法が発動できずとも、この距離でも大地の流れ、地脈、地盤を見極めれば――――』

「なんかもう、ほんとやるからね? ふわふわ 世界(ヴェルト) !」

地面が、大地が、揺れた。

「わ、だ、な、なに?! じ、地震!? 大きい!」

起動させようとしたゴドラだが、足元が激しく揺れてバランスを崩し、走りだせない。

それどころか、その間にもエスピの能力は止むことなく、大地に徐々に亀裂が走っていく。

「す、スゲーな、エスピ! 物を浮かせたり自在に操ったりだけじゃなく……だ、大地を掴んで浮かせようとすることで、結果的にこの地震!?」

「わ、私、こういう使い方しようとは思ったことなかったけど……なんか……大陸を……地の奥底から色々と浮かび上がってるのが分かる……」

「使っている本人も把握できない力とは……しかし、それをエスピができると分かるトレイナさんもまた……」

それは、エスピ自身もやりながら驚き戸惑う力。

『ふん、貴様の能力なら可能。これまで自分自身や相手や武器などを浮かせたりすることしかしていなかったが、貴様は音の振動も、そして空気すらも掴める……であれば、大地も掴める。ならば、そこから地震だろうと、砂嵐だろうと、地割れだろうと、土石流だろうと、いや、いっそのこと、地の奥底深くからマグマでも浮かせることもできよう……ふふふ、まさに地上無しでは生きていけない人間の生活を……世界を滅ぼす力!』

腕組しながら、悪い笑みを浮かべるトレイナ。

『さて、エスピが浮かせるものの中からスレイヤの力で砂鉄や砂金を集めるのだ。スレイヤは無から鉄を精製する、造鉄魔法使いだが、本来は元々あるものを加工したり、操ったりすることも可能、というよりそっちの方が本当は簡単で―――』

まだ若くも、その能力や魔法や戦闘技術はほとんど完成されていると思っていたエスピやスレイヤすらも、今まで以上に引き上げる。