軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百七十三話 イチャる

世界が熱狂し、そして涙した鑑賞会。現在世界が知っているのは「アース、エスピ、スレイヤ」が再会して、「これからはずっと一緒」と約束したところまでである。

そんな中で、鑑賞会はその続きではなく、現在リアルタイムでジャポーネで起こっている大事件を報じられている。

それがまたあまりにも大きすぎる内容だったがため、皆が「そのこと」が頭から抜けていた。

しかし、だからこそ、誰もが「そうだった」と唸った。

「やあ、エスピ。お兄さんに守ってもらわないと何もできないとは……ふぅ~、やはり足手まといだね。やはり最強は僕とお兄さんのコンビであるべきだね。君は見物でもしていたらいいよ」

「は? 何言ってんの!? そんなことないし! 余裕だし―!」

「あ~もう、お前らぁ~」

左右でアースにくっついて、アース越しにいがみ合うエスピとスレイヤ。

二人は既に二十歳を超えて、アースよりも年上である。

しかしその三人の姿に、鑑賞会で見た幼い頃の二人をそのままだぶらせて、世界は目頭が熱くなった。

――そうだった。三人は再会したんだ!

と。

そして、アースは文句を言い合う二人の頭に手を伸ばして……

「はいはい二人とも! いーこだから喧嘩すんな」

「「お兄ちゃん(お兄さん)」」

「まったく、頼もしい家族だぜ」

年下のアースに頭を撫でられると、エスピだけでなく、すました顔のスレイヤも口元が緩みだしている。

それは、エスピもスレイヤも、年齢など関係なくアースに対しては「弟と妹」なのであるということを示している。

それがあまりにも幸せそうで……

――あん、も~ぉ、さいっこう!

――ちょ、エスピもスレイヤもかわいい!

――アース『お兄ちゃん』を大好きすぎ!

――おおぉん、坊ちゃま、どちゃくそてぇてぇ!

――もう、この三人しか勝たん!

――これ見るために今日の鑑賞会待っていたまである!

と、悶える声が響いた。

だが、賞賛する者だけでなく、当然中には……

『わ、たしを……バカにしているの!? ふざけないで! わ、私は……私はこの国の王妃ッ!』

特にマクラは自分を無視してイチャイチャする三人に余計に怒りを募らせる。

ゴドラをエスピの能力で拘束されて浮かされて、逃れることはできない。

だが、それでも他の駒を使ってどうにかしようともがく。

『まだ残存する駒が居るんだから! 出て、暴れて、殺してぇえ!』

その叫びと共にマクラの指示に従うように、倒れているターミニーチャンたちが破損した身体で動き出す。

そして、ただ起き上がるだけでなく、破損した部位や欠片を自身に結合させて修復していっている。

「おや、僕の刀幻郷を受けてもまだ起き上がるのかい?」

「あれれ~スレイヤ君おかしいね~、私のことグチグチ言ってる割には~倒せないんだー。お兄ちゃん、どう思う~?」

「むっ、いやいや、お兄さん。さっきのあんなのは別に全力でも何でもない挨拶代わりだからね? 僕の滅殺技はあんなものじゃないから」

「はい、言い訳~、やーいやーい」

だが、そんな中でもスレイヤとエスピは仲良さそうにしか見えない喧嘩を続ける。

マクラからすれば甘く見られて舐められているとしか思えぬ両者の態度は、余計にマクラを煽るだけだった。

それでも……

「むう、ならばもう少し僕の力を見せてあげよう! 見ていてね、お兄さん!」

それだけの余裕を見せられるだけの自信と確かな力がエスピにもスレイヤにもあるからだ。

「刀の世界は闇を斬り裂くオーロラとなりて、更なる光の剣の世界を創世する! それは、幻ではなく根源の世界! 煌け・極光破邪天帝刀源郷!!!!」

とりあえず先ほどよりも大量で巨大な剣が無数に出現して、ターミニーチャンやドローンと呼ばれるものたちを貫くどころか叩き潰して粉砕していった。

「お、おお……すげ、流石だなスレイヤ」

「ッ!? お、お兄さん……う、うん、……っよし!」

アースもまた唖然としながらスレイヤを褒めると、スレイヤはピクッと身体を震わせて、小さくガッツポーズ。

「むうううう、お兄ちゃん、ほら見て見て! ふわふわ世界でもっとデカブツあげちゃうからぁあ!」

頬を膨らませてエスピも対抗心を燃やす。

それは、ジャポーネ王都をメチャクチャにする怪物相手との戦いだというのに、ただ大好きな兄に褒められたくて張り合う弟妹のホッコリにしか見えず、鑑賞している者たちは頬を緩めるしかなかった。

そんな中……

「ン? つか……なーんかさっきから声が……空からも? なんか響いてね?」

そこでようやくアースがハッとした。

空には天空世界が広がっているのだが、その空からも自分たちの声が聞こえてるのではないかと。

そう、アースは知らない。

現在この光景が鑑賞会形式で世界に流れていることを。

エスピの能力でうまく「音声」をコントロールしてアースたちに気づかれないようにしていたが、エスピが参戦したことでそれができなくなった。

ただ、空に写されるものに関しては、たまたま天空世界が現れたことによって覆い隠した。

しかし、「音声」だけはどうにもならず、アースは自分たちの声が二重に聞こえる変な感覚に襲われていた。

だが……

「あ~、うん、お兄ちゃん気にしない! ほら、私と一緒に!」

「こら、エスピ、お兄さんにくっつき過ぎだ、まったく! さ、お兄さん、僕と!」

「あ、いや、こら、お前らぁ~」

エスピもスレイヤも説明が面倒になったのか、とりあえず「気にするな」とアースをそのまま引っ張っていく。

「ちょっ、し、信じられない。口げんかしたりイチャイチャしながら……あんな大きな怪物を浮かせたまま王都の外へ……」

「相変わらず、兄さんと姉さんは仲良しだよね~」

「あれ? 仲良しなのかい?」

「ぬわあああ、待つのじゃぁ! わらわの存在が霞んで……おーい、エスピ―、スレイヤー、わらわが将来の義姉なのじゃー!」

邪魔なターミニーチャンたちも蹴散らして、ゴドラを浮かせたままアースたちは被害を拡大させないためにも王都の外へと運んでいく。

「い、いいぞー、弟妹たちー!」

「がんばれー、エスピちゃん!」

「スレイヤー、彼女に優しくしろよー!」

「アースくん、もう一度二人に『いいこいいこ』してー!」

その様子を、避難完了済みのジャポーネの民たちも遠目から鑑賞。そして同時にそれが今の全世界の人類の声でもあった

『そんな……どうしてこんなことに……どうして……』

これほど巨大な力を持ちながらも、何も思い通りにならない事態に、マクラはゴドラの中で涙を流した。

『皆で、私を倒せと……笑いながら……ヘラヘラ笑いながら私を! ワタシヲ! ドウシテ!? 私が何をしたっていうの?!』

自分が何をしてしまったのかも分からなくなり、ただただ泣き喚くマクラ。

その叫びに関わらず、運ばれるがままだったゴドラがついに大きな音を立てて地面に降ろされた。

「よっし、配達完了♪ あ~、重かったぁ~」

王都の外へと運ばれ、そこは大きな平原が広がる地。

地面に降ろされたものの、エスピの魔法の拘束は解けていないため、相変わらずゴドラは身動きが取れない。

「よっし、お兄ちゃん、もう周囲に気遣い無用。もうここはアレだね! 私とお兄ちゃんのでっかい大魔螺旋だよ!」

「何を言ってるんだい、エスピ。ここは僕とお兄さんのだよ」

「……三人じゃ駄目か?」

そして、あとはトドメを刺すだけだと余裕の三人。

マクラにはもう成すすべなく……

『うううう、何で何で何で! 動かないの?! こんな魔法なんか消しちゃってよ!』

だが、その時だった。

――命令ヲ受理シマス

『え……?』

ゴドラの中で何かの声が響いた。

そして……

――マジックジャマー。システムオン

『え?』

そこで、アースたちには完全に予想外の事態が起こった。

「っ、え?! アレ? え?」

まずいち早く察知したのはエスピだった。

『アレ? アレ? ゴドラが……動かせる?』

そして、エスピの能力で押さえつけられて動かせなかったゴドラが、急に動かせるようになったマクラも気づいた。

『……大気を漂う魔力が……ッ! 童、イチャイチャし……気を抜くな! 感知しろ! 距離を取れ!』

「へ?」

『大気に漂う魔力が乱れているぞ!』

そして、エスピとスレイヤが登場したことですっかり蚊帳の外だったトレイナもハッとして声を荒げる。

『わかんないけど……動かせる! いくよ、モンスタースタンプッ!』

そうしている間にも、訳が分からずもマクラがゴドラを動かし、再び踏みつけ攻撃。

「っ、ふわふわ世界――――、っ、力が!」

「ッ?! 造鉄……むむ?」

「え、おいおい……ブレイクスルー……あら?」

それをどうにかしようと三人が力を振るおうとするが、何も発動しなかった。