軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百七十二話 三人そろった

空から現れたのは、歴史に名を残す七勇者の一人にして人類の英雄。

だが、世界は彼女のことをもはやその肩書では見ない。

世界は彼女のことをこう称える。

――世界最強の妹

と。

「うおお、エスピ!」

「エスピさん!」

「ぬぬ、エスピなのじゃ!」

「エスピ姉さん!?」

「ふふふふ、すっかり頭から抜けていたよ」

ゴクウのことやらセイレーンのことやらに加えてターミニーチャンやらゴドラと怒涛の展開だったために、皆もすっかり頭から抜けていた。

そしてその力も……

「そりゃああああ!」

エスピの能力で地平に居たターミニーチャンたちが一斉に宙に浮く。

それをそのままエスピは唸るような声を上げながら、ゴドラ目がけて一斉に飛ばした。

『な、ん、なにこれ! なんで、ターミニーチャンたちが一斉に!?』

まるで投擲。しかもそれは投げてぶつけて終わりではない。

数百体のターミニーチャンたちが体ごとゴドラの顔面や胴体に突撃し、そのまま再び距離を取って反動をつけてからまたぶつかっていく。

エスピが命じるがまま何度でもだ。

それが何度も続けば、たとえ質量の差はあれど、元々頑丈にできているターミニーチャンたちのボディ。

少しずつゴドラの表面に傷をつけていった。

『ううう、邪魔ぁあ! ターミニーチャンたち、何してるの! 出力全開で抗って! 撃って! 撃ちまくって!』

ゴドラの中で苛立つマクラ。

ターミニーチャンたちがエスピの能力に対して、無理やり抗おうとして、空中に居ながらその腕の筒をエスピに向ける。

そして……

「エスピ、その筒に気を付けろ! 飛礫みてーのが無数に――――」

「問題無!」

アースが声を上げるが、エスピはターミニーチャンたちのその武器を見ていたので知っているし、問題ないと余裕のまま。

「バルカン一斉射出」

「バズーカー砲発射」

「誘導弾発射」

まさに無数の、そしていくつか形状や大きさの異なるものも交えた弾幕。

逃げ場なく放たれて、そんなものを食らえば肉片すら残らないだろう。

しかし……

「ふわふわリジェクト!」

「「「「「ッッッ!!??」」」」」

エスピの能力は飛んできた全ての攻撃をも支配する。

エスピに当たると思われた全ての攻撃は、時が止まったかのように停止。

そして……

「ふわふわ方向転換ッ!!」

その停止した全ての攻撃はエスピの命じるまま、その矛先をクルリと返る。

全てターミニーチャンたちに跳ね返すのか?

違う。

その返し場所は……

「そりゃああああ!」

『そ、な、なんああ!?』

全てをゴドラに向けてエスピは跳ね返した。

人間に当たれば一発でも重症か下手したら死ぬかもしれない攻撃を、それこそ無量大数だ。

「ついでに~、お兄ちゃんとは全然違う、何とかニーチャンやらたちも~、ぶっとんじゃえ~!」

的の大きすぎるゴドラでは、それを回避することも不可能。

全弾命中し、強烈な爆音とともに爆炎が上り、その爆炎にターミニーチャンたちも能力で投入した。

まるで薪でもくべるかのように。

「へっへーん! どんなもんだい! 私がアース・ラガン最愛の妹、エスピだよん!」

爆炎を見下ろしながらドヤ顔で胸を張るエスピ。

だが、そのあまりの強烈すぎる戦いぶりにアースたちは思わず唖然とした。

「……す、すげぇ……」

「ターミニーチャンたちごと……敵の攻撃をそのまま全部跳ね返すなんて……」

「す、すごい! すごいよぉ! 流石エスピ姉さんだよぉ!」

「ま、まあまあなのじゃ。さ、流石は将来の我が義理の妹なのじゃ」

「……強い……」

アースもノジャもまともに戦えば世界に名を馳せる力を持っているが、こればかりは相性の問題もあるためか、あれだけ脅威と思われた敵をまったく寄せ付けなかったのだった。

「ふふ~ん……お~に~い~ちゃ~~~~ん!」

「うお」

ニンマリと笑みを浮かべたエスピは唖然としているアースに向かってひとっとび。

そしてそのまま全身で力強く抱き着いた。

「えへへへ~、お兄ちゃん、どう? すごい? 私、すごい? 強い?」

年齢的にはアースよりも年上でありながらも、はしたなく両足までアースの腰に回す抱っこ状態で抱き着くエスピ。

アースはそれを避けたりせずに抱き着かれるままされるがままで苦笑。

するとご満悦のエスピが頬をアースに頬ずりしながら、頭をアースに向けて……

「おにーちゃん、ん!」

「ん?」

「んー! お兄ちゃん、ん! ん!」

頭をズイッとアースに向けて「ん」と口にするエスピ。

その意味をアースはすぐに理解し、エスピの頭を撫でる。

「あ~、エスピすごいすごい。いーこいーこ」

「でへ、でへへへへ、すごい? 私すごい? 弟なんかより妹の方がずっとスゴくて強くてかわいい?」

締まりのないデレデレの顔で緩み切った表情になるエスピ。

「あ、でも、アミクスのオッパイにアレしたことは後でお説教だよ?」

「……はい」

その光景と、その背後で上がっている巨大な爆炎とのギャップに、シノブたちは半笑いするしかなかった。

だが……

『うわあああ、もう、なに、なんで、なんなのぉ!』

とはいえ、相手もまた人知を超えた異形の存在。

中に居るマクラは激しく取り乱すも、その巨大な爆炎の中から姿を見せるゴドラは未だに健在。

『今の私はもう誰ニモマケナイ! 負けないんだもん! 潰れろ!』

ヒステリックに叫びながら爆炎に包まれたゴドラが足を上げる。

そのままアースたちを強烈な一撃で踏みつぶす気だ。

「うお、やべえ、また踏みつける気だ! エスピ、一旦離れるぞ!」

「は?」

しかも先ほどはその踏みつけの一撃だけで起こった強烈な衝撃波や揺れで多くの家屋を倒壊させた。

――モンスタースタンプ

このままではまた被害が拡大する……と誰もが思っていたのだが。

「離れる? 何言ってるのぉ兄ちゃん? たとえ、戦いの中での言葉でも、お兄ちゃんはもう私に『離れろ』とか言っちゃダメでしょ!」

「いやいやいや、今はそんな―――」

「ふわふわストップ!」

「ッ!?」

ムッとしながらこんな状況下で頬を膨らませてアースに怒るエスピは、アースに怒りながら能力を発動。

すると、ゴドラは片足上げた状態のまま停止したのだ。

『え、なん、なんで! 脚が、固まったみたいに……なんで?!』

ゴドラの突然の停止に、中のマクラもどうしてそうなったか分かっていないのか取り乱す。

すると……

「ぐぬぬ、ぬぬぬぬ、さ、流石に大きいから結構キツイ……お兄ちゃんパワーを補給してるけど……ぐぬぬぬぬ」

エスピがアースに抱き着いた状態から片手をゴドラに向けたまま、顔を歪めている。

「え、エスピ……お、お前がやったのか?」

「……うん……」

「ま、まぢ?」

建物よりも城よりもデカい、それこそ山のようなデカさのゴドラをエスピ一人の力で押さえつけている。

その常識はずれな反則的な力に、アースはもう口開けて固まってしまった。

「……これが……七勇者エスピの力なのね……」

「すっごーい! エスピ姉さん、超強いよぉ!」

「ま、まあまあ、なのじゃ……」

「……本当に恐ろしいね……」

シノブたち一同ももう唖然としてしまった。

だが、それでもエスピもまたかなり無理をしているのは明らかだった。

「ぐぬぬぬぬぬ、さーて、けっこう硬いし……これ完全に壊すにしても、ジャポーネがメチャクチャになっちゃうね」

「あ、ああ……だけど、どうにかしねーと……」

「うん、だから……場所を移動しよう」

「……どうやって?」

住民は避難したとはいえ、ここで暴れたら王都はメチャクチャになる。

場所を移動できるならばそれがベスト。

しかし、どうやって移動するか?

自分たちが逃げながらゴドラを王都の外へと誘導するか?

すると……

「どりゃあああああ、ふわふわデリバリーッ!」

「……ちょっ、お、おま、マジか!?」

エスピは取り押さえていたゴドラをそのまま能力で空中に浮かせてしまい、そのまま王都の外へと運ぼうとした。

『ふぁあああ、、ああ、え、そんなぁあ?! ゴドラが、う、浮いて、そんな!?』

いくら何でもメチャクチャすぎる。

しかし、エスピはそれをやる。

『っ、ゴドラ、動きなさい! こんなの、こんなの許さない!』

「どりゃあああ、ジタバタするなー!」

マクラもゴドラをメチャクチャに動かしてどうにか逃れようとするが、エスピが許さない。

このまま本当に街の外へ?

すると……

『ううう、まだ! まだ! ッ、出て! 無人飛行戦闘機ドローン! プロトタイプターミニーチャン、アルファ、ベータ、ガンマ! 全部出て来て!』

「ッ!?」

それはエスピやアースたちにも予想外だった。

ターミニーチャンたちは全て葬られたと思ったが、マクラはまだ手駒を残していた。

しかも、それはまた先ほどまでのターミニーチャンたちと違う。

「なんだぁ!? 飛んでる? 鳥? 鉄の鳥?」

「しかも、なんか馬車みたいな、何アレ? 車輪の付いた……ええ?」

「というより、数が……」

しかも今度は空も含めてぞくぞくと集結してきているのである。

『あの女の人を狙って!』

そして、マクラは命じる。

エスピを狙えと。

その命令に従い、敵はいっせいに矛先をエスピに向ける。

「うぐ……ん~、あのデカいのを操ったままじゃ……ゴメンお兄ちゃん、全部は無理!」

「だよな、任せろお!」

こればかりは流石のエスピも、ゴドラを浮かせて移動したまま、他の敵にまで手は回せないと告げる。

「みんな、エスピを守るぞ!」

「分かってるわ!」

「仕方ない、未来の妹を守ってやるのじゃ」

「エスピ姉さんガンバ! 私もやるから!」

「まったく、カオスだね!」

出現した新手からエスピを守るためにアースたちが陣形を組んで迎え撃とうとした……その時だった!

「造鉄・刀源郷!!!!」

「「「「ッッッ!!!???」」」」

突如無数の剣や槍が出現し、多くのターミニーチャンたちを貫いた。

「こ、これは……」

「む……むぅ……」

驚くアースたちと、少しムスッとするエスピ。

これほどのことができるのは……

『誰!? 今度は誰! 一体誰!』

またもや何者かに介入されて憤るマクラ。

すると……

「僕が何者か? ふふふふ、そんなに知りたいのなら教えてあげよう。僕は、アース・ラガンの最愛の弟さ! 妹より強くて役に立つ男だよ!」

倒壊している瓦礫の上に立ち、不敵に笑みを浮かべているスレイヤがそこに居た。

そして、この瞬間、世界が発狂していることをアースたちは知らない。

――弟キターッ!

――スレイヤもキター!

――最強の弟妹参上!

――三人そろった―!

と。