軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百九十八話 パンプレ

コジロウとアースが並んで話をする中で……

『お兄さんもスゴイが……本当にスゴイのは……お兄さんに戦い方を教えた人……じゃないの?』

コジロウが発したその言葉は、ある日突然アースが強くなったことを知った帝国……特に家族や幼馴染たちにはどうしても気になっていたこと。

『お兄さんは確かに強い……そしてそれは才能ではなく努力型……お兄さんの身体能力を把握したうえでそれをバランスよく鍛え上げ、安定感もあるうえに、爆発力もある……何よりも長年の戦闘経験があるオイラですら知らない技術……その技術もまた上辺だけではなく奥が深い濃密なもの……とてもじゃないがお兄さんの若さで……ましてや一人でそこまでに至るのは不可能……きっと……よほどスゴイ師匠に鍛えられたんじゃないかって、想像できるじゃないの』

そして、同時にそれが最大の謎であり、自分たちとアースの道が違えた最大の要因とも言えた。

「そうだ……それまで模擬戦で一度もアースに負けたことがなかった我も、あの御前試合でいきなり戦闘スタイルが変わって強くなったアースに疑問を抱いていた」

「それ、サディスさんは知っているっていう、アースの秘密だよね?」

「アースに戦い方を教えた人物……俺も御前試合の時はヒイロ殿たちなのだと思っていたが……アースは自分で考え、自分で工夫し、自分を分析したうえで鍛錬をしてきたのだ……と俺も思っていた。だが、確かに……」

フィアンセイ、フー、リヴァルはその言葉を口にしてサディスを見るが、サディスは少し複雑そうな表情で口を閉ざしている。

サディスの口から話す気はないという意思の表れである。

「アースに戦い方をか……いや、というよりはアースにトレーニングの仕方や方向性を師事した者……ということだな。それは自分も疑問に思っていた」

そのとき、意外にも口を挟んだのはマチョウであった。

「カクレテールで過ごしていた間……あいつは、師範から特に師事を受けていなかった……それでいてトレーニングに何の迷いもなかった。あの水抜きも、一切自分のやることに疑いもなく、そのやり方が正しいのだと信じ切っていた……死ぬほどの目にあってもな……そして、あのコジロウという男は断言した。『一人でそこまでに至るのは不可能』とな」

既に確立されているトレーニングなら分かる。

素振り。筋力トレーニング。走り込みなどだ。

しかし、アースのやったことは、ヤミディレすらも習得方法を知らなかった技を身に着けるためのトレーニング。

明確な目的と、その上で「絶対に正しい」という信頼が無ければ、トレーニングで命を懸けるということを簡単にできるはずがない。

「……そういう意味で……『最後の弟子』と……どうやら、その言葉は比喩ではなく本物のようじゃな」

「「「「ッ!?」」」」

「ま、ワシを召喚できる時点でそうなのじゃろうがな……まことに、摩訶不思議なこともあるものじゃな……」

そのとき、空を見上げながらバサラがそう呟いた。

「まぁ、世界に100のことがあるとしたら、ワシらのような超命種でも生きているうちに知ることができることが10あるかどうか……そう思えば、不思議なことがあっても不思議ではないということじゃな」

それはバサラもまた、「答えに至った」ということを示していた。

その様子に、全てを知るサディスはドキドキ。

「あ、あの師匠……」

「ん~? ……ふん、分かっておるわい。シィ~、じゃろ?」

「え、ええ……まぁ……」

サディスの様子からも「内緒だ」ということを察したことと、バサラも別に無闇に言いふらす気はないため、笑って頷いた。

そのやり取りをフィアンセイたちはムッとしたが、いずれにせよそれもまたアースの秘密の根幹にかかわることなのだろうと察した。

そんな中で……

『お兄さんは……ヒイロ……そしてマアムとどういう関係?』

『ぶっ!?』

『似た匂い? 何だか二人と同じもの……近い何かを感じるじゃない。どういう関係か気になるじゃない?』

そのとき、世界は声が届かないとは分かっていながらも、口に出してツッコミ入れていた。

「「「「未来から来た息子だよ!」」」」

と。

「い、色々とすごいのですね……七勇者のコジロウ様は……鋭く、そして物事の本質を突いているというか……」

「ぐわははは、まぁ、食えない男じゃなあ~」

コジロウの洞察力にサディスたちは舌を巻き、バサラも機嫌よさそうに笑った。

すると……

『お兄ちゃん!』

コジロウと仲良く話しているアースに危機感を感じたのか、新しい服に身を纏ったエスピが店の奥から走ってきた。

『お兄ちゃん、これ、いいと思う? かわいい?』

『おお、かわいーじゃねえか』

『ん……えへへ……じゃあ、これにする……』

新たなローブ。更に身なりも整えて可愛らしく決まっている。

その姿に思わず皆が……

「「「「「か、かわい~~~♥」」」」」

と、直前までにアースに抱いていた疑問などが飛び交っていた一同だが、今はただ大好きなお兄ちゃんが他の人と仲良く話をしているのに嫉妬して、慌ててお兄ちゃんに抱き着いて相手を睨んでむくれるエスピに、世界のほとんどのものたちが「もっていかれた」のだった。

「……あっ! そだ、ア、アマエは?!」

と、そこでカルイが引きつった笑みで海岸を見渡す。

「はは……さっき、『走ってくる』って行ったきりかな?」

「そ、そう……」

エスピがアースの妹になって以来、拗ねモード全開でサンドバックなどに八つ当たりしていたアマエに引いていたカルイ達。

そんな中で服まで買ってもらったなどとなれば……

『お兄ちゃん、パンツも! ねえ……お兄ちゃんは……こっちの猫さんの絵と……こっちのワンちゃん……どっちがかわいい?』

更にパンツにまで……

『猫さん』

「「「「ん?」」」」

『ワンちゃん』

「「「「え?」」」」

『猫さん。ワンちゃん。猫さん、ワンちゃん』

「「「「え? え? ……え?」」」」

そのとき、子供パンツを手に取ってアースに見せているエスピ。

何故か、それがリピートされ、さらには手に持っている猫と犬の絵が入ったパンツがアップされた。

『両方買いなさい』

『両方もいいの!? お兄ちゃん、いっぱいありがとう!』

まるで、七勇者のエスピのパンツは猫と犬であると強調するかのように。

と、それに加えて……

――そう……これが……初めての事であった

そこで、パリピのナレーションが入った。

エスピをおちょくるための何かを入れるのか?

そう思ったとき……

――アース・ラガンが女の子に下着を買ってプレゼントしてあげたのは

「「「「「ぶっほ!?」」」」」

――そう、男が女に下着をプレゼントということを、アース・ラガンはサラリと経験してしまったのだった

子供の服の一部を買ってあげたということで、本来ならスルーしても良いことである。

にもかかわらず、パリピは「アースが女性に下着をプレゼントした」という色々と含みのある言葉を入れた。

「い、いやいや、これはそんな大げさに言うものでもなかろう! い、いや、我もアースにそのようなものをもらったことはなく……み、見られたことはあるのだが……サ、サディスもそうであろう!?」

「姫様、落ち着いてください。こんなことで慌てる必要はありません……そう慌てる必要など――――」

そう、本来なら慌てる必要はない。

なのだが、もし慌てる者が居て、その人物が……

「お母さん。私……アースから下着をもらったことありませんが……男の人が女の子に下着をプレゼントするのは、パリピが改めて言うほど、そんなに重要なことなのでしょうか?」

レースのトップグループを走る者であれば、状況が大きく変わる。

「い、いえ……クロン様……そのようなことはないかと……そもそも、男が女に下着をプレゼントなど、子供なら許されますが、一定の年齢上になると、ただの変態かと――――」

クロンが純粋にパリピの言葉に首を傾げ、ヤミディレは苦笑する。

だが、そのとき、「ニヤリ」とブロがほくそ笑んだ。

「いーや、妹分。これは結構重要なことだぜ! パンツのプレゼントは、男と女の関係において、もっとも難易度の高いプレゼントとも言えるんだぜぇ!」

「えっ!?」

「おい、ブロ! 貴様、クロン様に変なことを―――」

「いいや、師範。こいつぁ~ガチで重要なことだぜ?」

と、ブロが無理やり真顔になって只ならぬ雰囲気を醸し出しながら語りだした。内心では笑いを堪えるのに必死なだけだが……

「普通異性からパンツをもらうってのは、親しくない間柄だと、師範の言う通り気持ち悪い変態って思うかもしれねえ……でもな、その逆も考えられる。つまり、相手にパンツを贈れるってことは、それほど深く親密な関係になったという証でもある」

「ッ!? な、なるほど……」

「む、い、いや、ブロ、何を言っている! それなら服とか装飾品とかでもいいではないか!」

「チッチッチ、アメーよ師範。服とか装飾品とかはその人が普段身に着けているものから、その人の好みを想像してプレゼントすることができる。しかし、パンツは普段見ているわけではない。普段見ているならそれはもう語る必要もないが、そうでない場合にパンツをプレゼントするとなると、相手の好みや着た後の姿を頭の中で想像して買うしかない。それだけ相手のことを頭の中で考えてプレゼントするものだってことよぉ!」

「た、確かにブロの言う通りです! 私、そんなにたくさんアースに下着を見せたことがありません!」

「そして、パンツのプレゼントってのは、相手が自分に対してどんなイメージを抱いているのか、どんなパンツが好みなのか、それを相手の女も知ることができるってのがある!」

「確かにそうです! 私、アースがどんな下着が好みなのか……私がどんな下着を穿けばアースは喜んでくれるのか、どんな下着が私に似合っていると思われているのか……全然分かりません!」

「その通り! 何よりも! プレゼントされたパンツってのは、見せるとしても、プレゼントしてくれた男にしか見せない……他人はその女がどんなパンツを穿いているのかは分からない……ってことはだ、つまり! 男と女の共通の秘密! 二人だけの秘密が完成するってことよ!」

「な……なんということでしょう!」

ブロは力を込めて熱弁し、クロンも目を輝かせながら鼻息荒くして頷く。

「い、いや、待て、ブロ! お前は絶対にテキトーなことを言っているだろう! そもそも、男が女に下着を送って、それで喜ぶなど――――」

ヤミディレはブロの言葉を鵜呑みにできず、デタラメだと断じようとする。

しかし……

「いや……俺も彼女に送ったことあるぜ。『コレ穿いてくれ~』って拝み倒したら、なんか満更でもない感じでもらってくれたぞ?」

「そりゃ~まだ付き合ってないとか、付き合って間もないとかなら確かにありえないけど、僕も長く付き合っている恋人から、むしろ逆にプレゼントされたことありますよ?」

「まぁ、そういうのが許される間柄でのプレゼントってことなら、全然アリだろ?」

「そうですよね~。むしろ、特別な意味があるっていうか……」

その場に居た労働者たちからすれば、別に珍しいことではないという意見が次々と上がった。

「な、なん……だと? そ、そんな……そんなことが……」

そんなわけがないと否定しようとするヤミディレ。だが、ブロ以外からもこれほどの意見が出れば、否定することができない。

それはやはり、片思いはあれど、恋愛経験が皆無のヤミディレゆえ、そういった恋人やパートナー間でのプレゼント文化を知らないのだ。

そして、クロンはそんな意見に胸を打たれ……

「何ということでしょう……私、アースから下着をプレゼントされたいです! そんな関係になるのです! アースにも普段私が穿いているのがどのようなものかを知ってもらう必要もあります! そして、私もアースに下着をプレゼントするのです! そうだ、何だったら私がお裁縫でアースの下着を作ってプレゼントを!」

と、新たな方向性へクロンはまた走り出すのだった。

「まったく……どうしてこう……アース・ラガンめ……クロン様は清楚な白を好まれると先回りして教えねば……」

そんなクロンの様子に頭を抱えながら独り言を呟くヤミディレ。

同時に……

「教える……か……アース・ラガンに。そう……居るのだ……アース・ラガンに戦い方や鍛え方……方向性……そして技まで教えた者が……そして……あの『バキューン』……のところ」

ヤミディレが思い出したのは、昨日の鑑賞会。

バサラと向かい合うアースとクロン。アースはバサラに向かって叫んだ。

その言葉は『バキューン』という効果音で一部遮られていたが、クロン曰く……

――はい、たしかアースは、『大魔王トレイナの最後の弟子』って言ってました!

と、アースは叫んだのだと、クロンは言った。

そのことを改めて思い返し、ヤミディレは……

「……あの御方が……こんなの答えになっていなのかもしれないが……そうであれば辻褄が合う……」

その答えに至った。

一方で……

「うがーーーー! パリピいいいい! 子供の時とはいえ、どういう場面を強調してんのかなー! この鑑賞会終わったらホントにぶっとばす! さすがに私ももうそれかは穿いてないし! 私が穿いてるのは……って、言わないけど!」

「やーい、やーい、子供パンツ七勇者なのじゃ~♥ とはいえ、婿殿のパンツの好みは近々分かるのじゃ。『魔法学校パンチラコレクション』のバックナンバーから♪」

「私はハニーが望むものなら何でも穿くわ♥」

「ううう、そういえば私もアース様にスカートの中にお顔を……あ、でもアース様だから全然いいというか、素敵な思い出になったんだけど……」

エルフの集落でも一部では簡単に流せずに乙女たちは盛り上がり……

「パリピの野郎ぅ……そこを意味もなく掘り下げんじゃねぇええええ!!」

「まあまあ、落ち着くのじゃ、婿殿。あ~ヨイショ。流石にわらわが座ってばかりだと婿殿も膝が疲れるであろう。少し立って休ませてやるのじゃ」

「落ち着けるかー!」

アースの怒りの声が響いていた。

そんなアースたちに周囲のエルフたちは微笑ましそうに苦笑。

ただ、その中で誰にも気づかれずに一人だけ……

『流石に……コジロウのかつての言葉で、気づいた者が他にも出てくるだろうな……バサラやヤミディレあたりは恐らくもう……ノジャもハシャいではいるが、さり気に童の膝の上から降りたな……『誰か』の視線でも気にするかのように……』

トレイナはこの鑑賞会の裏でかつての自分の配下たちが今、何を思っているのかを気にかけた。