軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百三十九話 ついに始まる総集編

その少年は両親から見放された。

ほのかな想いを寄せていた初恋からも拒絶された。

生まれ故郷の全ての者たちから罵倒された。

少年は悟った。

――この国は……親父も含めて……俺に……アース・ラガンに興味がねえ……興味があるのは、都合のいい理想の勇者の息子……俺は……アース・ラガンは……別にどうでもよかったんだ……

そして、少年はこれまでの全てとの決別を誓った。

――こんな苦しい思いをするぐらいなら……勇者の子供なんかに生まれたくなかったよ……『父さん』……

その言葉と共に少年は表舞台から姿を消した。

少年は逃げた。走った。追いかけてくる過去を振り切るように。

その果てで少年は、新たなる未来へ走り続ける道を進んだ。

少年は走った。

走った。

ひたすら己が求めるもののために高みを目指して走った。

――えー、皆様! このたびは魔極真流闘技大会にお集まり頂き、誠に有難うございます!! これより、この国の武の頂点を決める16名の男たちによる大会を始めたいと思います! どうぞ、最後まで御覧ください!

そして少年は戦う。

――拳にはお前らの気持ちも乗せてやるよ。こうして共に汗を流し、同じ水を啜った仲なんだからよ

同時に、その拳はもはや少年ただ一人のものではなくなった。

新天地で新たに紡いだ絆……

――アース君! ファイトかなー!

――あんちゃん、いけっすー!

――お兄ちゃん、がんば、がんば、がーんば!

――いけー、アースくん!

――オラァ、ぶっとばせー!

――がんばれー!

――アース君、ファイトなんだな!

そして、運命の出会い……

――アースは何で頑張っているんですか?

――強くなるためだ。俺が弱くて何も出来ない野郎だから……何かを成し遂げられるぐらい強くなりたいんだ。ただ、それだけだ

――なるほどぉ……アースはうそつきですね。だって、それだけではないのでしょう? アースが本当に欲しいものは違うものなのだと思います

――おいおい、何をテキトーに……つか、それなら俺は何のためにこんなことしてるって言うんだ?

――それはまだ分かりません。でも、アースが本当に欲しいものは、強さだけじゃなく、もっと別のものなのだと思います

その運命の中で、少年は自分でも気づいていなかったことを気づかされる。

少年が本当に欲しかったものとは何か?

これは……世界が知らない物語。

――なんじゃあ? 食事中に無理やり呼び出すとは……どこのアホンダラじゃ?

だがしかし、これは真実の物語。

――やれやれ……まぁ、意識が無くとも下半身さえ反応すればよいからな。言うことを聞けば美味しい思いをさせてやったのだが……手荒に行くぞ?

時には堕ちた堕天使と戦い……

――君は……君たちは……どうしてここに?

――天空王とやらはどこに居るんだ?

時には天空の天使と戦い……

――オ~、パナイウレシーね! サンキューデース! オレのことを新世代も知っていてくれるとは、パナイ光栄、マジ感謝!

時には悪にも……

――気の強い男……屈強で折れぬ心を持ち、死ぬまで曲がらず抗い続けるような牙を持つ、ダンディなイケメン……それを首輪つけて飼いならしたい! 裸で四つん這いにさせ、片足上げて放尿させ、更にはゴワゴワのお毛毛を剃ってツルツルにして、尻に色々つめこんだり……ぐふふふふ、泣かせて嫌な顔されながら滅茶苦茶にしたいのじゃ!

へんた……狂気にも立ち向かい……

――テメエら、俺の一回のクソよりも小さそうなその脳みそで、よく聞けよなゴラぁぁぁぁぁああ!! この俺様のファイナルライブ!

歴史の教科書とは違う歴史を作り……

――お兄ちゃんぁあああああん!

――お兄さん……う、うわあああああ!

そして本当の家族は何かを少年は知る。

これは世界が知らない、しかしそれでも世界に、そして歴史に、出会った者たちの心に深く刻み込まれた真実の物語である。

日が落ち、日が昇ろうとも刮目して見よ! 世界の者たちよ!

……と、何やら雰囲気のある語りと共に、様々な光景が次々と空に流される。

現在、全世界同時に人々は空を見上げて呆然とし、その少年や出てきた人物を知る者たちは驚愕し、そして何も知らない者たちも何が始まったのかと動揺する。

当然……

「うおおおおおおおおおお、ちょ、な、ななな、なんだぁぁああ!? な、何が始まってんだ!? 何だアレ!? なんで俺が空に映っているんだよ!?」

『これは……神妙な口調ではあるが……パリピの声』

「ちょ、私も映ったんだけど、お兄ちゃん!」

「こ、これは一体……」

「わらわも出たのじゃぁ!?」

「ハニー、これはどういうこと!?」

「何が起こってるじゃない?」

「お、おお……何が始まろうとしているのじゃ?」

張本人たちはとにかくパニックになった。

エルフの里に居るアースたちは当然……

カクレテールでも……

「ぬわはははは。なんじゃぁ? 面白いことが始まろうとしているではないか」

「坊ちゃま……それに私まで……」

「どういうことだサディス! しかも、あ、アレは天空世界での我らの戦いもあったぞ!」

「オラぁ! 俺らもいたぞ!」

「アマエも女神さまもおじさんもお姉ちゃんも大神官様もいたー!」

「ねえ、リヴァル……あの天空世界での一幕の後にチラッと流れた……写っていた人が誰だか分かった?」

「……教科書で見たような……気がするが……馬鹿な……そんなはずは……」

カクレテールに居たサディスやフィアンセイたち、そのほかマチョウらカクレテールの住民たちも一斉に海岸に集まって空を見上げ……

帝国でも……

「皇帝陛下! これは一体……アレはヒイロ様のご子息……なぜ……」

「分からない。それに……ばかな……チラッとだが……ヤミディレ……パリピ……ノジャやゴウダまで……なぜ……」

王宮のテラスから呆然としながら空を見上げる皇帝のソルジャ。

何が何だか分からぬ中、彼の耳には同時に帝都の方角から騒がしい声が聞こえてきた。

「おい! あれ、勇者ヒイロ様の息子のアースじゃねえか!」

「あの野郎、魔王の技を使って逃亡したと思ったら、何をやってやがったんだ!」

「でも、何なの? あの空に流されているのは一体……」

アースの顔は帝都でも知らないものはほとんどいない。

ましてや、あの御前試合での問題もあったからこそ、民たちの反応は当然のこと。

しかし、騒ぎを大きくする前に抑えようとしても、空に流れる何かを止めることもできないし、そもそもソルジャですら何が起こっているか分からず、ただ「これから始まる」ものを黙って見続けるしかできなかった。

そして……

「ふっ、こんなことを企んでいたとはな……そして、実に奴らしい派手なやり方だ」

世界の果ての古城の城壁の上にて、グラス片手に椅子に座りながら優雅に空を仰いでいるハクキ。

これから始まる何かを理解し、それを心躍らせて堪能しよとしている。

そしてその場に……

「ボス……いいんですかい?」

配下のオーガがビクビクした様子でハクキを伺う。

そのオーガの傍らには両手に魔封じの枷と足に巨大な鉄球付きの鎖を引きずらせながら、ヒイロとマアムが居た。

「構わん。それに……これを見逃すのはあまりに酷であろう? 何も知らぬ両親が、息子の真実を知るせっかくの機会なのだからなぁ」

力と身動きが封じられようと、それでも人類最強ともいえるヒイロとマアムに配下のオーガたちは緊張するも、ハクキは動じず、むしろ二人を呼んでこれから始まるものを見せようとしていた。

隙をついて襲われることや、逃げられるという可能性を一切考えていない。

それはハクキがそれだけの余裕があることと、何よりもヒイロとマアムもそれどころではないと分かっていたからだ。

「アース……お前……なんで……何が起こって……」

「アース……」

そう視聴者は全て揃った。

誰もが空を見上げながら、これまで知らなかった英雄の物語と歴史の真実を知ることになるのだった。