軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百五十八話 スタミナ

「くそ、ダメだ……遠い!」

前方を走る二人との距離を詰めることが出来る……が、届く前に一呼吸入れないとブレイクスルーが途切れる。

その一呼吸が結局あと一歩及ばない結果になる。

「ふふふ、残念でした、お兄さん♪」

過去の時代でスレイヤとやった鬼ごっこ。

あの時の俺への意趣返しと思われるセリフを、スレイヤは笑みを浮かべながら口にした。

「これで二回目だよ~?」

エスピもニヤニヤ。

前方を走るスレイヤとエスピのスピードと距離は、俺のブレイクスルーでのスピードと持続時間ではギリギリ届かない。

いや、ギリギリなのもきっとそうやって調整されているんだ。

「くそ……はあ、はあ……」

それに、全力ダッシュを繰り返して、少し息が上がってきた。

そういえば、あれはカクレテールでのことだったな。

魔呼吸を習得する前にトレイナは言っていた。

――これができるようになれば、『体力が続く限り』、魔力切れで魔法が使えなくなるということがなくなる……

ちゃんと、「体力が続く限り」って言ってたじゃねえか。

あれはこういうことだったんだな。

『そう魔呼吸で回復するのは、あくまで魔力のみ。体力や肉体の疲労まで回復するわけではない』

ブレイクスルーの持続時間の間全力で走る。それで追いつけなければ、もう一度魔呼吸をしてブレイクスルーで追いかける。

だが、二回目のダッシュのスピードは一回目よりも遅い。

当たり前だ。疲れてるからだ。

『童はこれまでの修行で精神力や集中力は向上している。それは持久戦において重要なもの。だが、もっとも重要なものは……『スタミナ』だ。今の童は三日三晩を通して動けるスタミナがない』

スタミナ。それは戦闘でも何においても必要不可欠な要素。

カクレテールではあれだけ走り込みしていたんだけどな。……って、最近はやってなかったか……

『一方で、エスピもスレイヤも戦争やハンター活動における実戦において、長時間の持久戦の経験は豊富であろう。戦争のプロとハンターのプロ……それに弱点を突かれてしまえば、なかなか抜け出すことは出来まい』

「ちぃ……もうあんな所に……」

『そして、疲労がたまり、それを自覚した瞬間に精神的な疲労も集中力の乱れも訪れる』

その通りだ。

段々と集中力が散漫になって、マジカルシャイニングロードが分からなくなってきているような気もする。

「トレイナ、疲労回復の魔法とかないのか?」

『無いこともない。疲労を回復というよりは、疲労を感じさせなくする魔法などな……だが、それを覚えるぐらいなら、今後のことを考えてスタミナ強化をする方が身になるだろう』

「それって、簡単に身に付くのか?」

『身に付かぬ。地道な日々の積み重ねが、誰にも負けぬ体力と精神力へと近づくのだ。この数日で身に付くものではない』

つまり、持久戦と言ったところで、今の俺ではあの二人を捕まえられねえってことになるのか?

まぁ、あいつらが15年もの間鍛えて、今日の鬼ごっこの対策を練っていたと思うと、簡単じゃないというのは分かっていたけどな。

でも……

「だからって、簡単に降参したんじゃ情けなさ過ぎるぜ」

『その通りだ。だからこそ、食らいついてみろ。時間をかけて考え、ペース配分も意識し、そしてその上でどうすれば奴らの裏をかけるのか……』

まだ始まったばかりだ。ゴールまで数日あるんだ。

今のあいつらがどれだけ頑張ってきたのかが分かったとしても、俺だって「流石だ」とあいつらに言わせなくちゃならねぇ。

『昨日の貴様を超えてみよ』

「押忍!」

ブレイクスルーの持続時間も、体力も簡単に伸びるわけでも回復するわけでもない。

それを把握したうえで、何ができるのか?

一度深呼吸をして、気を落ち着かせてゾーンに……

「ふわふわ砂嵐!」

「ふがっ!?」

「ふふーん、お兄ちゃんを集中なんてさせないよ?」

俺が落ち着こうとしたら、逃げていたはずのエスピがワザワザ戻ってきて! 目に砂が!?

なんて狡い真似を……だが、目が見えないくらいが何だ?

俺の集中力もマジカルレーダーもその程度じゃ乱れは……

「そういえばお兄ちゃん! カクレテールに立ち寄った時にチラッと聞いたんだけど~」

「……あ?」

「お兄ちゃんは~、サディスちゃんとフィアンセイちゃんと、ジャポーネの忍の女の子と、名前しか知らないけどクロンちゃん? 誰が一番好きなの~?」

「ふぁっあ!?」

え……? エスピ? 何を……

「うん。ボクもエスピから聞いて、それは気になっていたんだ!」

エスピだけじゃなく、遠くにいたスレイヤまでもワザワザ戻ってきて、俺にそんなことを……

「お兄さんが女性にモテるのは仕方ないことだと思うけど、お兄さんが選ぶ女性はボクたちにとっても他人事じゃないんだからね?」

「そうだよ~? だって、私たちにとってもお姉ちゃんに? ううん、全員年下だから妹に? どっちにしろ、私たちにとっても家族になるんだからね?」

「今のところ、お兄さんのお嫁さん候補はその四人なのかい? もういないのかい?」

「お兄ちゃんが心から選んだ人だったら、私たちは祝福するし、納得するけど~、嫌な子だったら嫌だな~ってのはあるんだよ? たとえば……おっぱいが大きいだけの子が好きとか、そういうのは?」

「お兄さんは思春期だからねぇ……」

「私、お兄ちゃんはサディスちゃんと結婚すると思ってたんだけど、増えちゃったからな~」

な、なにを、こいつらは? え? サディスやフィアンセイのことを知ってるのは分かるが、シノブやクロンのことまで? いやいや、おっぱいって、別に俺はおっぱいの大きい小さいはこだわらない、いや、あればそれはそれで……だけど、クロンもそこまでは……シノブは無いし……っていうか、妹と弟にいきなりコイバナを振られ―――――

「ふびゃっ?!」

急に足元が?!

そのとき、砂嵐で目が開けられず、突然のコイバナにテンパってた俺は、足元が抜けてそのまま何かに落ちてしまった。

落とし穴?

「ふふ。ちゃんと集中しないとダメだよ? お兄さん」

「や~い、お兄ちゃん引っかかった~♪」

あ……あ……あいつらぁ!?

「うおおおおお、お前らぁぁぁあ!」

「あははは、お兄さんが怒った。逃げないとね♪」

「いえーい、にっげろ~、びゅーん♪」

「えええい、待てえええ! お尻ぺんぺんしてやらぁ! ブレイクスルーっ!!」

お兄ちゃんを小ばかにしやがって……必ず捕まえてやる!

『ふふふ……完全に手玉だな……』