軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百五十九話 コイバナ

結局、一日がかりでも捕まえることが出来なかった。

「はい、おにーちゃん!」

「今日もカリーをいっぱい食べよう♪」

陽も沈んだ頃、前方でエスピとスレイヤが平原のど真ん中で座って俺を待ち、「今日はこれまで。勝負はまた明日」となってしまった。

そして、今は一時中断で夜飯食べて明日に備えてここでキャンプしようということになった。

「ったく……本当に逞しくなったな……お前ら……」

「「うぅ?!」」」

皿に盛られたカリーを受け取りながら俺がそう言うと、二人は急にウルッとした目になった。

「な、なんだよ?」

「ううん……お兄ちゃんが褒めてくれた……」

「ふ、ふふ、お兄さん、ボクたちはまだまだあんなものじゃないよ? もっとだ! もっとお兄さんを驚かせられるし……もっと力になれるんだ……」

感極まったのか、照れ臭そうに、でも嬉しそうにニヤける二人。

俺のこの一言でここまで心を動かしてくれるなんて……それだけ二人の想いが強いってのを改めて実感して、何だか俺も照れ臭くなった。

すると……

「でも、心配だよね~、スレイヤくん」

「うん、確かに心配だね」

「何が?」

「お兄ちゃんはそれこそ今が成長期でしょ? だから、お兄ちゃんは今よりもっと逞しくなっちゃうわけでしょ?」

「うん、お兄さんが今よりもっと……それ、最強すぎるよ……」

「…………」

何を真剣に話してんだよと思いつつも、顔が熱くなる……

「それこそ、お兄ちゃんが今よりモテモテになっちゃうでしょ?」

「うん、それは大変だ。お兄さんが強くてカッコいいもんだから、悪い女とかが近づいたりして、お兄さんを誑かしたりしないか……」

「そう。お兄ちゃんに近づく悪い女たちからお兄ちゃんを守らないとね」

「その通りだ」

そして、昼間の時も思ったんだが……まぁ、ほら、こいつらももういい歳なわけで……でも、俺にとっては妹と弟で……

「で、昼間の話の続きだけど、お兄ちゃんのお嫁さん候補は今のところ誰が一番なの?」

「うん、ちゃんとボクたちにも教えてもらわないとね」

「だから、やめろって! 恥ずいって! 恥ずかしい!」

そんな二人とコイバナなんてもう恥ずかしくて仕方がない。

だが、ここで攻められてばかりじゃなくて、俺も反撃しないと……

「そ、そうだ! それを言うなら、エスピとスレイヤは付き合ってるんだよな?」

「「ん? ん~……まぁ、そうだけど……」」

「どど、どっちからその……告白とかしたんだ? あ? デートとかしたのか~?」

そう、二人が付き合ってるってのに、俺はそこら辺の話は全然聞いてないんだ。

これは根掘り葉掘り聞いて、二人も赤面させて……

「う~ん……告白ねぇ……なんか気付いたらだよね? 何となくだっけ?」

「まぁ、そうだったかな? 別にこれといって何かがってわけでも……どういうことが聞きたいの?」

「……………………」

え? なに? 何だ? このアッサリした感じのツーというかカーというか?

「いやいや、いや待ちなさい! お、お前たち、その、スレイヤもエスピも二人とも俺の弟と妹であって、その、そういうなんか、ほら、こういうのあったよ~、とか、その、なんか、い、イベントがあったよ~とか、そういう報告とかは、ひ、必要なんじゃないかと?」

「「イベントって……言われても……どんなの?」」

ど、どんなのって……そんなキョトン顔されても……え? こいつら付き合ってんの? いや、熟年夫婦? もっとキャッキャでウフフで甘々ないじらしいようなコイバナは……イベント?

そりゃ、恋人同士のイベントって言ったら……

「そ、その……は、初めて……ふ、二人が……て、てて……手を繋いだの……いつ~……とか……?」

「「ッ!?」」

くっ、言ってて恥ずかしい! 顔がメチャクチャ熱い。どうして俺がこんな恥ずかしい気持ちになって妹と弟のコイバナを聞き出そうと?

俺としたことが、イジイジウジウジしたように見えたかな?

すると……ん?

「お兄ちゃん……」

「お兄さん……」

エスピとスレイヤが同時に立ち上がった。

そして、妙な静けさを醸し出し、何事かと俺が息をのむと、次の瞬間二人は……

「お、お兄ちゃん……………か……かわいい……なにこれ!? お兄ちゃんがかわいいよぉ! かわいい! お兄ちゃんが顔真っ赤っかで、モジモジしながら……『手を繋いだのはいつ~?』って、聞いてきたよぉぉ!」

「強くてカッコよくて……かわいいだなんて……カッコよくてかわいいだなんて、ボクたちのお兄さんは、なんて無敵なんだ!?」

興奮してハシャギまくった……

「お、お兄ちゃん、もう、私ね、お兄ちゃんをギュッとしてナデナデしたい! 昨日は膝枕してもらったから、今日は私がお兄ちゃんをナデナデしたい!」

「ちょ、ずるいぞ、エスピ! ボクも弟としてお兄さんを可愛がりたい!」

「や、やめ、もう、からかうな! お前ら結婚のアレとかも俺の許可云々言ってたのに!?」

「結婚の許可とかはまだ先でいいよ~。お兄ちゃんがもうちょっと……そうだね、お兄ちゃんのお嫁さんを見つけてからで」

「まっ、お兄さんより早くにボクたちが……ってのもね」

「いやいや、もう、どーせするんだからしちまえよ!」

「まーだ! まーだ、私はまだお兄ちゃんの妹で、甘えていたいもーん!」

「ボクがまだまだお兄さんと一緒に居てあげないとね」

昨日は甘えてきた二人が、今度は打って変わって俺をもみくちゃにしてまとわりついて来る。

あまりにも情けなくて恥ずかしく、トレイナなんかニヤニヤと笑っている。

くそ……まさか、エスピとスレイヤとコイバナする日が来て、俺が逆に可愛がられる日まで来るなんて……

「でもね、お兄ちゃん……」

「ん?」

だけど、そのとき……エスピが俺に抱き着きながら、少し真剣な様子で……

「もうすでに好きな子が居て……他の女の子は考えられないって言うなら……もうあんまり、その他の女の子にカッコよすぎるとこ……女の子が好きになっちゃうような所を見せたらダメだよ?」

「は?」

そして、エスピだけじゃなくスレイヤまで……

「うん、そうだね……たとえば……その……これからの旅でも色々と出会いもあるわけじゃない? そ、それこそ、これから……これから行くエルフの村にだって、十数年前にはいなかったけど、あの後に生まれてお兄さんと同じ歳ぐらいのエルフだってね……」

「……ああ……そうなのか?」

何だか、少し言いづらそうな、どこか苦笑しながら二人は俺に……何を言いたいんだ?

「そのね、お兄ちゃんがこれから出会って惚れられちゃう女の子を、お兄ちゃんも好きになって結ばれるっていうなら、全然応援するんだよ? 本当だよ? でもね、その……選ばれなかったら、その女の子は泣いちゃうわけで……それはねぇ……」

「うん、まぁ……ボクたちもそれは可哀想だと思うわけで……だ、だからね、お兄さん。ボクたち相手ならまだしも、その気も無い女の子の前とかでカッコよすぎて女の子が惚れてしまうようなことは極力控えた方がいいと思うんだよ」

「……? ……? ……?」

一体、二人が何を心配しているのかがまるでよく分からなかった。

なんかそれだと俺が次々と女を惚れさせるモテモテ野郎みたいな感じじゃねえか?

「いや、そんなことしなくても……俺は今まで彼女とかできたことないし……いや、それはサディスがいたし、フィアンセイが邪魔してたり……まぁ、クロンとシノブには告白……でも、そんな心配することもねーだろ? リヴァルとかフーみたいにファンクラブが居るぐらいモテモテってわけでもないんだし……」

「「う~ん……」」

そう、二人が何を気がかりなのかは分からねえけど、そんなこと頻繁にあるわけねーんだし、何も心配いらないはずだ。