軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百五十七話 出し抜く

俺の横や後ろをトコトコとついてきていたはずの二人が、手足も長くなって俺の前を走ってる。

だけど、時折俺の様子を伺うように振り返る二人。

それが何だか嬉しくて、俺も「追いついてやる」とやる気が出てきた。

「マジカルレーダー! 先の先のその先のルートを最短で!」

あいつらの動きを周囲の状況と併せて目とレーダーで感知しながら追いかける。

すると、頭の中が集中しだして光のルートも見えてきた。

マジカルシャイニングロード。

「流石、お兄さん!」

「うん、私たちの動きを先読みしながら無駄なく最短ルートで追ってくるね」

「これは、距離が縮まったらブレイクスルーの加速で追いつかれるかな?」

「だね♪」

エスピとスレイヤの動きは大人になっているだけあって、成長し、洗練されている。

だが、それだけじゃないはずだ。問題なのはここからだ。

今の二人が正真正銘、六覇クラスだっていうなら、このまま簡単に追いつけるわけが―――

「よし、ふわふわ方向転換!」

「ッ!?」

次の瞬間、前方の二人の筋肉の動きや体の向きからは全然予想外の方角へ二人同時に分散した。

「な、なにぃ?」

予想もしない方向に走られて、思わず急ストップしちまった。

フェイントじゃない。今のは……

『エスピの能力だ』

「ぬっ……」

『己の能力で自身とスレイヤの体の流れや向きを強制的に変更させることによって、童の予測を出し抜いた』

なるほどな。こいつは一本取られた。

瞬間的に行動を直前に変更されると、俺の予測が成り立たなくなる。

「くはは……早速やってくれるじゃねーか、エスピ!」

「にひひひ! まだまだ! ふわふわ障害物ッ!」

「なぬっ!?」

俺を出し抜いたと思ったら、それだけじゃない。

エスピは次の瞬間、森の木々やその辺に落ちてる石ころなどで俺の前方を塞いできやがった。

「ただ逃げるだけじゃないよ~」

俺の足を止めたうえで視界まで奪う。

攻撃ってほどじゃないが、あくまで俺の邪魔をする気のようだ。

「にゃろ! 大魔フリッカーッ!!」

「わお!」

だけど、全部高速のジャブで打ち落とす。

視界を奪っただけじゃ俺は止まらねえ。

今度はレーダーでエスピの力の流れも読み切って……

「造鉄魔法・光魔天帝大鉄歩道!」

「え……?」

今度はエスピじゃなくスレイヤが魔法を発動。

すると、あいつの足元から突如鉄の塊が出現し、伸び、それは森の上を通過する鉄の歩道のようなものになった。

「ふふふ、全てのルートがお兄さんに見切られているのなら、新たな道をこの手で作るまでだよ!」

周囲の状況全てを把握したうえで最短ルートを見つけて追いかける俺に対して、自身が持っていた特有の魔法を利用して新しい道を作る。

やってくれる。

こんな形でまた俺を出し抜くなんて……

「くははは、やってくれるな!」

さっきのエスピ同様、また予測の立て直しになっちまう。

これまた一本取られたと、俺もエスピとスレイヤの後に続くように鉄の歩道を登り……

「あっ、お兄さん。それ、すぐ崩しちゃうから」

「へ? うわ、わわ!?」

俺が歩道を登り始めた途中で、急遽歩道にヒビが入って粉々に砕けちまった。

歩道はしっかりとした作りに見えたのに、急遽ガラスみたいに薄く、脆く……そんな調整もできんのかよ?

「だが、それだったらお前もエスピも……」

しかしこれなら、歩道の上を走っていたエスピもスレイヤも落下するんじゃ? と思ったけど、エスピの超能力で浮けるんだよな……と思ったら……

「びゅーん!」

「は?」

エスピは落下するスレイヤを助けることもせず、そのまま飛んで、また違う方向へ逃げた。

でも、このままじゃスレイヤは……

「造鉄・天元如意棒!」

「ッ!?」

落下する前に、スレイヤは鉄の長い棒を具現化して地面に対して斜めに突き刺し、そして突き刺された棒がスレイヤの魔力を通じて更に伸び、スレイヤはそのまま遥か前方へと森を越えて行っちまった。

「な、あ、あいつら!」

『童の予想を崩し、惑わし、各々の能力を見せることで注意を分散し、更に罠を仕掛けて足止めしたうえで距離を離す……翻弄されているなぁ~、童♪』

「ちっ、やられた……あいつらめ~、小ばかにしやがったな~」

まったくだ。

どうやら俺は、完全にあいつらの掌で遊ばれてるみたいだな。

それだけあいつらも強くなっているってことか?

それこそ俺よりも―――

『いや、そんなことはないぞ、童』

「ッ!?」

そのとき、トレイナが俺が抱いた感想を否定した。

『確かにあやつらは強くなった……が、童よりも圧倒的に強くなったとまでは言わない。それほどまでに童、今の貴様のレベルは相当なものになっているのだ』

「トレイナ……」

『もし、まともに倒すつもりで戦闘をすればこうはならないだろう……しかし、あのレベルで『逃げ』にのみ徹されたならば話は別だということだ』

強くなったが、俺より圧倒的に強いというわけではないというのがトレイナの見立てのようだ。

しかし、現実に俺はあいつらに翻弄されている。

なら、それは何を意味する?

『ほら、ボーっとしている場合ではないぞ? 走らねば、見失うぞ?』

「うおっ、そうだった! あんなに遠くに……くそ、急いで追いかけねえと」

俺が足止め食らって戸惑っている間に、二人はかなり遠くまで行っているようだ。

これ以上離されたら、トレイナの言う通り見失う。

なら、距離を少しでも詰めないと……

『そうだな……そうなると……貴様が次にやるのは……』

「ブレイクスルーッ!!」

ブレイクスルーで一気に距離を――――

『そうだな、ブレイクスルーしかあるまい。だが、この距離では……距離が届かぬな……そして、奴らはそれを―――』

そのとき、トレイナが俺にそう囁いた。

「来たよ、スレイヤ君! うわぁ、魔水晶を通じて御前試合は見ていたけど、やっぱり生で見るの……うぅ、懐かしい! 涙出てきちゃうよぉ!」

「うん……お兄さんの魂の光……そして、ここからだよエスピ!」

「分かってるって!」

「御前試合のときは90秒程度だったが……僕たちの知っているあの頃は、持続時間は3分程度だった」

「その3分~4分を逃げ切れば一旦息を整えるだろうから、集中だよ!」

「もちろんだ!」

そして、俺がブレイクスルーをした瞬間、遠く離れたスレイヤとエスピは目を輝かせたように嬉しそうにしたが、すぐに好戦的な笑みを浮かべた。

『童よ、あの二人は貴様を決して小ばかにして舐めているわけではない。遊んでいるわけでもない。真剣であるからこそ、貴様の対策を行っていたのだろう。貴様の眼力、レーダー、先読み、スピード、ブレイクスルーについてもな。全ては再会した貴様に自分たちを認めさせるため、一泡吹かせて褒めてもらうため……』

俺がここでブレイクスルーを使うのも、あいつらにとっては想定内のことだと?

あいつら、そこまで考えて……

そして……

『そして、貴様はこれまでほとんど無名だった……そのため……余とのスパーリングを抜きにして……貴様を知り尽くした者に対策を講じられて戦ったことがない』

「ッ!?」

『あやつらは十数年前に、その目に、その脳裏に、その心に焼き付けていたのだ。貴様の走り、鬼ごっこ、ノジャとの戦い、アオニーとの戦い、ゴウダとの戦い……幼いころからずっと……そして何度も思い返してきて、その上でこの日を迎えたのだ』

そういえばそうだ。

あの二人は出会ったときから別れの日まで俺を見続けて、そして今日までずっと俺のことを考えて……