軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

情報共有、考えるのは皆で

まずは報告が先だろう。

宿で待機していた皆には食事を待たせてしまった。

お腹を鳴らして捨てられた子犬みたいな目で訴えてくるエミーには、さすがに罪悪感が湧いたな……。

ちなみに『シビラちゃんぴえん』とか言ってあざといポーズを取ってきた方は、ちょうどいい位置にあったデコを指先で弾いておいた。

「夕食前に、まず皆に報告をしておきたい」

「いてて……この全世界五千兆人が羨望するシビラちゃんの宇宙一可愛いおでこを傷物にした謝罪の方が先でしょ」

「ケイティに会った」

ボケ倒して話を繋ぐ気だったシビラも、さすがに俺からの情報に絶句した。

無論、他の皆もだ。

「い、いやいやいやあんたまさか一人で会ったわけ!?」

「そうだ。向こうから接触してきたが、逃げられた」

「何ともないわけ? ちょっと 治療(キュア) しておきなさい。つーか全員分。念のためね」

「恐らく問題ない。《キュア・リンク》」

皆の目の前で魔法を使ってみるも、特に自分の中で変化があった感じはない。

一瞬後ろを取られたかと思ったが、本当に何もされていなかったようだ。

「今日の夕食は、持ち帰りのものを買い込んで宿で食べるようにしよう」

ジャネットの提案に、皆で黙して頷く。

……思えば、門へと向かった姿を見ただけで、実際に出たところまでは確認していない。

周りの人間が俺達の事情を知らなくとも、迂闊に喋ることは避けたいところだ。

足りなくなることがないよう、大袋でケバブを買い込んだ。

ここ連日の生活で、エミーがいれば残ることはないということだけは共通認識だな。

資金側は潤沢にあるので、判断に迷わないのはいいことだ。

それぞれが思い思いに食事を摂りながら、俺は一つずつじっくりと――話しそびれた部分がないように――思い出していった。

「――――というわけだ」

これで一通りのことを皆に話せただろうか。

食べながらとはいえ、黙して聞いていたメンバー達は皆集中していたのか、聞き終わると緊張が解けたように息を吐いた。

マーデリンが甲斐甲斐しく飲み物を用意してくれた。

元店員なだけあって、実に気が回る天使様だ。

「わっかんないわねー」

開幕シビラが皆の気持ちを代弁し、お手上げとばかりにひらひらと片手を振った。

「ケイティの考えていることなど、考えるだけ無駄だろう」

「そっちもだけど、例のイミフ隠密スキルの方よ」

隠密スキルか。確かにそっちは、全く分からないんだよな。

あの時、俺にだけケイティが見えていたことが意味不明だし、ケイティと会話していた俺が周りから見えなくなっていたことも理解不能だ。

更に、ケイティが会話を止めた瞬間に周りの通行人が俺に気づき始めたことも。

「ケイティの能力に関しては保留ね。仮説を立ててもいいけど、間違った予想を本当と思い込むことほど危険なことはないわ。確実なこと以外で予想するなら、せめて複数は仮説を出しておきたいわね」

「なるほどな……」

散々辛酸を舐めさせられたであろうシビラが言うのだから、実感が籠もっているな。

まずは現状の『他の者からは見えないが、俺だけは見える』と『会話した俺も周りから見えなくなっている』の二点だけ押さえておけばいいか。

「……」

ジャネットの方を見ると、壁の方を見ながら一切動かなくなっている。

これは思考の海に潜っている時だな。

ふと見ると、ヴィクトリアやイヴも似たような感じで顎に指を当て宙空に視線を向けている。

皆、俺の話からケイティの謎を解き明かそうとしているのだ。

そうだ、今はこれだけの人数がいる。

皆で考えれば何かしらの糸口が掴めるかもしれない。

もう俺は、シビラと二人っきりのパーティーではないのだから。

「とりあえず、現状報告できそうなところはそんなもんだ」

「了解。それじゃラセルが体張ってくれたわけだし、エマにも連絡取らないといけないわね」

エマに連絡をするなら、セントゴダートまで戻る必要がある。

成果はあまり得られなかったが……。

と思っていると、シビラはおもむろに巨大な板を取り出した。

エマがギルドマスターの部屋で使っていたものだ。

何事かと思うと、慣れた手つきで板に触れていき、すぐにあの時見たような絵が空中に現れた。

あの時と違うのは、現れた姿がセカンドではなくエマであることだ。

「一応言っておくけど、これ機密だから外に情報漏らしちゃダメよ」

「お前以外に漏らしそうなヤツはいないから心配するな」

「相互理解ね!」

「はいはい、そうだな……じゃねーよ自分で肯定すんな」

結局緊張感のないまま、シビラは何やら手元で謎の動作をする。

板の表面をなぞっていくと……。

『僕の新作を見てくれたまえ! で、何かな? シビラ』

「えっ!?」

空中に浮かんでいた絵が突如切り替わり、ギルドマスターの部屋で見たそのままのエマがエキゾチックなマスクを見せながら話し出した。

このエマの部屋でしか見たことがない仮面、間違いなくエマの私物である。

『エミー君じゃないか! ということは』

「みんないるわ」

シビラの言葉に、ジャネットがエミーの隣に来て「これで見えるのかな……?」と正面を見る。

宙に浮かんだエマの胸像は、その声に反応するようにこくこくと頷いた。

驚いた、本当に声も姿も届いているんだな。

『マスタータブレットから久しぶり、みんなのエマお姉さんだ!』

「エマ、定時には早いけど報告よ」

『今日いきなり全員を紹介したってことは、何か強烈な話でもあるのかな?』

「ラセルがケイティと会ったわ」

『強烈だね!?』

シビラの狙い通りに表情がころころと変わるエマに同情しつつ、俺もシビラの隣に行く。

これで相手にも見えるということだな。

「ようエマ、久しぶりと言うほどでもないが王都以来だな」

『やあラセル君、こうして画面の前に来てくれたということは、無事だったようだね。君達全員が操り人形でもない限り』

「恐ろしいことを言うな」

なかなかシャレになっていない冗談をかましたエマ自身も本気にしてはいないようで、笑いながら椅子の上で足を組んだ。

「それじゃ、聞かせてもらおうか。一体何があったのか、その一部始終を」

その問いに、俺は現在の状況説明をしつつ、もう一つの気になった点を聞くことにした。