軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

忘れた時ほど、事態は動く

あれから二週間が経過した。

俺達はそれぞれチームを分けて、街や近隣ダンジョンの調査と、カジノの護衛を続けていた。

まずは街で情報を集めつつ、街の地図を頭の中に叩き込む。

こちらのメンバーは俺、シビラ、エミー、それにヴィクトリアだ。

ダンジョンは既に魔王を倒した後とはいえ、セントゴダートに迫る規模。

ただし第三層からホブゴブリンが現れる、比較的難度の高い場所だ。

ジャネット、マーデリン、イヴはカジノ側で見回りをしている。

帝国内での料理も食べ慣れ、これはこれで悪くないという気もしてくる。

とはいえ、あまり似たようなものばかり食べていると、王国での食事が久々に食べてみたくなるな。

シビラはこれをよくある現象だと話し、『どんなに尖った印象の文化でも、その土地の出身者は牧歌的に感じるもの』と言っていたが……。

街で見かける小さな楽団にも裏声を使った不思議な歌や、耳に馴染まないだろってぐらいキツい音の楽器もあるし、どうしても特異なものに感じてしまう。

この辛い鶏肉の揚げ物も、帝国出身者にとってはそうなのだろうか。かなり個性が強い料理だ。

あのエミーですら『たまにはフレデリカさんのスープが飲みたい』って言ったぐらいだしな。

それぐらい、しばらく食べているという感じだ。

まあ、つまりは。

未だ俺達は、バート帝国から僅かでも情報を持ち帰れそうな断片すら掴めていない。

そうそう。

当初、『 魔峡谷(まきょうこく) 』から襲撃があった時は必ず合流して討伐に向かうと、カジノのオーナーであるエーベルハルト伯爵に伝えていた。

ところが、あの日以来一度も魔物の襲撃はなかったのだ。

それ自体は問題ないのだが、王都セントゴダートの方に魔物が行っていないか、それとも何か計画でもしているのか……少なくとも安心できる状況ではないだろう。

「あーあ、折角バートまで来たのにカジノから外されるなんて」

「そりゃもう、お前が我慢というものができるヤツではないということを初回で散々思い知ったからな」

あのまま俺なしでカジノに向かわせたら、自分のタグ内にある金を丸々全部消し飛ばしそうだ。

そのうち借りに来そうで恐ろしいな……。

「それでラセルは、今日どうする?」

「飽きているヤツの台詞だなそれ……」

とはいえ、確かにどうするか。

このままいつものメンバーで行動していても、進展があるとは思えない。

「とりあえず、別行動にするか」

「おっ、いいわね。アタシは」

「カジノはナシだぞ」

「行かないわよさすがに、それぐらい分かるでしょ?」

分からないから言ったんだよ……。

俺は基本的に、娯楽に関してはお前のことを何一つ信じてないからな。

「エマに報告する内容もないんだろ? あまり良くないんじゃないか」

「別に部下じゃないもーん。とはいっても、確かに手がかりどころか、相手の足取りを掴む方法すらないのは痛いのよね。報告ナシって報告も続きすぎると呆れられそうだし」

これが解決できてなくても、何か新しい情報でもあればいいのだが。

今のところ、あの『魔峡谷』からの魔物の襲撃すらない。

現状、帝国観光でしかない状態だ。

それこそエマなんて、来たがるんじゃないだろうか。

「あっ、それは言われたわ。自分も闘技会観戦したいって。ついでに参加したいとか言ってた」

「普通に言ってたし観光より大分自由だった」

エマはエマで、ギルドマスターの椅子の中で収まりそうにないタイプなんだよな……。

「ま、さすがに向こうもその辺りは察してくれるでしょ。まーのんびり気長に行きましょ」

それだけ言うと、シビラは手をひらひらさせて去って行った。

やれやれ、俺も外に出るか。

今日も低い天井に圧迫感を覚えるが如く、曇り空が異様に低い。

夜に星を見たのもいつのことだったか。

「手がかり、というものがあるかどうかすら分からないんだよな」

そもそもセカンドと会話をしたこともなければ、相手がどんな存在かすら分からない。

見つけたとしても、相手が【アサシン】の独自スキルである『隠密』状態であれば、視認するのが難しくなるのだ。

なるべく怪しくない程度に周りを見渡しながら、帝国の一人一人の姿を確認する。

こうして見ると、王国民と大きな違いはない。

王国にも僅かにいる、少し身なりが悪い層も路地裏の細い道に見受けられた。

ただ、そういった層が、王国より少し年齢層が低いように感じる。

建物の中も見ながら、東の方へと歩いた。

これでは本当に観光しているだけだな。

――そう思っていたのは、その瞬間までだった。

「一人になるなんて不用心ねぇ?」

正面から、はっきりとその声が届く。

道に人が溢れる中で、まるで自分とその相手しかいなくなったかのような錯覚を覚える。

「こんなところで会えるなんて嬉しいわぁ」

目の前に、立っていたのは。

「ケイティ……!」

「ふふっ、情熱的に名前を呼んでくれて……愛を感じるわ」

捜していた『愛の女神』ケイティが、目の前に現れた。