軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

一難去りきらぬうちに、また一難

ダンジョンを出た頃には、さすがに日が傾いていた。

今回の敵は、全て外に出る可能性があった。

十六の階層を一階層ずつ満遍なく攻略したのだから、これぐらいの時間にもなるだろう。

——それにしても、恐ろしいフロアボスだった。

剣の届かない場所へ飛び立つ、不気味な目玉の巨体。

回避することなど最初から考えていない、熱光線の連発。

いや、魔物側がこちらの攻略のことをわざわざ考えてくれていると考える方がおかしいが……。

「なあシビラ。あのレベルのフロアボスが第八や第九に現れた場合、他のパーティーが勝てると思うか?」

「あんまり余所のパーティー下げて言いたくはないけど、面白目玉毛玉相手じゃ厳しいでしょうね。とはいえ、上層探索で戻って来る約束だから無茶しなけりゃ大丈夫だと思うわよ」

「そうだったな」

カイルは【剣聖】だが、魔王討伐者ではなさそうだったからな。

そうでなければ、新規ダンジョンの探索に消極的ではなかっただろうし。

能力が高くても、危険は冒さない。

それは命の大切さを説く女神教において最も重要視されるものである。

その理想を体現したのが、あの完全整備され尽くした第二ダンジョンなのだろう。

あまり俺にとっては、面白いダンジョンではなかったが……。

何にせよ、だ。

第七ダンジョンという場所は、今回徹底して狩り尽くすことができた。

解決出来た、とは言い切れないが、暫くはあのダンジョンから大したものも出ないだろう。

「第六ダンジョンまでは、全ての魔王が倒されているので間違いないんだな?」

「ええ、そのはずよ。いちおー今までにはないけど、他の魔王が再利用する可能性や、魔王二人が一つのダンジョンを使う可能性も考えてるわ」

「そりゃあ想定ぐらいはしているか」

「セイリスの魔王みたいなのがいたものねー」

今まで散々魔王と戦ってきたシビラが言うのだから、本当にあれは特殊な個体だったのだろう。

「でも、ああいうヤツが現れてきたって事は——」

「次も似たような手で来る可能性があるってわけだ」

言葉の続きを拾い、シビラが頷きながら空を見る。

夕暮れの太陽が遠くの丘の上に輝き、街壁の中からは隠れる程度の位置。

宵闇までは、まだしばらくだ。

それからギルドに戻ってエマに報告し、第七ダンジョンの攻略を完了したと報告した。

詳細なダンジョンマップなどはシビラとジャネットが報告し、魔物を含めた全ての情報をギルドと共有する形だ。

「うん、うん! 君達は実に素晴らしいね! 十六階層を全部倒して一日かい?」

「もっと悪辣なヤツともやり合ったからな。とはいえ、今日みたいな相手はもう勘弁願いたいところだ」

「いやはや、シビラが入れ込んでいるから気になっていたが、よもやこれほどとは……。報酬は入れておいたから、次も頼むよ! 『獅子の牙』はまだ戻っていないけど、明日にじっくり情報共有をして第八と第九もお願いしよう」

カイル達は、まだまだ探索中か。セイリス第四のように、果てしなく広いタイプなのかもしれない。

もしくは上層だけではなく、上層フロアボス……だけではなく中層まで潜ったと考えるべきか?

あいつの性格からは考えにくいが、じっくり話したのはカイルぐらいだしな。

とりあえず、報告は終わった。

ギルドを後にして、いい時間になったなと回復魔法を頭の中で使いながら肩を回す。

「さて、エミーじゃないがさすがに腹が減ったな」

「ラセルって、もしかして私のこといっつもおなかすいてると思ってる!?」

「すいてないか?」

「めっちゃすいてます」

実に素直でよろしい。

緊張続きだったからか、こういう時のエミーの存在は本当に助けになっているな。

シビラはエミーの肩を抱いて嬉しそうに頬ずりし、ジャネットは二人の様子を見て俺に向かって肩をすくめる。

その口元は、俺と同じように緊張が抜けたように上がっていた。

「よーっし、今晩は質より量の王都特設バイキングに行くわよ!」

「えっ、そんなのあるんですか!?」

「ふっふっふ、聞いて驚きなさい。砂糖の安定供給を可能とした王都には、パンケーキ類の食べ放題があるのよ!」

シビラの宣言にエミーは目を見開き、静かに、しかし力強く「すごい……っ!」と唸った。

お店の人、可哀想に。今日は倍働いてもらうぞ。

「俺も久々に、甘い物が思いっきり食べたい気分だな。ジャネットはどうだ?」

「甘い物は好き」

表情を変えないまま、ぐっと親指を立てた。よし、満場一致だな。

というわけで、今日の夕食はシビラの提案でやたらと甘い食べ物が出てくる店となった。

腹が減っていたとはいえ、俺もジャネットもせいぜい一人から二人前食べて満腹となり一緒にコーヒーを飲んでいた。

エミーは言わずもがな、シビラも負けず劣らずの量を食べたので驚いた。

何でも『女の子にとって甘い物は別腹なの』とのこと。

どんなホラかと思い後日フレデリカにも聞いてみたが、『そういう時もあるわね〜』と返されてしまった。

やはり女のことは分かるようでさっぱり分からん……。

今日の無事をフレデリカに報告し、イザベラにも一通り報告をして、翌日に備えて早めに寝ることにした。

そういえばたまたまかもしれないが、昨日に続いてルナに会うことはなかった。

ま、人数も多く広い孤児院だからそういうこともあるだろうな。

わざわざ俺に会いに来なかったということは、この場合は少しずつ周りに馴染めていると考える方が自然だろう。

案外もう暗黒勇者を信じる仲間までできていたりすると面白いな。

「……間違いないのね」

朝一番の孤児院、ドアの前で腕を組むシビラを見ながら、つい先日に全く同じようなやりとりがあったなと呑気に考えていた。

「はい、シビラ様。セントゴダート冒険者ギルドは緊急時のことも兼ねて、真夜中も受付担当がおります」

受付担当が、真夜中まで起きている。

その話を聞いた時、昨日の嫌な予感が当たってしまったことを理解した。

「その者からは、確かに『獅子の牙』四名が戻ってきていないと聞いております」