軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

謎の治癒師様達

灯りの魔道具が届いて、オババ様とショルさんとウィーリルさんは「見送りはいらないよ」と言って帰っていった。

ジョエル兄様は、目を閉じているだけかと思ったが、本当に寝ていたようで、静かにジョエル兄様付きの侍女とメイドさんに任せてみんなで部屋を出て、腹ペコだったのを思い出して食堂に向かった。

チヤとおじいちゃんと伯父さんは旅装だったが、そんな事を気にしている様子は無く、ただ、早く休みたかった。

木族の相手は意外と疲れるのだ。

食堂にチヤ達が入ると、何故か家族皆が晩餐を放り出して固まっていたので、おじいちゃんが自分とチヤと伯父さんの食事の準備を頼んでから「大丈夫だから皆、席に座って食事をなさい」と言うと、怖い魔力は無くなっていたので、各自、疑問に思いながらも席につき、冷めてしまった食事を食べ始めた。

「お義母様、結局、あの魔力は何でしたの?」

伯父さんの妻が代表して様子を見に行ったベティーナに聞くと「治癒師が来て、ジョエルの足を治してくれたよ」と木族が治してくれたのを秘匿した。

チヤは「そういう事にするんだね」と納得して、配膳された料理に口をつけた。

む! 新鮮野菜を使っているせいか味に深みがある。

侮りがたし、領地メシ。

チヤに配膳された少ない量の料理を見たからか「チヤちゃんのお食事が少ないわ」とウェルスンの長女のネルスお姉ちゃんが言ってくれたけど、チヤは「私はこれだけでもお腹いっぱいになるよ!」と自信満々に答えるが「まあ!」と驚いた顔をされた。

幼児メシは少ないと決まっているけれど、私の料理はもっと少ないからね。

ショコリキサーでお腹がいっぱいになる幼児チヤです。

「チヤちゃんはちゃんとお腹いっぱいになるから心配は無用だよ。むしろ少し多いくらいではないかな?

ネルスちゃんは他の人にも気をかけてくれて、優しいね」

おじいちゃんの教育方針なのか、褒めて成長を促すところは凄いと思う。

伯父さんとそっくり。

いや、伯父さんがおじいちゃんに似たのか。

ネルスお姉ちゃんは、おじいちゃんの顔を見ながら照れたような顔をした。

あら? 奥ゆかしいのかしらん?

大事な息子が治ったと知らされた伯父さんの妻でジョエル兄様の母のエリザベートがおじいちゃんに向けて口を開く。

「ジョエルは完全に治ったのでしょうか? 後から様子を見に行ってもよいでしょうか?」

伯父さんが「気持ちはわかる」というふうに、優しい目で妻を見つめるが、おじいちゃんは「ジョエルは疲れて休んでおる。見舞いは明日にしなさい」と言われて、エリザベートは少し落ち込んだ雰囲気を見せたが、ハッと思い出しておじいちゃんに尋ねる。

「先天性障害のジョエルを治してくれた治癒師様はまだご在宅でしょうか? お友達のお子様も先天性障害を持つ方がいるので、治癒師様に治療をお願いしたいのですが」

スイード家は近親婚を繰り返してきた家系で障害を持つ子が生まれやすい関係がある。

祖父のウェンズからすれば、血族の不幸は治してやりたいが、木族の秘密だと思われる、チヤが口走った「異界の食べ物」や「この世界に無い料理」など、ウェンズとジョシュアは誰に言われなくても口をつぐんでいる。

「それは……治療は、難しいかもしれんな。皆も大きな魔力を感じたと思うが、1人の熟練者の治癒魔法ではなく、複数人での合同魔法を使ってジョエルを治してくださった。

治癒師様は変わったお方でな、力はあるのだが、貴族家の我が家でも長年探して手に入れられなかった物をご所望で、ジョエルでも治療をしてもらえるのに10年はかかった。

エリザベートも知っているだろう? どれだけジョエルを治すのが我が家の悲願だったのか。

今回はソフィアとチヤが手に入れてくれた対価を持って治療を行ってくれたが、治癒師様の気分による所が大きいので、安易に障害を持つ親族に「ジョエルが治った」と言うでないぞ」

ウェンズがエリザベートに釘を刺すように言った。

ウェンズはチヤに頼めば簡単だとは感じているが「チヤを利用するな」とオババ様に言われたことが忘れられない。

今回はチヤの『好意』で家族のジョエルの足が治ったが、多分、いや『先天性障害』持った者を治せるのはアノ木族の男性しかいないとオババ様が言っていたので、またチヤが自分の能力を使っても良いと思ってくれるように、障害を持つ親族達に会わせてもいいかもしれないと思うのだった。

ちらりと、これも『チヤを利用する』ことになるのでは?と思ったが、そこは貴族家当主として目を瞑ることにした。

チヤの『善意』につけ込む形にはなるが、チヤが相手を「助けたい」と思えば、ジョエルの部屋で聞いた魔法契約を行使してくれて、親族が喜ぶのであれば、結果論にはなるだろうが利用した事にはなるまい。

治療を行う際にはこの屋敷で密かに行う必要があるが、それくらいならば、我が家の負担にはなるまいと、今後の予定を考えるのだった。

まあ、そのチヤは『自分は異世界を知ってます』みたいな発言をしたこと自体を忘れているが。

チヤは慎重なようでいて、迂闊なところがあるのだ。