軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11万円のドライヤー(魔道具)

スイード家族は晩餐を終えて、各々自由時間になったので、子供達はチヤと仲良くしようと取り囲んだが、おばあちゃんの一言で大人しくなった。

「今日は旅の終わりでしたからね。チヤちゃんを休ませてちょうだいな」と言ってくれたのだ。

ソフィアがチヤをお風呂に入れようとしたが、おばあちゃんとお姉様とソフィアはもう湯を済ませたので、おじいちゃんと伯父さんとのお風呂になった。

(おばあちゃんはチヤが男湯に入るのを諦めている)

チヤはアイテムボックスから着替えを出して、体を拭く布だけ貰い、おじいちゃんと伯父さんと3人でお風呂に入った。

おじいちゃんも伯父さんも世話好きで、チヤは甘々に甘やかされて遊びながら体を洗われていた。

おじいちゃんと伯父さんは「うちの子、可愛い」と、チヤがお湯の中に沈まないように膝の上に乗せてくれて、ゆっくりと湯を堪能していた。

チヤは王都の屋敷のお風呂も贅沢だと思っていたが、領地の豪邸は規模が違った。

領主一家が入る風呂だと言う事もあるが、領地の屋敷は人が多いので、領主一家が夕方に風呂を済ませると、その後に使用人達が交代で湯を使う。

今日は晩餐後でお風呂に入るのが遅かった為に、家人が気を使ってチヤ達の邪魔にならないようにと少し離れて湯を使っている。

チヤ的には家族でない男性達に囲まれて少し困惑したが、なるべく領主一家と距離を離してくれているので、気にせずにおじいちゃんと伯父さんに甘やかされている。

チヤが温かいお湯に寝そうになっているのに気がついて、湯から上がり、チヤの体から水気を取ってから服を着せて水を飲ませた。

(う〜ん、幼児に至れり尽くせりだな)

チヤは豪邸の中の地理がわからないので、おじいちゃんと伯父さんが着替え終わるまで魔道具化したドライヤーを小さな手で持ち、頭を、と言うか髪を乾かしていた。

このドライヤーを買うのはさすがのチヤも手が震えた。

前世愛用のドライヤーも2万円して「高いなー」と思っていたが、今世は生活環境の向上にお金をかけているので、最高級ドライヤーを買おうとしたのだが、値段が11万2千円もしたので、前世の感覚で「そんなに高いドライヤーにお金をかける価値はあるのか?」と疑問を感じてしまい、迷ったのだが「気に入らなければクルガー商会長に買ってもらえばいいじゃん!」と悪魔の囁きにお応えして、ポチッと購入ボタンを押した。

そして最高級ドライヤーを使い始めると「髪が潤うとはこういうことか!」と納得して、今に至るまで使い続けている愛用品なのだ。

チヤの髪の毛は長いが、ソフィアが病気になる以前から粗食で過ごしていたので、未だに毛先の部分の毛が痩せていて、痛んでいる。

ここ一年で栄養を良く摂取しているので、約一年で伸びた髪は、ふっさぁ、としているが、その先が「ちょ、ちょっと髪が切れそうですっ」と言うくらい細く脆い髪になっている。

何というか、あべこべな髪の毛だ。

「おお!? チヤは変わったもので髪を乾かすんだな? 最近の魔道具か?」

「うん! 伯父さんも使ってみる?」

チヤはだいたい髪の毛が乾いたので後は自然乾燥に任せることにした。

良いシャンプーを使い、良いトリートメントを使い、高級ドライヤーで髪を乾かしたチヤの髪の毛は毛先が痛んでいても、ツヤッツヤだ。

それにハニーブロンドが輝きを一層増している。

伯父さんがチヤのツヤッツヤの髪の毛に抗えずに、サラリとチヤの頭を撫でると、なんとも天上の髪か! と言うべきサラッサラである。

髪の毛だからもちっとはしないよ。

伯父さんが拙い手の動きで髪の毛を乾かしているので、チヤは伯父さんにしゃがんでもらい、爪先立ちをしながら小さな手で伯父さんより慣れた手つきで髪の毛を乾かしていく。

それを、おじいちゃんが「ほう、ほう」と感心しながら見ているので、少し居心地が悪くなってきて「すみません。偉そうにしましたが、プロでは無いんです」という気持ちになってきたので、伯父さんの髪のセットを終わらせたら、おじいちゃんの期待に満ちた顔に逆らえずに、次は床に座り込んだおじいちゃんの少し薄くなった髪の毛を乾かした。

おじいちゃんは愛しの孫に温風で髪を優しく撫でてもらいながら、うっとりとしていた。

「孫! 愛い!」と。

チヤは髪を乾かしているうちに、おじいちゃんの大事な髪の毛が抜けてしまったりして「あっ、おじいちゃんごめん」と言う気持ちになっていた。

老年期の薄毛は男も女も切ないものなのだ。

いや、若ハゲはもっと切ないけどね?

おじいちゃんの薄い髪の毛はすぐに乾いて、セットも風だけで充分だったので、「はい、終わり」とおじいちゃんに立ち上がってもらった。

「ふおー、気持ち良かったわい。チヤちゃんや、おじいちゃんがその魔道具を買いたいと言ったら売ってくれるかい?」

あくまで「チヤの意志に任せます」と言う方向でおねだりをしてみる。

チヤは少し悩んだ後に、通販スキルを開いて最高級ドライヤーの『プロ』を選んでから魔道具化してなけなしのお金で購入した。

色は男の人向けの『黒』だ。

カッコいい。

「んっ、おじいちゃんプレゼント!」

これには、おじいちゃんも驚いた顔をした。

例えると「昭和に作り出されたテレビ」くらいには魔道具は高級品だ。

それを『愛しの孫!』がくれるとは……。

伯父さんは「お父様、やるな」と見ていた。

「おお、おお、おじいちゃん大事に使うからね」

と、チヤから『ドライヤープロ』を貰った後に使い方を教えてもらった。

おじいちゃん、大満足である。