作品タイトル不明
さてさて、治療の魔力はとんでもない
実はチヤ達、というか、木族達が魔法を発動させようとしていた時に、久しぶりに家族が集まって楽しい晩餐になるだろうと誰もが予想していたのに「ウェンズとジョシュアとチヤが一緒に食事できなくなった」との連絡があり、皆が共通点の無い3人の組み合わせに「不思議ねぇ?」と話していたところ、いきなり強い魔力を全員が感知した。
幼い子供達は魔力と気付かずに「怖い」と、それぞれの親にひっついた。
あきらかな『異常』
1番場数をこなしてきたお婆様が近従と護衛と共に動いた。
「皆はここで待機です」と言い残して食堂を去っていった。
残された家族は、まとまって怖い魔力に耐えていた。
◇◇◇
お婆様・ベティーナが護衛に守られるように先導されて到着したのが孫のジョエルの部屋だった。
他の警備を担っていた騎士達も集結しているが、とくに問題が無いと理解したら持ち場に戻っている。
入り口を守っている騎士達は「大旦那様のご指示で開けられません」と言うが、この『異常』な魔力には気がついているはず。
夫の指示と、この魔力。
きっと、あの方が動いている。
ベティーナは、食堂に残った家族には知らせずに、部屋の外で待っていた。
それから、20分? 30分? 程、待っていたら、中から夫のウェンズが顔を強張らせて出て来て「誰か明かりを持って来てくれ」と指示を出したのでベティーナは己の近従を走らせた。
「何があったのか?」を聞くと「ここでは言えない」と言ってベティーナを部屋の中へと入れてくれた。
一緒に部屋の中へと入ろうとした女性騎士は入り口で止められて「止めるな!」と、私の仕事は知っているだろう? と視線に気持ちを乗せると「オババ様案件だ」とひっそりと言われて納得して引き下がった。
さてさて、暗い部屋の中に入ったベティーナは「明かりくらいつけなさい」と、魔道具を探すも全て壊れている。
「ああ、だから灯りが必要なのね」と納得していたが、夫のウェンズが静かだ。
「……ジョエルの足が、治った……」
「まあ!? まあまあまあまあ! き、奇跡だわ! 木族の方が動いてくださったのですね!?」
今まで『頑な』だと言えるほどに困った対価を要求していたのに『今日、治った』なら「動いてくださったのね」と、ベティーナは感謝を捧げた。
伯爵家の跡継ぎは、動けない長男のジョエルではなく、元気な妹のサリエルにするか悩んでいたのだ。
ジョエルが動けるようになったのならーーと、そこまで考えて、成長を止めてしまったかのようなジョエルの小さな下半身にベティーナは不安になった。
オババ様の判断では『壊死』という「ここまでの足だと腐り落ちるぞ」とまで言われていたのだ。
治ったとしても安心できないのでは?
「あなた、ジョエルの腐りかけていた足は正常になったのかしら?」
ウェンズが顔を強張らせるが「あ、ああ、むしろ、足が伸びた」とベティーナには意味のわからない事を言った。
「足が伸びた」とはなんなのか? と。
「まあ、見ればわかるわ」と、ほのかに明るい隣室にベティーナは入ると、空中に火の玉が浮いており、その灯りに照らされてベッドで横になっているジョエルのすっぽんぽんの下半身が見えた!
ベティーナはジョエルに駆け寄り、健康的な大きさになったお尻から足まで見て触って、感動で涙を流した。
チヤから『バウムクーヘン』と『バームクーヘン』を貰った木族はうきうきとして、早く里に帰りたくて仕方がないのだが。
チヤはおばあちゃんの感動を邪魔しないように隅っこに控えていたが、オババ様に呼ばれて近くに行くと「2種類のクーヘンを持ちな」と言われてオババ様のお土産のクーヘンを素直に持ったが、素早くオババ様がチヤの耳の隠蔽のピアスを少し乱暴に取った。
「ぎゃー!」
突然、感動の場面に響いた叫び声にチヤへと視線が集まる。
以前に言われていたように、ピアスの穴を無理矢理開けた時にポーションで治療をしたので、魔道具のピアスが耳の穴についているのでなく、耳たぶにピアスが食い込んでいる状態になっていたので、ピアスをオババ様が取った時に、チヤの耳の、肉が、ベリっと剥がれてしまったのだ!
これは痛い。
痛みに思わず涙が出てしまったチヤの『美幼女顔』にウェンズとベティーナとジョシュアが驚いていると、オババ様はまた容赦なく、もう片方のピアスもべりっと取った。
「ぎゃーっ!」
肉を無理矢理剥ぎ取られたチヤは「痛い、痛い」と涙を流したが、オババ様が新しく取り出した壊れていない隠蔽のピアスをチヤの耳たぶに 善意(・・) でつけた後に、チヤの口に治癒ポーションを含ませた。
チヤの痛かった耳が見る見る塞がったが、次にピアスを取る時もピアスに肉が食い込んでいるのをチヤは気が付かなかった。
もちろんオババ様は気がついているけどね。
特に自分に害が無いからいいのだ。
「チヤ。顔の隠蔽が解けているよ。隠蔽し直しな」
オババ様に指摘されて、さっきの激!痛かった行為にも、意味があったんだな、と、納得して、元の顔に隠蔽し直した。
超! 痛かったけどねっ!