作品タイトル不明
ショルと木族のねぇちゃんの共同魔法
いきなりですがね?
『スキル』って、一種の『魔法』なのですよ。
あ、いいのです。
下半身の話はナイナイしてください。
私は結婚しなかった(できなかったんじゃ無いよ?)前世から学んだのです。
いえ、悟りを開きましたね。
『体の関係は愛が深まってからにしましょう。結果的に子供ができればいいです』と。
おっと、センシティブな話になりますので、ここで終了です。
そう『スキル』は『魔法』です。
普遍なき事実です。
そして、ショルさんと木族のねぇちゃんの奇跡を今、私達は目撃しようとしています。
ショルさんの治療が終わって、ジョエル兄様の遺伝子が書き換わった? のですかね?
それから、ショルさんと木族のねぇちゃんが専門用語で話し合いを始めました。
少し聞き取れたのは「木族の50歳の」と「腰からやるか」と言う言葉です。
……不穏、です。
もの凄く、不穏な言葉が、聞こえた、気がしました。(幻聴?)
治療が成功してもジョエル兄様は普通に暮らせるのでしょうか?
木族のように下半身だけ「スーパーモデル」のように長くなってしまうのでしょうか?
不安は尽きませんが、私達は手を出せません。
オババ様ですら、見守っています。
ショルさんと木族のねぇちゃんの意見の一致と準備が整ったようです。
疲れて横になっているジョエル兄様の腰に2人で手を交差させながら魔力を高めていきます。
なんだか離れて見ている私達にも怖いくらいの魔力の本流です。
ショルさんと木族のねぇちゃんの魔力が複雑に絡まっているのはわかりますが、魔法初心者の私には「何やら凄い事が行われているぞ」ということしかわかりません。
膨大な魔力の本流に巻き込まれて、チヤの隠蔽が剥がれて素顔になっていたのはご愛嬌。
後からピアスの魔道具の整備が必要かもしれない。
そして、大事な時に部屋の中の魔道具、全てが、壊れた。
当然ながら明かりも消えて真っ暗だ。
そこで、ポッ、ポッ、ポッ、と、誰かの火魔法でしょうか? ベッドの周りを照らしてくれます。
ですが、その明かりは、ショルさんと木族のねぇちゃんの魔力で消えそうに揺らぎながらも、消えまいと堪えているように見えます。
何故だか、とても、とても、神聖な儀式に思えて、自然と涙が流れてきました。
ジョエル兄様の小さな、骨と皮だけの足が少しずつ伸びていきます。
ジョエル兄様の顔は健やかで、寝ているようにも見えます。
『再生魔法のスペシャリスト』の看板は最強だったようです。
ふと、気がつくと、ショルさんと木族のねぇちゃんの隠蔽されていたお顔が、女神も逃げ出す素顔になっています。
更に神聖感が増しました。
おや?
と、何げなく無視できないものが視界に入り、見てみると、世にも不思議な美!老女!が、いるではないですか!?
化粧無しの『美老女』ですよ?
いえ、これが本当の『美魔女』かもしれません。
老けてますけどね?
オババ様もお顔を隠蔽していたのですね。
とか、膨大な魔力に慣れてきていたチヤは、自分が『世にも不思議な美幼女』になっていることに気がついていなかった。
そして、冷静になると、平静な目でベッドの上を見れるようになってきて「あれ?ジョエル兄様、足長くね?」と、重大事に気がつくも、治療を中断出来ずに、不穏な思いが『現実』になってしまったことに狼狽えているチヤにはオババ様だけが気がついていたが、今、治療を止めてしまえば、ジョエルの足は中途半端なままで終わるだろうと知っていたオババ様は静観していた。
「足が少し長くてもいいだろう」と。
いえいえ、とんでもない。
いくら、異世界あるあるで、欧米人に似ている人々がいたって『木族』ほどに完璧な生き物はいないだろう? と誰かに言いたい。
そう! ジョエルは『木族の下半身!』になろうとしていた。
地球のスーパーモデルもびっくり仰天である。
ちなみに、ジョエルのぞうさんは、少し大きめである。
膨張率は……普通であるように願おう。
と、足の爪先まで完全に治療が成功したら、魔力の本流が小さくなり、やがて消えた。
誰もが奇跡の瞬間に立ち会えて動けなかったところ、木族だけは動いていた。
「ウェンズ! 外から明かりを持って来な! 私らは帰るよ!」
火を灯してくれていたのはオババ様だったらしい。
ウェンズ・おじいちゃんはギクシャクと動きながら部屋の外へ出ていった。
木族の大人3人は顔に隠蔽魔法を掛け直していた。
ショルさんが暇な内に、伯父さん立ち会いの元で、ショルさんとスキル行使の魔法契約書を交わして、双方一枚ずつ保管した。
「あー、疲れた」とか「眠い」とか言っていたけれど、その後に、チヤは通販を開いてお土産を検索していた。
チヤは頑張ってくれた木族に純粋にお礼がしたいが、バウムクーヘンとバームクーヘンのどちらのウケがいいか悩んでいた。
ので、ここは本人達に選んでもらいましょう、と、チヤが「どっちがいいですか?」とお伺いを立てたところ「どっちもじゃいけないの?」と、これまた大胆な意見が出て、金欠のチヤは悩んだが、家族を助けてもらったので、ケチる事なく『バウムクーヘン』と『バームクーヘン』のお土産を3人分買い、木族達の両手に持たせた。
これには、食いしん坊の木族も満足である。
『異界のお菓子は美味しい』と、覚えられてしまったのだから。
ちなみに『バウムクーヘン』と『バームクーヘン』の違いだが『バウムクーヘン』は本場で『バームクーヘン』は日本人の舌に合わせたスーパーで売っている物だと認識すれば良いだろう。
どっちが美味しいかは、あなたの舌に任せる。
ここで、木族のねぇちゃんこと、ウィーリルさんと言うらしい女性がグイグイとチヤに「何かがあったら絶対に呼ぶのよ?」と約束を取り付けていた。
いやいや、欲しいものがあれば、たんまりと溜め込んである『チルビット王国貨幣』で買えばいいものを、とチヤは思っていたのだが、オババ様の無言の威圧で黙っていた。
オババ様にも事情がありそうである。