軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

077 第四天位昇格試験の準備

というわけで、ギルドルームへ戻る前に、指名依頼の準備をしているザラたちのところへ寄って、明日の予定を聞いてみることにした。

モーリーを昇格試験に連れていくなら、その間ギルドルームの守りが薄くなっちゃうからね。

すると、「そういうことでしたら、明日はギルドルームにいることにいたします」という真面目モードの回答がザラから返ってきた。

うん、ザラとゴブリンズがギルドルームにいれば、超安心。

これで心置きなく、明日の昇格試験はモーリーを軸に戦うことができる。

状況を見ながら、場合によっては剛体種ゴブリンを召喚して、近寄ってきた相手はアルテミスに任せて、あとはモーリーに頑張ってもらう。

これで何とかなりそうだ。

そんなことを考えながら、指名依頼へ向かうザラたちと別れ、ギルドルームへ戻ってくると──

「あれ、クランクさん!?」

既にクランクさんたち 黄歯車団(イエロー・ギア) の面々がギルドルームの前に到着していた。

パンさんから「午後はギルドルームにおってな」と言われていたのもあり、私は慌てて駆け寄る。

ギルド集会所を出たときは、まだ十一時くらいだったはずなんだけど……のんびり帰りすぎたかな……。

「すみません、ギルド集会所に行ってて……! 工事は午後からって聞いてたんですけど……!」

「おおっ、サキ殿。おはようございます。はい、工事そのものは午後からですぞ」

クランクさんはいつもより少しかすれた声でそう言うと、荷車に積まれた大きな箱を振り返った。

「ですが、午後から作業を始めるためには、午前のうちに搬入と下準備を済ませておかねばなりません。何せ、本来なら二週間以上かかる作業を三日で完成させる必要がありますからな」

「あ……言われてみれば、そうですよね……」

「はっはっは、大丈夫ですぞ、我々もたったいま到着したところですので」

そう言って笑うクランクさんだったけど、その直後、小さく咳き込んだ。

「大丈夫ですか?」

「すみません。昨晩から少し……。ですが大丈夫ですぞ、工事はきっちり三日で完成させますので!」

いつもの調子で胸を張るクランクさんだけど、声は少しかすれているし、顔色もいつもより悪い気がする。

「あまり大丈夫そうに見えないんですけど……。無理しないでくださいね?」

「お気遣い感謝ですぞ、サキ殿。ですが心配ご無用。プロですので」

クランクさんはそう言って、すぐに 黄歯車団(イエロー・ギア) のメンバーへ指示を飛ばし始めた。

「まずは作業道具を降ろしますぞ。揺らさぬよう、慎重に頼みます」

……心配だけど、本人が大丈夫だと言うなら、今は見守るしかないかな。

倒れたりしないか、様子だけはちゃんと見ておこう。

……あ、そうだ。

モーリーに昇格試験の話をして、オッケーをもらえるか確認しておこう。

「ねえ、モーリー!……って、いない?」

表にはモーリーの門はあるけど、モーリーの像が見当たらない。

いつもなら門の横で何かしらポーズを取っているんだけど……。

またリュバンス樹に水やり? と思い、ひょこっと裏庭を覗いてみるけど、やっぱりいない。

私が門の周りや裏庭をきょろきょろしていると、不意にギルドルームの扉が開いた。

「あれ、サキさん。戻ってきたところでしたのね」

声の方へ振り返ると、リンドールさんが表へ出てくるところだった。

「何やら表が騒がしいと思って出てきたのですが、もう 黄歯車団(イエロー・ギア) の方々が到着していたのですね」

「はい。私もクランクさんたちも、ちょうど今着いたところです。……そうだ、リンドールさん! モーリーの像を知りませんか?」

「モーリー像でしたら、本を買いに出かけていきましたわ」

「ええええええ!?」

本を買いに!? 門番なのに!?

いや、モーリーの本体は門で、像は手足みたいなものって言ってたっけ……。

つまり、本体はここにいるけど、手足だけ本屋に行ってる……ってこと?

よく分からないけど、慌ててモーリーの門の前に立ってみる。

すると、門の表面に、すうっと文字が浮かび上がった。

『やあ。君が聞きたいのは、彼について、で合っているかな? ああ、彼女の言う通りさ。彼は今、本屋で本を買っているところだよ』

「自由過ぎない!?」

『けれど、君が望むなら、彼を今すぐ君の前へ戻すこともできるけど。どうする?』

「えっ、目の前に……? 転移とかができるの?」

『試しに呼んでみようか。おーい、戻ってきてくれるかな:)』

モーリーの門にそんな文字が浮かび上がった瞬間……

──ドタドタドタドタ!!!

突然遠くから足音が聞こえて来たかと思うと、凄まじい速さでモーリーの像が戻ってきた!

そして門の前でぴたりと急停止すると、何事もなかったかのように、本を抱えたまま優雅なポーズで固まる。

「えっ、走ってきたの!?」

『そうだよ。彼は時速230キロで移動することができるからね』

「はやっ!?」

モーリー像の腕には、確かに二冊の本が抱えられていた。

一冊は、華やかな表紙の小説。どうやら、パンさんの好きなイザベラさんの本らしい。

そしてもう一冊は、ずっしりと分厚い専門書。表紙には『ゴーレムの基礎』と書かれていた。

「”ゴーレムの基礎”──モーリー、それ自分で読むの?」

『もちろん。自分がこの世界において何者として扱われるのかを学ぶことは、最も大切なことの一つだからね。僕がゴーレムなのかどうかは少し難しい問題だけれど、基礎を知ることは悪い選択ではないはずさ:)』

「自分探しだ……」

『それよりも、君は僕に何か話したいことがあったんじゃないかな?』

「あっ、そうなの。モーリー、貴方の実力を疑っているわけじゃないんだけど、やっぱり一回は戦ってる姿を見てみたいなと思ってさ」

『ふむふむ、なるほど。つまり、君は僕に戦闘をしてほしい、ということだね? 相手は何かな? 堕天使? 魔王? それとも、天界を踏み荒らさんとする、かなり失礼な誰かかな?』

「いやいや、私の昇格試験の相手なんだけど……ゴーレムらしいんだよね」

『ふむふむ、ゴーレムか。なるほど、それは本当に興味深い相手だね。わかったよ:)』

「よしっ! じゃあ、明日はよろしくね!」

というわけで、明日はモーリーのデビュー戦となった……!