軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

076 第四天位昇格試験の内容は?

……と、それよりも昇格試験、昇格試験。

私は周りの喧騒をいったん頭の外へ追いやり、受付嬢さんへ向き直った。

「あのー、実は私、第四天位の昇格試験を受けようと思ってて……」

「おおおおっっ!! ついに、やっと、サキさんも昇格試験を受けるんですね!?」

「は、はい……!」

受付嬢さんの食いつきがすごい……そんなに待たれてたの?

私としては、ステータス的に第三天位で十分なんだけど……。

「わっかりました! 当然ですが、サキさんは第四天位に昇格するのに十分なギルドポイントを持っていますので、受験資格はばっちりです!」

「良かったです!……ちなみに、どれくらいがラインだったんですか?」

「えーっと、五千ギルドポイントです!」

「あ、じゃあ確かに行けますね……!」

この前まで十五万ギルドポイントも持ってたわけだし。

なんだかんだギルドルームに使ったから、今は五万くらいだけど。

……いや、五万でも十分多い。

最近、金銭感覚ならぬギルドポイント感覚が壊れてきている気がする……。

「では、受験希望ということで……どりゃっ!」

受付嬢さんはカウンターの下から管理簿のようなものを取り出した。

分厚い冊子を慣れた手つきでめくっていく。

「えーっと……おっ、なんと明日受けられますよ! 今回の試験対象はちょっと厄介なゴーレムですが」

「あれ、ゴーレム? ワイバーンとかバジリスクって聞いてたんですけど……」

驚いてザラを見ると、ザラも「あれ?」といった表情を浮かべていた。

「あ、ザラストさんから聞きました? 実はですね、第四天位以降は昇格試験も何種類かありまして。ザラストさんが受けた昇格試験は、確かにワイバーンやバジリスクだったかもしれません」

「時と場合による、ってことですか……?」

「そうなります。まあサキさんなら、どれでも余裕じゃないですか!!」

そんなことないです……本当に……。

いや、確かにゴブリンズとか、アルテミスやザラだったら余裕だと思う。

けど、これは謙遜とかではなく、私はほとんどのステータスが未だに1である。

つまり、思いがけない攻撃をくらうことで大ダメージを受けかねない……。

第三天位の試験のときだって、ガルムたちがこっちに向かってきた瞬間はかなり怖かったしね。

あのときはジョンソンとブルースの機転でなんとかなったけど。

まあ、昇格試験は受けるつもりだったし、もういいか。

ということで、私が受ける意志を伝えると、

受付嬢さんが昇格試験の詳細を調べたり、受験手続きをするのに少し時間がかかるらしく、ちょっと待っていてほしいとのこと。

「では、こちらで手続きしておきますね! 少々お待ちください!」

「はい、お願いします!」

ちょうどザラも、指名依頼の確認をするために別の窓口へ向かったところで、

ジョンソンとブルースも、ザラの後ろに無言でついていった。

というわけで、私とアルテミスは集会所のテーブルで座って待っていることに。

……例のファンクラブのせいか、いつにも増して人が多いね。

ザラやゴブリンズを見に来たのか、集会所の中にはやけに人が集まっていて、丸々空いているテーブルがないよ……。

仕方ないので、先客のいるテーブルに座らせてもらおう。

「すみません、ここいいですか?」

「ほいほい」

なんだかのんびりした声が返ってくる。

見ると、テーブルの先客はなんとおじいさんだった。

白髪に帽子を深く被り、サングラスをかけて、なにやら古びた本を読んでいる。

服装も冒険者というより、近所を散歩しているご老人といった感じ。

ギルド集会所って、こういう普通のおじいちゃんも来るんだ……。

いや、もしかしておじいさんも冒険者だったり!? 人は見かけによらないって言うし。

はたまた、引退した元冒険者とかかもしれない。

「ありがとうございます。すみません、どこも席が空いてなくて……」

「今日は混んどるの」

おじいさんは本から視線を上げないまま、のんびりとそう言った。

──よく見てみると、帽子には二つ穴が空いていて、そこから角が飛び出ていた。

な、なるほど……別の種族の方だったんだね。

確かに街でも、たまに獣耳を生やした人とか見かけるけど、角がある人は初めて見たかも。

おじいさんの角は、片方が途中で折れているのか、半分くらいの長さになっている。

もう一本の角にも深い傷が走っていて、なんだか歴戦の猛者みたい……。

やっぱり元冒険者なのかな?

そんなことを考えながらじっと見ていると……。

「お嬢ちゃん、オーガを見るのは初めてかの?」

おじいさんが、そこでようやく本から顔を上げた。

「え、あ、すみません!!!」

しまった、ついついジロジロ見ちゃった……!!

「大丈夫大丈夫。最近はオーガもすっかり数を減らしたからの」

「……そうなんですか?」

「そうそう。わしみたいな年寄りばっかり」

「そうなんですね。でも、カッコいいです!」

「おお、お嬢ちゃん分かっとるの」

おじいさんは嬉しそうに目尻を下げた。

それから、読んでいた本を閉じ、テーブルの上に置く。

「お嬢ちゃんは昇格試験かの?」

「えっ、分かるんですか? そうなんです!」

「相手は誰かの?」

「それが、今回はゴーレムらしくて……」

「ほうほう、ゴーレムかい」

「そうなんです。でも私、ゴーレムと戦ったことなくて……」

「ゴーレムはコアを壊せば一発じゃよ」

「コア?」

「魔力を受けて動くための核──心臓のようなものよ。そこを壊せば、魔力の供給がなくなって止まる。そうすれば試験は合格じゃな」

「なるほど……!」

すごい良いことを聞いた気がする!

つまり、ゴーレムは無理に倒さなくても、どこかにある核みたいなものを止めればいいってことだよね。

……まあ、その核がどこにあるのか分からないんだけどさ。

「ありがとうございます! 参考にします!」

「ほいほい」

その後も少し雑談をしていると、受付嬢さんの私を呼ぶ声が聞こえてきた。

「あっ、呼ばれたのでここで失礼します!」

「ほいほい、サキちゃんまたのー」

私は軽く頭を下げると、受付嬢さんの元で昇格試験について色々と説明を受けた。

まず、試験会場は前回と同じ”模擬戦闘用訓練場”。

ここへはギルド集会所から転移で行けるから超安心。

次に、肝心の試験内容。

「今回の試験は、討伐ではなく、ゴーレムを戦闘不能にすることが目的になります!」

「戦闘不能……?」

「そうなんです。相手が魔物ではなく、ギルドが管理している訓練用ゴーレムですので」

受付嬢さんの説明によると、今回の相手は三体。

クレイゴーレム、ウッドゴーレム、ストーンゴーレムがそれぞれ一体ずつらしい。

前回みたいにコナツさんのような試験官が魔物を召喚する形式ではなく、ギルドが用意した訓練用ゴーレムを起動して戦う形なんだとか。

「戦闘不能って、具体的にはどうすればいいんですか?」

「基本的には、動けなくすれば大丈夫です。完全に破壊する必要はありません」

「つまり、コアを破壊するとか……ってことですか?」

「そうです! さすがサキさん!」

……さっき聞いた話をそのまま言っただけなんだけどね。

「一応注意ですが、ゴーレムごとに少し特徴があります。クレイゴーレムは比較的柔らかいですが、その分攻撃も通りにくいです。ウッドゴーレムは動きが速めで、ストーンゴーレムは遅い分、とにかく硬いですねー」

「なるほど、ゴーレムごとに結構違うんだ……」

「まあサキさんからしたら関係ないと思いますけどね! 制限時間は三十分で変わらずです!」

制限時間も前と同じだね。

他、何か聞いておくことあったっけ?

……あ、あれかな?

「あと、念のため確認なんですが……召喚獣と一緒に挑んでも大丈夫なんですよね?」

「もちろんです! 召喚士の方は、召喚獣込みで実力ですからね!」

「ですよね、よかった……!」

これで一安心。

私のところまで来た相手にはアルテミスに守ってもらうとして、前みたいにゴブリンズを召喚して戦ってもらえば、たぶん何とかなるはず。

──いや、待って?

相手はゴーレム……。

……せっかくだし、私たちのゴーレムに戦ってもらう?

パンさんやペールルージュさんも、モーリーの実力を見てみたいって言ってたしね。

私も、正直ちょっと気になってる。

モーリーって、どうやって戦うんだろう……って。

門が本体で、像は手足みたいなものらしいけど……全然想像がつかない。

それに、モーリーの動き的に、ダンジョンへ連れていって力試しをするのは難しそう。

その点、昇格試験の会場なら広いし、相手もゴーレム。

試す機会としては、かなりちょうどいいかもしれない。

明日、もしザラがギルドルームにいられるとかで、守りが安心できそうだったらだけど……。

帰ったら、モーリーにお願いしてみようかな。