軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第213話 ジンの戦い方

「日本卍会のジンか……まじパねえじゃん……」

それをさらに遠くから見ていた、『幻影の 方舟(はこぶね) 』の一人が漏らした。

ミズトたちは物陰に隠れながらセーフティエリアを進んでいたところ、ジンとノワール幹部の戦闘が始まると戦場が落ち着きだしたので、一旦身を潜めていた。

そこで、ちょうどジンたちの戦いが目に入り、同じ 異界人(いかいびと) である『幻影の 方舟(はこぶね) 』のメンバーは動揺を見せた。

「レベル59で何であんなに強いんだ……!?」

「カンストすると何か恩恵があるのかな……?」

「それにしても……レベル差16だぜ……!」

『幻影の 方舟(はこぶね) 』メンバーは転移者のスキルでステータスが見える。

それゆえにレベル75と59の戦いが、余計に違和感を覚えるのだ。

そして、相手の強さが分かるミズトは、彼ら以上にジンの能力を感じとっていた。

(なんか、あいつ、同じレベルのユウマより強くないか?)

【クラン補正による能力上昇は、クランのランクに比例します。また、クランスキル『血戦』を使用していますので、さらに一時的に上昇します】

エデンがミズトに答えた。

(能力上昇ねえ)

相手から見たらズルいんじゃないかと思ったが、それより遥かにずるいスキルを知っているミズトは黙った。

「ガーハッハッハッ!! ただレベルが高えだけじゃねえってのは嬉しいぜ!」

勝負を楽しむジンは、距離を置いて言った。

「フン、血気盛んなだけの子供が。『神楽』に次ぐクランだけはあるが、それが 異界人(いかいびと) の限界ってとこか。そろそろ時間切れだ、終わりにしてやろう」

「ここで『神楽』の名前を出すんじゃねえよ、くそムカつくじゃねえか。だが、てめえの言う通り、補正やスキルだけじゃなく、能力アップのアイテムも色々使って、やっとレベル70ちょっとぐらいの能力だ。意味分からねえよなあ?」

ジンはポケットから何かを出しながら言った。

「大した努力もせず、そこまでなれれば十分だろう」

「十分なわけねえだろ。俺様はてっぺん目指してんだ。だからよ――――最後は勝つことにしてんだ!!」

ジンは手に持っていた『覚醒石』を使用し青い光に包まれると、ノワール幹部に向かって突撃した。

「青い光? 覚醒石というやつか。しかし、当たらなければどうということはない」

ノワール幹部は、ジンの攻撃に備えた。

しかし、突然背中で何かが爆発し、注意がそれた。

「なっ……!?」

周囲を確認すると、『日本卍会』の一人が魔法で背後から攻撃してきたようだった。

「ガーハッハッハッ!! よそ見してんな! 爆裂破ぁぁ!!!」

ジンはその隙を見逃さないように、全力の一撃をノワール幹部に叩き込んだ。

「ひ、卑怯――――ぐわっ!?」

ノワール幹部が言い終える前に、ジンの攻撃が直撃した。

「オラオラオラァ! まだ終わってねえぞ!!」

ジンは畳みかけるように攻撃を続けた。

ノワール幹部は最初の一撃で大きなダメージを受け、続く攻撃を防御できずにサンドバッグのように撃たれていた。

「貴様ら卑怯だぞ!」

それを見ていたノワールの一人が武器を構え、二人の戦いに割って入ろうとする。

「最後は勝つって、ジンさんが言ってんだろうが!!」

だがそれをケンスケが邪魔をすると、それをきっかけに再び日本卍会とノワール全体を巻き込んだ戦闘が始まった。

「今のうちだ、行こう」

混戦状態に入ると、ウィルがすかさず皆に声をかけた。

ジンの戦いには皆思うところがあったが、何も言わずに若者たちはウィルに従った。

「ミズト……?」

ミズトたちがセーフティエリアを抜けようとすると、誰かがミズトを見つけ声をかけてきた。

(こいつは確か)

【彼はクラン集会所によくいらっしゃっていた、『チーム世紀末』のメンバーです】

(だよな……)

ミズトはエデンに言われるまでもなく思い出していた。

ミズトに声をかけてきたのは、クラン集会所利用者の中で唯一の三十代の青年。

直接話したことはないが、アキラという問題児とよく衝突を起こしていたので、人の顔を覚えないミズトでも覚えていた。

「ミズト、知り合いか……?」

ウィルが少し警戒しながら聞いてきた。

『裂空の槍』や『幻影の方舟』の若者たちも警戒している。

「はい、私が住んでいる屋敷の、前の利用者のお一人です」

ミズトはそう言いながら、青年の所属が『日本卍会』になっていることを確認した。

「覚えていてくれたか。まさかこんなところで会うとはな……」

青年は気まずそうに言った。

「お久しぶりです。皆さん戻ってこられなかったので、どうされていたか心配していました。ご無事だったみたいでなによりです」

「はは……無事なんかじゃないよ……。確かにクラン戦で敗北した俺たちは、強制的に所属が変わって、こうやって『日本卍会』の一員になってはいるが……」

「…………?」

なんだか歯切れが悪い。

「ミズトは会ったことないかもしれないけど、うちのクランマスターは…………クラン戦で死んだんだ」

「死んだ!?」

さすがのミズトも、驚きのあまり声が漏れた。

「ああ……。クラン戦なんてただの乱闘だ。この世界なら死者が出ても仕方ないんだけど……」

「そうだったのですね……」

青年が言う通り『チーム世紀末』のクランマスターとミズトは会ったことない。

会ったこともない人物が亡くなったと聞いたところで悲しんだりはしないが、こんな異世界で日本人同士が争い、死者を出した現実に、衝撃と強烈な違和感をミズトは受けていた。

ただ、相手があのジン率いる『日本卍会』だからこそ、ありえなくもないと思えていた。