作品タイトル不明
三百話
「主神オーディン様の命で貴方を導くために遣わされました」
「僕を導くですか。僕は何を期待されているのでしょうか」
「邪神ロキが世界を混沌に包もうと暗躍しているのはご存じですか」
「魔人達が転移門を使って魔界の魔物を送り込んでいることですか」
「この国は何とか対処できているようですが全ての国々が対応できているわけではありません。これが続けば多くの国が滅亡することになるでしょう」
「僕は一国の貴族ですから他の国までどうにかすることなんて不可能ですよ」
「それはわかっていますが根本的に解決する方法があるのです」
「その方法とは」
「魔界に赴き邪神ロキを討伐してしまえばいいのです」
「正直にいいますね。お断りします」
クロードなら魔界に赴き邪神ロキを討伐することは出来るだろう。
だが何が悲しくてあんな化け物と戦わねばならないのだ。
「何故ですか。転生するときにアリア様がおしゃったはずです。貴方の使命と言ってもいい」
「転生させてもらったことは感謝していますが僕に何のメリットがあるのですか」
「高いステータスに高性能な武具。恩恵は十分に受けているはずです」
「問題はまだあります。魔界に向かうためにはいくつもの国を通り過ぎないといけません。僕が何の理由もなく越境すれば大問題になります」
「世界の危機に対して些細な問題ではありませんか」
「人同士での戦争が起こっては邪神ロキを喜ばすだけだと思いますよ」
「ライヒルト公国を滅ぼした人のセリフとは思えませんね」
「襲われて何もしないわけにはいかないでしょう」
「ぐぬぬ。貴方が承諾してくれないと役目が果たせないではないですか」
「ブリュンヒルトさんも上から命令を受けている立場なのはわかりますがそれでも邪神ロキは相手にしたくないんですよ」
「邪神ロキが本格的に動き出すにはまだ時間があるはずです。諦めずに説得を続けさせてもらいますね」
「ご自由にどうぞ」
話し合いは決裂したがクロードは国の上層部には報告しておくべきかと王宮へと向かった。
国王陛下であるポセイドスと宰相のリッチマンはすぐに会ってくれた。
「クロード卿。何かありましたか」
「邪神ロキを討伐して欲しいと主神オーディンの使者としてヴァルキリーが訪ねてきました」
「どれも神話に語られる存在ではあるが魔人達の行動を見れば嘘というわけではないのだろうな」
「クロード卿はどうされるのですか」
「討伐の件は断りました。勝てるかもしれませんがその為に払う犠牲が多すぎます」
「クロード卿の強さは圧倒的ですが慎重なのはいいことです」
「現在も魔人の動きには警戒しているが他国の動きにも注意を払うとしよう」
ゲルマン王国の方針は各国の情報を集めるということで決まったのである。