軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28.コツコツやる男、一発逆転をねらう男

朝、ギルドに出かけようとして、屋敷の廊下でアルブレビトと遭遇した。

俺が今から出かけていくのに対して、向こうは今帰ってきたばかりって感じだ。

徹夜明けっぽくて、ちょっとやつれてる感があって、目の下にクマが出来ている。

不思議に思いつつも挨拶しようと身構えたが――アルブレビトは速度をあげて、俺が頭を下げるよりも早く横を通り過ぎていった。

「今にみていろ」

ぎょっとして振り向くと、アルブレビトは立ち止まることなく、そのまま立ち去ってしまった。

ブルーノの言葉を思い出す。

やっぱり……アルブレビトには面白くない状況なんだなあ……。

屋敷では何かと角が立つから、俺は街のカフェでアスナとジョディの二人と合流した。

魔法「ファミリア」で契約した、俺の 仲間(使い魔) の二人。

そんな二人と向かい合って座っていると。

「おいあれ、すっげえ美人じゃねえか」

「どっちもすごい綺麗だな……この街にあんな美人いたっけ?」

「おまえ、ちょっと声掛けてこいよ」

まわりがざわざわして、アスナとジョディの二人に注目していた。

話しかけてこいとはやしたてる声もあったが、二人が美しすぎて気後れしてる感じで、実際に声をかけてくる人は皆無だ。

そんな中、ジョディが座ったまま、しずしずと会釈程度に俺に頭を下げてきた。

「これからよろしくお願いします、ご主人様」

「ご主人様?」

何の事だ? と首をかしげた俺。

「主従の契約を結んだんですもの。もしかして、他の呼び方の方がよろしかったでしょうか?」

ああ……なるほど。

「そういうのはいい、くすぐったい。普通に名前で呼んでくれ」

「いいのですか?」

「それで頼む」

ジョディはしばらく俺を見つめた。

目をまっすぐと、真意を探るかのように見つめてきた。

やがて――

「わかりましたわ。ではリアムくん、って呼びますわね」

「ああ」

年上って事もあり、ジョディの性格や言葉遣い的な事もあって。

俺は、すんなりと「くん」を受け入れた。

「まあでも、ジョディさんがご主人様って呼ぶの、わかる気がするな」

アスナがそんな事を言い出した。

「そうなのか?」

「うん! 最近なんだかリアム、格好良く見えるし。頼りがいとかあるし、実際すごいし。年下なんだけど、本当にこう、ご主人様、って感じするよね」

「ええ、こう……一緒にいてドキドキするもの」

「ジョディさんはまだ一緒に狩りにいってないのにそれかあ。一緒に仕事したらもっとそうなるよ」

「あらあら、それは楽しみね」

アスナとジョディ、二人は俺への好意を露わにした。

そのせいで、まわりの男から睨まれるおれ。

二人の好意は嬉しいが、今は外だ。

これ以上まわりを刺激しないように、俺は話を変えた。

「順番がめちゃくちゃだけど、これから一緒にパーティーを組む、って事でいいか?」

「もちろんそうだよ。ねっ、ジョディさん」

「はい、ご一緒しますわ」

「そっか。じゃあ改めてよろしく」

俺は手を出して握手を求めた。ジョディはにこやかに握り返してくれた。

本当に順番がめちゃくちゃだが、正式に彼女とパーティーを組むことになった。

「で、これからどうすんの?」

アスナは俺に方針を求めた、ジョディも俺をじっと見つめて、答えを待った。

「こつこつと狩りをしていこう」

「いいの? リアム、もう男爵様だよ? もっとこう、でっかい依頼を受けていったほうがいいんじゃないの?」

「地位をもらったからと言って俺の中身がすぐに変わる訳じゃない。無理をして失敗して、まわりに迷惑をかけたら目も当てられない。今の力で、無理せず出来る事をやっていこう」

「おー……」

「あら……」

俺が示した方針を、アスナとジョディは感動した目で同意をしめした。

店を出た後、一旦ギルドによって、狩りの情報を確認してから街を出た。

野犬の掃除がまた続いてた(ジェイムズが帰るまでは続くらしい)から、それをやることにした。

なじみになった街道を進んで、見つけた獲物に向かって、ジョディは弓を引いた。

限界までそった弓から放たれた矢は、二十メートル近く先の野犬の胴体を射抜いた。

「アスナちゃん」

「了解!」

ジョディがいうと、アスナは二刀ナイフを構えて、野犬に飛びかかっていった。

野犬は逃げようとするが――胴体に矢が刺さってまともに動けない。

その野犬にアスナは一瞬で距離をつめて、首を切りおとした。

遠目でも分かる、鋭い太刀筋だった。

ファミリアで契約する前よりも、明らかに身体能力が上がっている。

「すごいわ……」

「ん?」

「前よりずっと目がよく見えるわ」

「見えると良いのか?」

「弓術は目が命ですもの。相手の姿が見えないとそもそも狙えませんわ」

「そりゃそうだ――ちなみにどれくらい見えるんだ?」

「そうですわね……あそこの岩がぎりぎり見えるくらいですわ」

「岩って……」

ジョディが指さした先を見つめた。

目を思いっきり細めた。

それでどうにか、百メートル先くらいに岩っぽいものが見えた。

「あれ……岩なのか」

「ええ」

まっすぐ指さすジョディ。

うーんわからん。

岩っぽい気もするけど、俺の視力じゃ確証がもてない。

岩が見えないから、代わりにジョディをみた。

「……遠くまで見えるといいんだよな?」

「ええ、そうですわ」

「それって、見えれば見えるほど?」

「悪いということはありませんわ」

「なら……ビルドアップ」

俺は覚えてる100数個の魔法の内、初級強化魔法をジョディにかけた。

魔法の光がぼわぁ……とジョディを包み込む。

「あら、あらあら。あらあらあらあら」

魔法がかかったジョディは、ほほに手を添えながらまわりを見回した。

「どうしたのジョディさん」

野犬の首をぶら下げて、戻ってきたアスナがジョディに聞いた。

「より遠くが見えるようになりましたわ」

「遠くが見えるように?」

「例えば、さっきの岩の陰に――ウサギさんが子作りしてますわ」

「見えすぎだろ!」

そもそもこっちには岩かどうかもよく見えてないのに。

「なに? どういうことなのリアム」

「実は、彼女の目に強化魔法をかけたんだ」

「強化魔法?」

「前にお前が攻撃力強化できないかって聞いてきただろ?」

「えっと……ああその事ね。たしか攻撃力あげたら逆に体が保たないって」

「そう。でも視力だけの強化ならそういう問題もないだろ」

「なるほどー」

アスナは納得した。

一方で、ジョディはおもむろに弓に矢をつがえて、引き絞って放った。

山なりに飛んでいった矢は――。

「当りましたわ」

「え?」

「アスナちゃん。申し訳ないけど、ちょっと確認してきてもらえるかしら」

「なにを?」

「まっすぐ行けばわかるわ」

「わかった!」

アスナはパピュン! と風のごとく駆け出した。

ものすごい勢いでかけていって、ものすごい勢いで戻ってきた。

「すごかった!」

「なにがだ?」

「あそこの岩、近づくと実は二つの岩がすっごい近くにかさなってるのが分かるんだけど、隙間が拳一個分くらい。その間に矢が挟まってた」

「百メートル先の拳一個分を狙えるのか!?」

俺は驚いた。

「リアムくんのおかげだわ。昔は出来なかったもの」

「わかる。あたしも野犬を普通に斬ろうって思ったら首ごといっちゃったもんね。リアムのおかげだよ」

「ありがとう、リアムくん」

「ありがとう!」

二人が満面の笑顔で俺にお礼を言ってくれた。

うん、悪くない気分だ。

その後、俺達はコツコツと野犬を狩って、その死体をアイテムボックスに入れて、街に戻ってギルドにもってきた。

報告して、報酬をもらおう……としたんだが、戻ってきたギルドはさっきとはうってかわって、ものすごくざわついていた。

物々しい空気で、みんなが慌てている。

「どうしたんだろ……ね、なにがあったの?」

アスナはそばを駆け抜けようとする一人のハンターを捕まえて、聞いた。

するとそのハンターは焦った顔で。

「やりやがったんだよ、ハミルトンのおぼっちゃんが」

「おぼっちゃん? だれ?」

「長男! あいつ、封印を解いたあげく盛大に失敗こきやがったんだよ!」

「封印……ってあの?」

「あの!」

ハンターはそう言い捨てて、再び駆け出していった。

封印、そして「あの」。

『今にみていろ』

今朝、すれ違ったアルブレビトの言葉を思い出した。

どうやら彼は、俺に対抗しようとして、父上が一回失敗した事に手を出して――父上以上に失敗したようだった。