軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27.初代と三代目

三日経って、俺は再びジェイムズの屋敷に呼び出された。

第一王女殿下がお見えになってる――使者にそう聞かされた俺は気を引き締めて向かったのだが――甘かった。

まず沿道、屋敷に近づくにつれて、野次馬の数が増えていった。

そして屋敷、到着したはいいが、警護が普段の数百倍だ。

正門から屋敷に続く道の両脇が、山ほどの兵によって固められている。

何かの儀式・礼典、そんな感じがした。

「こ、こんなに大事だったのか?」

背中にいやな汗がでた。

かといって引き返す訳にはいかない。

姫様が俺に会いたいという事を聞きつけた父上が、

「決して無礼のないようにな」

って、出かける前にわざわざ念押ししてきたのだ。

俺は意を決して、何回か来て顔見知りになった門番にいって、通してもらった。

ザッ……ザッ……ザッ……。

屋敷に続く道、両脇の兵士が直立不動で並んでいる。

何もしてないしされてないが、その数がもうプレッシャーを与えてきた。

進んでいくと、屋敷の扉の前。

階段を上って屋敷に入る造りなので、すこし高いところに一人の女が立って、こっちを見下ろしていた。

権威。

その二文字が俺の頭の中に浮かび上がってきた。

山ほどの兵に守られた、高い位置にいる――王女。

ゴクリ。

思わず喉がなった。

「リアム・ハミルトンと申します」

急なことで、教えてもらった礼法が怪しかったが、どうにか教わった通りの事は出来たはずだ。

屋敷の中の一番豪華な部屋で、俺は第一王女スカーレットと対面している。

――いや、謁見している。

スカーレットが座っているのはものすごく高価そうな椅子で、玉座っぽく見える。

そのまわりに何人もの兵士が物々しくガードしてて、ジェイムズが大臣のように控えている。

劇とかでみる、謁見のシーンにそっくりだ。

「面を上げよ。だれか、其の者に座を」

スカーレットがいうと、メイドが一人、椅子を持ってやってきた。

俺はそれに座った。

スカーレットはキャタピラー、そしてジャイアントフロッグの討伐の話を聞いてきた。

俺はちょっとほっとした。

スカーレットと会って、何を聞かれるのか不安だった。

答えられない質問だったらどうしようかって思ったけど、これなら簡単だ。

俺は、モンスターの討伐を事実通りに話した。

それを静かに、最後まで聞いたスカーレットは。

「面白い。特にジャイアントフロッグ。上級攻撃魔法を使わずに討伐する話は初めて聞く。そなたはどうか」

「寡聞にして存じ上げませんな。あれは上級魔法による短期決戦、一気に殲滅するのが定石」

ジェイムズが答える。

上級魔法か……どんなものなんだろうな。

魔法が憧れの俺は、上級攻撃魔法や上級精霊召還はいつか覚えたいと思っている。

「そして、使い魔契約」

スカーレットがいう、俺はびくっとした。

本題が――来た。

「話は聞かせてもらった。面白い。この場で見せてくれぬか」

「……」

俺は唾を飲んだ。

権威。

さっきからずっと感じてた権威。

押し寄せてくるプレッシャー。

俺にやらせようとしてこうしてるのか。

だったら、なおさら。

「申し訳ありません、それはできません。仲間を見世物にすることはできません」

と、ジェイムズに言ったのと同じことをもう一回繰り返した。

「表裏一致している、か」

「え?」

「ふふ、面白い、ますます面白い。気に入ったぞ」

「え? え?」

楽しそうな表情で笑い出すスカーレット。

今の……楽しい要素、あったか?

「私を二度も楽しませてくれた人間はそうはいない」

「二度……?」

どういう事だ。

「それに報いねばならんな。ジェイムズ卿」

「はい」

「予定通り、リアムに男爵位を授ける」

「御意」

「……え? だ、男爵? 俺に?」

「うむ」

「でも、俺何もしてない。功績とか……」

そう、貴族になるには功績がいるはずだ。

父上が必死になって挙げようとしている功績。

俺は何もしていないはずだ。

「私を二度も楽しませた、十分だ」

「た、楽しませただけで?」

「女衒のまねごとよりはよほどいい」

女衒……ああ、父上の事を知っているのか。

王や皇子に妃を献上する、娘を差し出す。

女衒ってのも……言い過ぎでもない気がする。

「ついでだ、これもやろう」

スカーレットは手をすぅとあげた。

するとまたメイドがやってきて、トレイに一冊の本を載せてもってきた。

「これは……?」

「ファミリア――使い魔契約の魔導書だ」

「――っ!?」

「覚えられるなら自分で覚えた方がよいだろう」

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

俺は魔導書を受け取って、パッと立ち上がって、何度も何度も頭を下げた。

「……ふはははは、男爵位よりも魔導書か。つくづく面白い少年だ」

それをみたスカーレットは一瞬きょとんとなってから、大笑いした。

使い魔契約魔法・ファミリア。

その魔導書をもらった俺は、早速いつものように屋敷の林にこもって、魔導書で練習をした。

ファミリアを完全に習得するまでは、それで契約しても魔導書から一度手を離しただけで契約が解除される。

これを仮契約というらしい。

他の魔法と同じ、完全に習得して、魔導書無しでも効果が永続するようになってからの契約を本契約という。

俺はファミリアを一生懸命練習した。

もちろん、完全習得まであとわずかになっているアナザーワールドの練習も欠かさない。

それを、延々とやっていると。

「また魔法かよ」

「え? ブルーノ兄さん」

背後から声をかけられたので振り向くと、婿にでたブルーノの姿がいた。

「どうしてここに」

「遊びに来るくらい良いだろ? 貴族同士、交流は必要だ。俺は今、オヤジと同じ貴族だからな」

ブルーノは冗談めかしてそう言った。

なるほど、今のブルーノはハミルトンの四男じゃなくて、別の貴族の家の当主――だから同格ってことか。

「お前の話を聞いたぞ」

「俺の?」

「男爵になったようだな」

「あ、ああ」

「くっくっく……アルブレビト、今頃悔しがってるだろうな」

「え?」

「そうだろ? あれだけ貴族の跡継ぎにこだわってた男だ。今やお前より下なんだからな」

ああ……片方は貴族の息子、片方は貴族。

なるほど。

「まあ、そもそもだ。事実上お前、オヤジよりも立場上だがな」

「え? でも俺男爵……」

俺は男爵になった、父上は伯爵だ。

伯爵は男爵よりも上――貴族の五男に乗り移って数ヶ月程度の俺でもその事は分かる。

「ばーか、そりゃ名目上はそうだろうけどよ」

「名目上?」

「考えてもみろ、お前は自分の家の『初代』だ」

「うん」

「オヤジはこの家の『三代目』だ」

「それで?」

「この国の貴族はな、自力で功績を立てた『初代』と、受け継いだだけのその他大勢にわかれるんだよ。功績立てた人間の方が実際すごいだろ。何かあるときの発言権も大きい」

「あっ……」

なるほど、そう言われるとそうかもしれない。

「よくやったぞリアム。あのクソオヤジを越えてくれてよ」

楽しげなブルーノ。

どうやら俺は、実質的な立場で父上を越えたようだ。