軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

◆171・レギドールで過ごす最後の夜 □

みんなでレイヴェルの森から町へと向かい、これからの旅に備えて食材を買い込んだ。

ついでにリビエスの町にある店を一通り見て回り、お土産も買ってきた。

リビエスの町で人気だという『チーロ』も入手した。

前に第五部隊の副隊長さんにもらった、チーズが練り込まれたカリッカリのパンの耳みたいなやつだ。

口の中の水分は持っていかれるけれど、あったらついつい食べてしまう魔性の食べ物である。

チーロを吸い込むポニドラたちも、ある意味『魔性』であった。

キレイ過ぎる吸い込み方に、自分も吸い込まれそうな錯覚を起こしてしまうのだ。

できれば、記憶から抹消したいと思う。

――魔性だけになっ!

「さ、料理しよ……」

妖精の宿邸に戻り、キッチンで食材を広げる。

これからの旅に備えて、いろいろ作っておくのだ。

いっぱい作ったと思っても、すぐになくなっちゃうからね。

「 何(にゃに) を作るのだ?」

「ん……、味見はいつでもしてあげる」

「結構で~す」

「にゃっ! にゃぜ結界を張るのだ!」

「ん……、結界、反対!」

「あ、手伝います」

「雪丸さん、いつもありがとう!」

「にゃっ! にゃぜ雪丸は入れるのだ!」

「ん……、結界、反対!」

料理を始めると毎回聞こえる幻聴を無視して、まずは、レイヴェルの森で拾ったクックリを水に浸しておく。

あとで栗ご飯やら、何やらを作るのだ。

栗きんとんと栗のパウンドケーキ、栗どら焼きに焼き栗も作ろう。

それから、さっき獲ってきたブルのお肉で、ビーフシチューとビーフカレーも作る。

ローストビーフも食べたいな……。

あ、肉巻きおにぎりと、ステーキサンドも作っておこう。

それから、なんちゃらバンブルーを使ったお菓子も作ろう。

お味は、ちょっと甘さ控えめなメイプルシロップって感じかな。

これを使ってクッキーを作る。

これは、第五部隊で保護されている子供たちに渡してもらう分だ。

あとは、前にたくさんもらったバルーンナッツもあげよう。

バレーボールくらいの大きさがあるバルーンナッツの中には、キャラメル味のポップコーンみたいなものがいっぱい入っているのだ。

アルベルト兄さんに渡しておこう。

そうして、数時間をかけて料理を作り終えたあと、一休みする。

アルベルト兄さんとは明日でお別れするけれど、そんなに悲観することはない。

ナツメさんがいつでも、どこへでも、転移で連れていってくれるらしいからね。

今はまだ転移の負荷に耐えられないアルベルト兄さんも、金竜様の加護によって増えた魔力が身体に馴染めば、転移できるようになるだろうとのことだ。

そうなった時には、雪丸さんやクロたちがアルベルト兄さんを連れて、ティントルの森に遊びに来るとも言っていたしね。

「アルベルトは、魔法の練習もがんばってね」

「精進します。しかし、長年の癖で剣を優先してしまうのです。身体が勝手にそう動いてしまうと言うか……」

「戦闘するなら慣れた戦い方の方がいいと思うよ。そこまで無理して魔法を使う必要もないと思うし」

「はい。しかし、少しもったいないような気もして……。ロンダンの魔法騎士のように、魔法を纏わせた剣ならば……と思うのですが」

「ああ……」

アルベルト兄さんが言っている魔法騎士とは、ロンダン騎士団のユージオさんの隊のことだろう。

光る剣を使う人たちだね。

あれはイイ。光る剣とかファンタジーだからね。

「そういえば、身体強化系の魔法ってあるのかな?」

「あ、あるよ。うん、アルベルトはそちらを使った方がいいかも」

「俺も覚えたい」

という訳で、身体強化魔法の練習をすることにしたらしいアルベルト兄さんとルー兄。

早速、二人と一緒に庭先に出る。先生役のレイも一緒だ。

すると、他のみんなも一緒に付いてきた。

「《珍しいものが見れそうだな》」

「《身体強化魔法は使わねぇからな……》」

「《使う必要ないもの……》」

「にゃっ、吾輩も使ったことはにゃいにゃ」

「使うとどうなるにゃ~か?」

「どうなるにゃんかね~?」

――猫と竜が野次馬。

「じゃあ二人共、身体に魔力を巡らせみて」

「「はい」」

私もやってみようかな。

今まで防御も攻撃も移動も別の魔法を使っていたので、身体強化をすることなど考えなかったのだ。

防御と攻撃はともかくとして、もしも浮遊魔法が使えないような状況で、走らなきゃいけない時があったら?

そんな時に身体強化できれば、速く走れたりするのでは?

「最初は魔力を身体に纏わせるだけでもいいよ」

「「はい」」

――ふむ。

某戦闘民族が頭を過る。

むしろ、それしかイメージできない。

「はぁぁぁぁぁ……」

髪の毛が逆立ち、燃えるような黄色のオーラが私の身体を覆う。

「リリアンヌ!?」

「にゃ!?」

「なっ……」

――いざ!

キリッとした顔付きで、風を切るように走り出す。

――《ポテテテ、ポテテテ……》

「…………リリアンヌ?」

私は! 風になる!

――《ポテテテ、ポテテテ……》

「リリアンヌ……」

「《あれは走っているのか?》」

「《一生懸命でかわいいじゃない》」

――《ポテテテ、ポテテテ……テ……テ……》

なぜだか、風になれなかった――。

「いいんだ、別に……。飛べるし、いいんだ……」

そうだよ、別に走らなくてもいいじゃない!

走れないなら、飛べばいいじゃない!

そうよ、そうよ!

むしろ、このオーラを纏っていて、走るなんて邪道よ。

当初の目的を完全に忘れた結論に達していることにしばらく気付かないまま、私は練習を終えた。

もう二度と、スーパーにはならない。

私がこの世の不条理を嘆いている間に、アルベルト兄さんとルー兄は身体強化魔法をアッサリと習得した。

そして、なぜかとても速く動いたり、とても速く走ったりしていたのである。

――全く、不思議なこともあるもんだ。

ぼんやりと空を眺めながら、ふと思う。

「お腹空いた……」

気が付けば、日が傾き始めている。

そろそろ、夕ご飯の用意をしよう。

庭にいるし丁度いいと、その場にBBQコンロを設置した。

「にゃっ⁉ ばぁべきゅうをするのか?」

「うん、ブラックブルのステーキも食べたいし」

「にゃ~! ブルのステーキ!」

「楽しみにゃん!」

「ん……、早く食べたい」

「《我も早く食べたい》」

「キュキュ~ン!」

「わたちもいっぱい食べるにゃの!」

ブラックブルを食べると聞いてはしゃぎ始める人外たちを横目に、せっせと準備を始める。

野菜や魚介類も焼こう。

あ、おにぎりも焼いちゃおう。醤油とねぎ味噌付けてね。

でも、まずは!

「スッテーキ、スッテーキ♪」

厚めに切ったブラックブルのお肉に塩胡椒を振って、ジュワ~ッとな!

「じゅわぁ~♪」

「じゅわにゃ~♪」

「じゅわにゃにゃ~♪」

「じゅわわわにゃ~ん♪」

「にゃわわ~、にゃわわ~♪」

《ぽじゅわぁ~…………》

《ぽじゅわぁ~…………》

《ぽじゅわぁ~…………》

――え? 何だ、最後の……。

思わず振り向けば、衝撃の光景が目に入る。

ポニワが雛壇に並び、コーラス隊のようになっていたのだ。

――何、その雛壇! 誰が作ったの!?

呆然とその光景を眺めていると、ポニワ隊によるコーラスが始まった。

《ぽっ、じゅわっ♪》

《ぽっ、じゅわっ♪》

《ぽっぽっぽっ、じゅわじゅわ♪》

《ぽっ、じゅわっ♪》

――まじか。

「………………。お肉、お肉~」

私は雛壇に並ぶポニワ隊にスッと背を向け、お肉に集中することにした。

並ぶポニワ隊を見なければ、素敵なBGM……ということでね。

こうして、レギドールで過ごす最後の夜も、もふもふ……プラスアルファに囲まれながら、楽しく過ごしたのであった――。

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「ゾルジ邸の一部が消失? レギドール騎士団が詰めかけていたことから、何らかの理由でダミアーノ・ゾルジが捕縛されたと思われる? え~? もう少しで魔法陣が起動されるはずだったんじゃないの? 仕込みは? 失敗した? はぁ……、これじゃあ、何のためにコウキを召喚して、コウキの愚かな計画にも目を瞑っていたのか、分からなくなるじゃないか……」

一人の男が薄暗い部屋の中で、封を開けたばかりの手紙に目を通し、独り言ちていた。

そして、読み終えた手紙を脇に置き、真っ新な便箋を取りだす。

しばらく何かを書き綴ったあと、その手紙に魔力を籠めて飛ばした。

「まだ使える駒なら、ちゃんと回収しないともったいないからね」

怪しげな笑みを湛えた男の影が、蝋燭の灯りに照らされ、揺らめいていた――。