作品タイトル不明
◆170・レイヴェルの森にて
皇都レギンから、リビエスの町へと戻ってきた。
帰る気がなさそうなポニドラたちも一緒だ。
いるのはいいんだけれど、見た目が……。
という訳で、町へ出る時には、急遽用意したポニドラ専用バッグに入ってもらうことにした。
頭だけ出るようにしたポッケを、いつものバッグに縫い付けただけだ。
じっとしていれば、ぬいぐるみに見えなくもない……はず。
この顔が五つも出たバッグを持ち歩くのには、相当な勇気が必要だけど。
あれ? よく考えたら、見た目が相当にホラーなのでは?
見てしまった人にダメージが入ったりしないだろうね?
その内、どうにかしよう……。
ロイド様一行と赤き竜一行とは、明日の朝まで別行動だ。
なので、私たち一行はアルベルト兄さんを連れて、レイヴェルの森へと向かうことにした。
一緒に行くのは私とレイ、ルー兄と雪丸さん、ナツメさんとトラさんとロックくん、アオくんと小雪ちゃんにポニドラたち、そして、合流したシロとクロとココちゃんだ。
ポニワな金竜様がここにいるのに、金竜様に会いに行くとか、何だか変な気分である。
でも、せっかくだからアルベルト兄さんには、ポニワじゃない金竜様を見てほしいよね。
そんなこんなで、金竜様とアルベルト兄さんのご対面タイムがやってきた――。
「この姿で会うのは初めてだな、アルベルト!」
「はっ!」
膝を付いて、感極まった様子のアルベルト兄さん。
一緒に来たルー兄も畏まった様子だ。
私は……。
「私もリリアンヌが作ったアクセサリーがほしいわ」
「ん……、シロも……」
「《私がもらった髪飾り、素敵だったわよ。髪飾りも見せてもらいなさいな》」
「《どれも良かったぞ》」
「オイラのは、ロックとお揃いにゃん!」
「お揃いもイイにゃ~よ!」
「わたちもアオお兄ちゃまとお揃いにゃの!」
「お揃いは嬉しいにゃにゃ!」
「にゃっ、リリアンヌ、来る途中にクックリの木を見たのだ。あとで採りに行こう」
「あ、僕、また栗ご飯が食べたいな」
「《くりごはん?》」
「《リリアンヌの手料理か?》」
「クックリの実を使った料理ですね」
「キュキュン!」
好き勝手に喋る霊獣と猫妖精とポニドラたちに、むぎゅむぎゅと取り囲まれている。
「お、お前ら! うるさいぞ!」
「あら、これいいわね」
「ん……、シロはクロとお揃いがいい」
「《相変わらず仲良しね》」
「《いつ見ても微笑ましいな》」
「これもキレイにゃん」
「こっちもイイにゃ~」
「わたちはコレがいいと思うにゃの」
「こっちもイイにゃにゃよ」
「にゃ? コレもいいと思うがにゃ」
「全部キレイで、迷うよね」
「《お主は、たくさんもらっておったではないか》」
「《ルーファス、お前もこっちに来い》」
「リリアンヌ、ココもほしいと……」
「キュ~ン」
「お、お前ら……」
後ろで金竜様が何かを言っている気がするけれど、みんなお構いなしに話し続けている。
――憐れなり。
私はみんなに囲まれながら、せっせと追加のアクセサリーを製作中だ。
みんな、喜んでほしがってくれるので、嬉しくなって他の人……人? 他のみんなにも追加で何個か渡すことにした。
すると、みんながどんどんと材料をくれるので、いつの間にか作る前より素材が増えていた。
それに首を傾げながらも、ありがたく頂戴することにする。
出された素材の中には魔金と魔石、樹液以外のものも混じっていた。
謎の石に謎の塊、謎の木の実に謎の葉っぱ、謎の羽根に謎の骨……。
鑑定しようかと思ったけれど、何となく、そのままアイテムボックスにナイナイした。
鑑定結果を確認するのが怖かったからではない。決して――。
金竜様の棲み処でアクセサリー製作をしたあと、みんなでお茶をしながらおやつを食べる。
おやつタイムには月子さんと雷丸さん、他の猫妖精やピクシーたちもやってきた。
ずっと騒がしいけれど、とても楽しい。
最初は畏まっていたアルベルト兄さんとルー兄も、次第にいつも通りになっていた。
強制的に順応性が磨かれたのではなかろうか。
まぁ、周りにいるのがもふもふとか変な顔の珍生物ばかりで、緊張感を保ち続けるのが困難だったとも思えるけれど。
「にゃっ、リリアンヌ! おやつも食べたことだし、クックリを採りに行くぞ!」
「は~い」
「ついでにベルベリーやキャンディフラワーも採りに行きますか?」
「行く!」
「僕も行くにゃ~!」
「オイラも!」
「こちらで採れる果実は、ティントルで採れるものとは味が違うからにゃ。土産にするのも丁度良い」
「わたちも行くにゃの!」
「みんなで行くにゃにゃ」
という訳で、月子さんと雷丸さん以外のみんなで、レイヴェルの森へと向かった。
レイヴェルの森はティントルの森と同じく、ケット・シー族が管理する森だ。
森の奥へは、猫妖精たちの許可が無くては入れない。
人間の世界側では、『アルトゥ教の教皇か枢機卿の許可がなければ入れない』ということになっていたけれど、それはアルトゥ教の人間が勝手に言っていただけのことである。
デルゴリラの起こした騒動がキッカケで、森への立ち入りについても見直しがされるかもしれない。
まぁ、それでも結局、森の奥に人間が入れることはないだろう。
ティントルの森のように、人間が立ち入ってはいけない場所は、森に生息する霊獣によって、自然と外へと追いやられる仕様のようだ。
転移させられるとかではなく、自然と外へと続く道筋に誘導されるのだとか。
面白そうなので、ちょっと体験させてもらったのだけど、何が起こったのかよく分からなかった。
森の奥を目指して歩いているはずなのに、気が付いたら森の外にいたのだ。
「なんじゃこりゃ~!」と、おもしろファンタジーを堪能した。
その後はココちゃんの案内で、森のおススメ採取スポットへと向かう。
まずは、ナツメさんが行きたがっていたクックリ採取だ。
かなりの大所帯で、まるで学校の遠足のようである。
金竜様は本体を置いて、わざわざポニワ姿で付いてきた。
「《ねぇ、今更だけど、この姿で入手したものは、わざわざ転移させなくても、亜空間収納に入れれば良かったわね……》」
「「「「《――はっ‼》」」」」
「《確かに、亜空間を広げるだけなら、魔力消費はほぼないな……》」
ポニワ顔なのに、『ガーン』という効果音が聞こえそうな雰囲気が、ポニドラたちの間で漂っていた。
無表情なのに表情が豊かという、矛盾を目にした気分だ。
――お竜様って、案外、抜けてるとこあるんだね。
「ナツメ様! あそこ! あそこにドゥルセバンブルーがあるにゃにゃ!」
「にゃ?」
「えるp……こんぐるぅ?」
「ドゥルセバンブルーだよ」
「甘い汁が入っている植物にゃん」
アオくんが指し示した植物の見た目は、サトウキビに似ていた。
しかし、アオくんがドゥ……なんちゃらバンブルーをズボッと土から引き抜いた瞬間、頭に疑問符が浮かぶ。
細い竹のような茎の下に大根のような根があって、甜菜の上にサトウキビが生えているような植物だったのだ。
「フュ、フュージョン……」
このなんちゃらバンブルーは、この世界ではメジャーな甘味の原料らしい。
町で一般流通している甘いお菓子のほとんどに、このなんちゃらバンブルーが使われているのだとか。
砂糖よりも入手がしやすく、お手頃価格のようだ。
せっかくなので、私もいくつか採取させてもらった。
ここでの採取がひと段落したところで、次の場所へと移動する。
ベルベリーとキャンディフラワーの採取だ。
ティントルの森でも採れるけど、実の部分の色が違って、味も違うらしい。
どちらも見た目がかわいい上に美味しいので、私も好きである。
「あ! そういえば、この辺りでしか獲れない、美味しいお肉……魔獣とかっている?」
「この辺りでしか……」
「にゃっ! ばぁべきゅうか?」
「ああ、うん、それもいいけど、お土産をね……」
何かと苦労をしていそうなソウさんに、お肉を持って帰ってあげようと思っていたのだ。
お肉なら、セキさんや他の猫妖精たちも一緒に食べられるし。
「少し離れますが、東側の平原にブラックブルやレッサーブルがいると思います」
「ブル!?」
――それは牛では? 牛では!?
「いいね、僕もブル食べたいな」
「僕も食べたいにゃ~!」
「オイラも!」
「にゃっ! 行くぞ!」
ということで、みんなが『ひゃっほう!』なノリで、ダバダバとブル狩りへと走り出す。
私とアルベルト兄さんとルー兄は、フェンリルモードの雪丸さんに乗せてもらった。
ブルがいるという平原に行けば、黒い牛と茶色い牛、赤い牛がいた。
黒い牛がブラックブル、茶色い牛がレッサーブル、赤い牛がブラッドブルだ。
赤い牛のお肉は美味しくないらしいので、今回は狩らない。
おススメは、黒毛のブラックブルだそうだ。
鑑定さんも『超美味』と言っている。
「うぉりゃあ~!」
「にゃふぅ~!」
「にゃ~!」
「にゃ~ん!」
「にゃにゃ~!」
「にゃの~!」
「キュ~ン!」
一部のメンバーが狩猟民族と化したかのように、目を血走らせながらブラックブルを狩る。
「獲り過ぎは厳禁ですよ!」
「は~い!」
「ん……、茶色いのも美味しい」
「ブルはB級魔獣なのだが……」
「アルベルト、今更だよ。ここにいるみんなは、A級……どころかS級魔獣だって斃せるよ」
「そ、そうだな……」
雪丸さんの注意を心に留め、ほどほどのお肉を確保したところで狩りは終了だ。
「ぐふふ、ステーキにしよう♪」
一番の目的であった金竜様とアルベルト兄さんの対面も済ませたし、お土産も確保した。
町で買い物をしたら、妖精の宿邸へ戻るとしよう。
そうして私たちは、ほくほく気分で帰途についたのであった――。