軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

◆169・増える被害者

「あれ? そういえば雪丸さんは?」

「《お使い中だ》」

「お使いですか?」

「《アウルムが『何か食べたい、何か食べたい』とゴネたのだ》」

「《ゴネてない!》」

「そ、そうですか……」

ご飯食べてから、まだそんなに経ってないと思うんだけど……。

雪丸さん、お疲れ様。

戻ってきたら、雪丸さんにも何かあげよう。……要るかな?

「要ります」

大量の屋台飯を抱えて戻ってきた雪丸さんは、買ってきた食べ物をポニドラたちの前にそそくさと置き、私が作った装飾品を物色し始めた。

そんな雪丸さんが持って帰ってきたのは、屋台飯だけではなかった。

「宿の前で会いました」

「あ! アルベルト兄さん!」

「リリアンヌ」

「俺たちも来たにゃにゃ!」

「リリアンヌ~!」

「アオくん! 小雪ちゃん!」

「よぉ、嬢ちゃん」

「副隊長さんも!」

雪丸さんと一緒に、アルベルト兄さんがいた。アオくんと小雪ちゃんも一緒だ。

それから、アルトゥ教聖騎士団・第五部隊の副隊長さんもいた。

えっと、名前は……

――――――――――――――――――――――――――――――

◆ヴィンセント・ファビーノ(30)

[種族] 人族

[MP] 6,600/6,600

[スキル]真眼

[備考] 6/9生まれ・ヘビースモーカー

レギドール神皇国アルトゥ教聖騎士団第五部隊副隊長

――――――――――――――――――――――――――――――

うん、ファビーノさんね。

まぁ、結局、『副隊長さん』と呼ぶんだけど。

で、そんな副隊長さんとアルベルト兄さんがなぜここにいるのかというと、ロイド様たちの話し合いに参加するためのようだ。

レイたちが戻ってきたので話し合いが終わったのかと思ったけれど、話し合いは一時中断しているらしい。

なぜなのかと思えば、ポニワな白竜様と金竜様を見た大公子様が、気絶しちゃったのだとか。

「あ~…………」

気持ちは分かる。痛いほど分かる。

正体を知らなければ、『何だ、この珍生物……』程度で済んだだろうに……。

でも、ゾルジ邸どころか、ゾルジさんとウルヒナさんとデイジーが消えちゃった訳だし、やっちゃった本人である白竜様がそれを説明して、パドラ大陸の管理者である金竜様がそれを承知しているよっていうことを話しにいった訳だからね。

――で、新たな被害者が、またここに……。

「――なっ! 何だ!? 何だコレ! 痛ぇ! この小っさい生き物……、生き物か? 見ると目が眩んで痛ぇ!?」

「あ~…………」

――そっかぁ。真眼で見ると、そんな感じなのかぁ……。

「《あらあら……》」

「《ふむ、見え過ぎたか》」

「《眼帯してんのにか?》」

「《よく見よ、あの眼帯はスキルの隠蔽用のようだ》」

「《魔力を籠め過ぎなのであろう。目に籠める魔力を絞りなさい》」

「え……」

「喋っ……。リリアンヌ、コレは金竜様の使者と呼ばれていたものに似ているが……」

「あ、まぁ、元は同じだけど……」

――それ、使者じゃなくて、お竜様だぁ。

「《俺は使者じゃないぞ、金竜だ! がははっ》」

がははじゃないよ……。

私の使い魔で通すって言ってたのに、アッサリ正体バラしてるし。

まぁ、この二人には隠す必要がないってことなんだろうけど。

特に金竜様は、アルベルト兄さんに会いたがっていたしね。

「は……」

「アルベルト……、今、何て聞こえた?」

「いえ、私もちょっと、よく……」

そんなことを言いながら、私に視線を向けてくるアルベルト兄さんと副隊長さん。

――何ですか? 私に聞いても現実は変わりませんよ?

「金竜様です」

ポニワ ボディ(ぼでぇ) で胸を張る金竜様を手の平で指し示す。

「そ……、そうか」

「は? いや、アルベルト、何でそんなにアッサリと納得したんだよ! そんな訳ないだろう!」

アルベルト兄さんがすぐに納得したのは、慣れの問題だろうね。

ティントルの森で、アルバス様にも会っているし……。

「嬢ちゃん!」

――何ですか? 聞き直したって現実は変わりませんよ?

「金竜様です」

「………………」

「副隊長しゃん、ここにいるのは本当に金竜しゃまにゃの」

「……そ、そうか」

「………………」

――小雪ちゃんの言葉には納得するのか。解せぬ。

副隊長さんも、小雪ちゃんには弱かったらしい。かわいい生き物は最強だ。

その後、アルベルト兄さんと副隊長さんが、ポニドラたちに挨拶を始めた。

その横で魔石のモザイク風アクセサリーを物色していた雪丸さんに交じって、アオくんと小雪ちゃんも同じくアクセサリーを物色し始める。

数が足りないものは追加で作るので、どれを選んでもいいと言ってある。

雪丸さんはバングルを選んだ。

小雪ちゃんはアオくんとお揃いのものがいいらしく、同じ形のチャームがいいようだ。

リボンを付けて、首に付けるらしい。

小雪ちゃんが首に掛けていたミニポニワは、背中に背負い直されていた。

「アオお兄ちゃまとお揃いにゃの~!」

「似合ってるにゃにゃよ」

――かわいい。

ついでにアルベルト兄さんと副隊長さんにも、チャームをお裾分けしておいた。

副隊長さんは顔色がよろしくない上に心ここにあらず状態で、生返事をしながら受け取っていたけれど。

何かブツブツ言っているのは、聞かなかったことにしておくね。

「そういえば、リリアンヌ」

「ん?」

「もうすぐ帰ってしまうと……」

「あ、うん、レギドールですることが終わったからね」

「そう……か。リリアンヌ、本当に世話になった。ありがとう」

「え、あ、はい」

アルベルト兄さんに改まった感じで頭を下げられてしまった。

旅の時々で、アルベルト兄さんを『生贄』にしようとしていたアレコレが頭を過る。

……何かごめんよ、アルベルト兄さん。

でも、群がる女子も、旅の同行希望者も、アルベルト兄さんが目当てだった訳で……。

あれ? やっぱ、アルベルト兄さんが原因だった。

「私たちは明日、リビエスの町に帰る予定だが、リリアンヌはいつまでレギンに?」

「ん~、ロイド様たちの話し合いは今日で終わるだろうし……、それが終われば?」

「そうか。そのまま、レギドールを出るのか?」

「ううん、私も一度リビエスに戻るつもりだよ」

妖精の宿邸に行きたいからね。

あ、そういえば、金竜様にアルベルト兄さんを連れてこいって言われてたような……。

さっき、ポ二金様との対面は果たしていたけれど、副隊長さんがいるから挨拶程度の会話しかしてなかったみたいだし。

……という訳で、リビエスの町に戻ったら、もう一度アルベルト兄さんと会う約束をする。

アルベルト兄さんには、「ちょっと一緒に来てほしい所がある」と言っておいた。

そういえば、ロイド様や赤き竜のみんなはどうするんだろうか?

後で聞いておこう。

それから数時間後――。

ロイド様たちの話し合いは無事に終了し、大公子様は帰っていった。

ゾルジ邸で起こったことの話が終わったあと、アルトゥ教の今後についての話もあったらしい。

アルトゥ教自体は現状維持。でもリビエスにあるアルトゥ教の教会は、レギドール騎士団の調査が終わるまで閉鎖。

アルベルト兄さんたちが所属する第五部隊はアルトゥ教の所属から離れ、レギドールの所属になるのだとか。

元々第五部隊は、アルトゥ教の中でも聖騎士団としてまともに扱われていなかったため、反対意見はなかったらしい。

それから、アルトゥ教が管理している孤児院の全てに調査が入るようだ。

そこはとても気になるところだよね。きちんと調査してほしいと思う。

ちなみに、地下施設で保護された子供たちは、ポーションのおかげで体調はすでに回復しているらしい。よかった、よかった。

その後、ロイド様や赤き竜のみんなにも今後の予定を聞いたところ、ロンダン帝国まで一緒に帰ることになった。

私たちは一度リビエスの町に行きたいので、別行動でも良かったのだけど、私たちの予定に合わせてくれるようだ。

明日、リビエスの町に行って、明後日、レギドールを発つことにしよう。

ティントルの森を出てから二十日ほどだろうか。中々に濃密な日々だった。

同行者も随分と増えた。

ふと、視界の先でウロチョロしているポニドラたちが目に入る。

――お竜様たち、いつまで一緒にいるつもりだろうか?