軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

◆172・さらば、レギドール! □

「おはようございます」

「おはよう」

「おはようございます、リリアンヌ」

妖精の宿邸でクロやシロ、ココちゃんや他の猫妖精たちに「またね!」と再会を約束したあと、私たちはロイド様一行と赤き竜一行がいる宿へとやってきた。

みんなに挨拶をした後、騎獣のレッサーワイバーンたちがいる獣舎へと向かう。

「おはよう、レイヴンラニット」

《グギェ》

地面に伏せるようにして座っているレイヴンラニットに近付き、頭を撫でる。

すると、周りのレッサーワイバーンたちが、一斉に声を上げ始めた。

《グギェェ》

《グギェ~》

《グギェッ》

「何!?」

「《レイヴンラニットだけズルい。自分たちも撫でて》……だそうです」

「え……」

――いつから私は、レッサーワイバーンたちのアイドルに?

「リリアンヌの魔力は心地好いからにゃ」

「え? 魔力漏れ防止の魔法使ってるのに?」

「魔力は漏れておらぬが、魔力漏れ防止の魔法は使っているからであろ?」

「それって、自分の身体を自分の魔法で覆っているから、私の魔力の気配があるってこと?」

「そうだ」

「そうなんだ……」

魔力の多さを悟られると怯えられるけど、ほんのり魔力なら魔獣にモテるということだろうか?

魔獣だけならともかく、魔蟲にはモテたくないな。

《グギェェ》

《グギェ~》

《グギェッ》

「ああ、はい、順番ね」

「まるで、リリアンヌが主のようだな」

「凄ぇな……」

「さすが、リリィ」

少し呆れ顔のロイド様とポカンとした顔のライ兄さん、そして、なぜかちょっぴりドヤ顔のルー兄を横目に、騒ぐレッサーワイバーンたちを宥めながら順番にナデナデしていると、アルベルト兄さんと副隊長さんがやってきた。

お見送りに来てくれたようだ。

本当は、大公子様もロイド様のお見送りに来るつもりだったらしい。

でも、それどころではないだろうと、ロイド様が断ったようである。

確かに、今のレギドールにはやることがいっぱいあるだろうからね。

その代わりと言っていいのか分からないけれど、アリーチェ嬢から『また来てね』という旨の手紙を受け取った。

貴族でもない私がアリーチェ嬢に会うことはもうない気がするけれど、『お手紙をありがとうございます』という返事は出しておくとしよう。

「隊長も来たがっていたんだが、医者にまだ寝てろと言われていてな……」

ああ、〈ハイ・ヒール〉で治療したとはいえ、隊長さんも重傷だったからね。

「お大事に……」

「これ、持って帰ってくれ」

「ん?」

「土産だ。こっちは嬢ちゃんに、菓子だ。こっちは酒なんだが……」

そう言いながら、ポニドラや猫妖精たちを見る副隊長さん。

「にゃ! 酒か、吾輩がもらおう!」

「ナツメ、僕も呑むからね!」

「《我も呑むぞ》」

「《俺も!》」

「《私もいただこう》」

「《私も呑むわよ》」

ナツメさんとレイとポニドラたちが、お酒に食い付いた。

私も交換ショップでお酒を入手することはできるけれど、お酒は出したことないからね。

だって、幼女なリリたんが呑む訳にはいかないし。

みんな、お酒がほしい時は自分でどうにかしてくれ給へ。

「《酒ならもらってやらなくもない》」

明後日の方向を向いたポ二黒様がボソッと呟いた。

ツンデレか。

「ありがとうございます」

「喜んでもらえたようで良かったよ」

「あ、そうだ!」

「ん?」

「これ、あげますね!」

「え……?」

「アルベルト兄さんにもあげるね」

「あ、ああ……」

「何か、回復魔法が使えるっぽいので、隊長さんにもどうぞ」

「え、ああ……」

ふと思いたって、副隊長さんとアルベルト兄さんにポニワをあげた。

貧血にはあまり意味がないだろうけれど、隊長さんの分も渡しておく。

見た目はアレだが、まぁ、あんまり気にしないでほしい。

「わたちも持ってるにゃの、ポーちゃん! 一緒ね!」

「ああ、そう……だな……」

「世話の仕方を教えてあげるにゃにゃ!」

「ああ、ありがとう……」

やはり、副隊長さんは小雪ちゃんに弱いらしい。

いや、アオくんにも弱いな。

きっと彼は、もふもふ好きなのだろう。

「リリアンヌ、本当に世話になった」

「ふふっ、昨日も聞いたよ~」

「何度言っても足りないくらいだ。リリアンヌは命の恩人だからな」

大袈裟だなぁと思ったけれど、発見した時は血塗れだったことを思い出した。

あの時は、怖かった。

『もふもふに囲まれながらのスローライフ、うふふ♪』とか思っていたら、我が家の結界の上で衝撃の事件現場が展開されていたのだから。

あれから約一ヶ月。

嫌な気持ちになって落ち込むこともあったけれど、楽しいこともたくさんあった。

いろんな人や、いろんなもふもふにも出会えたし、じぃじにも会えた。

旅に出て良かったと思う。

春になったら、また旅に出るのもいいかもしれない。

「アルベルト兄さん、またね!」

「ああ、また!」

「副隊長さんもお達者で」

「嬢ちゃんも気を付けてな」

お別れの挨拶を済ませたら、いよいよ出発だ――。

「そろそろ行くか」

ロイド様の号令で、それぞれがレッサーワイバーンに乗る。

私は帰りもロイド様の騎獣、レイヴンラニットに乗せてもらうことになった。

ナツメさんも一緒に乗るつもりらしい。

お腹のポッケにレイ、ポンチョのポッケにタマオとモチコ、バッグのポッケにポニドラが五体。

ポッケというポッケに小さき生命体が満載だ。

私たちの所だけ、生命体密度が高いな。

トラさんとロックくんはルー兄と一緒に、ブラッドリーさんの所。

雪丸さんは、ユージオさんの所だ。

雪丸さんはこのままパドラ大陸に残るのかと思ったけれど、帰りも一緒に来てくれるらしい。

まぁ、ポ二金様もいることだしね。

正直、私たちの中で一番常識的だったアルベルト兄さんが抜けたので、その次に割と常識的な雪丸さんがいてくれるのは非常に心強い。

だって……と、同行者たちを見回す。

・雪丸さん 塩対応だけど常識的な超大型犬

・ロンダン組 常識にズレを感じる皇子と護衛

・赤き竜 常識にズレを感じるA級冒険者

・ルー兄 常識にズレを感じる甘党な忍者

・レイ 常識に興味がなさそうな半竜人

・リリたん 常識を知らない異世界転生幼女

・ナツメさん 常識を気にしない食いしん坊猫

・ロックくん 常識を気にしない食いしん坊猫

・トラさん 常識を気にしない食いしん坊猫

・ポニ白様 ぶっ飛んでいることが常識な竜

・ポ二金様 ぶっ飛んでいることが常識な竜

・ポ二銀様 ぶっ飛んでいることが常識な竜

・ポ二青様 ぶっ飛んでいることが常識な竜

・ポ二黒様 ぶっ飛んでいることが常識な竜

――あ、思った以上に変なメンバーだった。

ま、まぁ、あとはもう、帰るだけだからね。

来た時はレギドールのいくつかの町に寄ったけれど、今回はリビエスの町から、直接アーメイア大陸のルプロの町を目指して飛ぶらしい。

ルプロを経由するのは必須行程のようなので、そこで休憩するそうだ。

ルプロで食べたカッキーは美味しかった。

帰りも時間があれば、カッキーを買いに行こう。

「カッキー♪ カッキー♪」

「にゃっ? カッキー♪ カッキー♪」

「にゃ~? カッキー♪ カッキー♪」

「にゃん? カッキー♪ カッキー♪」

「「「「「(カッキー♪ カッキー♪)」」」」」

私と猫妖精たちがカッキーに思いを馳せて、思わずご機嫌に口ずさんでいると、どこからともなく後に続く小声が聞こえた。

「……お前たち、気持ちは分かるが、まだ飛びだしてもいないんだぞ。気が早過ぎだ」

どうやら、私たちと同じくカッキーに思いを馳せていたのは、ロンダン騎士たちだったようだ。

ロイド様が少々呆れた顔をしているが、気持ちが分かると言っている時点でお察しである。

他のメンバーも、頭の中でカッキーを思い浮かべていそうな顔をしていた。

「《カッキーとは、海で採れる貝のことか?》」

「はい」

「《……食べるのか?》」

「美味しいですよ」

「《そうか、それは食べねばな》」

「《楽しみね》」

「《アズールは食べたことないのか?》」

「《ないわ。食べようと思ったこともないもの。貴方だって、近くに魔獣がいても食べようと思わなかったでしょう?》」

「《……そうだな》」

「エビも美味しいですよ」

「《ふむ》」

「いろいろ食べればいいよ」

「《そうしよう》」

「にゃっ! 早く食べに行くぞ!」

という訳で……。

「いざ行かん! 目指せ、カッキー!」

「「「「「おぉー!」」」」」

飛び立つ瞬間、アルベルト兄さんたちの羨望の眼差しに気が付き、私はとある瓶をアルベルト兄さんに向かって放り投げた。

驚いた顔で瓶を受け取ったアルベルト兄さんと副隊長さん、そしてアオくんと小雪ちゃんに手を振りながら、私たちは上空へと舞い上がる。

そして私たちは食への煩悩を大いに抱えつつ、レギドール神皇国から飛び立ったのであった。

――さらば、レギドール!

「これは!」

「何だ、それ?」

「カッキーにかけると最高に旨くなるものです」

「……アルベルト、市場寄ってくか」

「エビも食べたいです」

「おう」

「副隊長、ハマグリンもいいですか?」

「………………」

「副隊長しゃん、わたちも食べたいにゃの!」

「俺も食べたいにゃにゃ!」

「……好きに選べ」