作品タイトル不明
966話 チームカナデ・その4
「カナデさん、リファさん!」
ミルフィーユは、慌てて二人のところに駆け寄る。
そして治癒魔法を……
「させるか」
回復役を潰すために、ターゲットがミルフィーユに移る。
ゴウッ! と空気を巻き込むかのような強烈な一撃。
直撃したらタダでは済まない。
ましてや、ミルフィーユは人間だ。
最強種のような強靭な体は持たず……
一撃で戦線離脱ということもある。
そのまま死を迎えてしまう、という可能性もある。
だからこそ。
「甘いですよぉ」
誰よりもそのことを理解しているミルフィーユは、しっかりと対策を練っていた。
「っ!?」
ミツキの拳が放たれて……
ガァンッ!
鉄を叩いたような音が響いて、拳が止まる。
ミルフィーユによる魔法障壁だ。
自分が狙われる可能性が高いと考えて、あらかじめ詠唱しておいた。
何度も防げるほど強力ではないが、ここぞという場面で活躍してくれれば十分。
現に、完璧なタイミングの攻撃をスカされたミツキは、わずかにペースを乱されていた。
そこにミルフィーユが攻撃魔法を放つ。
ミツキは一瞬、迷いを表情に見せた後、後退した。
ミルフィーユのさらなる隠し玉を警戒してのことだろう。
その間に二人の様子を見る。
「大丈夫ですか?」
「う、うん、なんとか……」
「回避が間に合わない……速い」
カナデとリファが、いたたた、と言いつつ立ち上がる。
そんな二人に治癒魔法をかけて……
ミルフィーユはわずかに顔をしかめた。
特にリファの怪我が酷い。
今すぐに本格的な治療をしないと、命に関わるかもしれない。
しかし、それをミツキが許してくれるかどうか……
「ボクは大丈夫」
リファは、全身がボロボロなのに、まったく気にしていない様子だ。
むしろ、都合がいいという感じで、不敵な笑みを浮かべている。
ミツキが眉をひそめる。
「なんだ、お前? なにがおかしい?」
「ボクを傷つけてくれてありがとう」
「にゃ!? り、リファがドMに……」
「こ、怖いぞ……」
カナデだけではなくて、ミツキもドン引きだった。
ただ、リファとて、意味もなくそんなことを言ったわけではない。
傷ついて、ダメージが蓄積されたものの……
それは、決して無駄なことではない。
「これで、条件は満たされた。ボクはまだ未熟だから、自力では無理。でも……」
「こいつ……!?」
流れる血がリファの髪を赤く染める。
それは、さながら化粧のよう。
綺麗に、艶やかに……真紅の髪が出来上がる。
同時に、残りの血が固まり、とあるものを形成する。
兜、鎧、小手……
そして、鎌。
血で作られた武装を全身にまとう。
それは美しく……
同時に、全てを従えるかのような圧を放っていた。
「これが、ボクの『覚醒』……自分の血で、自分に適した最高の武具を作る。これまでのようにはいかないよ?」
「お、おおおぉーーー……リファ、かっこいい!」
カナデは、目をキラキラと輝かせていた。
ともすれば、リファは変身してみせた。
そういう物語はカナデの琴線に触れるところがあり……
とてもうらやましいらしく、私もしたいなあ……なんて呟いていた。
「ちっ」
ミツキは、一度、後退して距離を取る。
熟練度は下。
しかし、二人が覚醒したとなると厄介だ。
今までのように圧倒することはできないだろう。
それでも。
「勝つのは私だ。お前達は、ぶっころす」
「ふふん、そんなことさせないよ」
「ええ、そうですねぇー。ヒーラーとして、二人を全力で支えて、守ってみせますから」
「そしてボクは、逆にお前を叩く」
「やってみろ、ボケ」
とても口が悪いミツキだった。
ただ、その口元には笑みが浮かんでいる。
強敵と対峙して、己の役目を果たすために全力を出すことができる。
彼女は戦士だ。
だからこそ、リファの覚醒も、どこかで歓迎していた。
相手に全力を出させて……
その上で叩き潰す。
「いくよ」
「いくぞ」
そして……両者は再び激突する。