作品タイトル不明
947話 ラストレムナント
「集まったようだな」
中央大陸、王城。
人間、最強種、魔族……
種族を越えて、たくさんの人が会議室に集まり、巨大なテーブルを囲む。
場を仕切るのはエーデルワイスだ。
「まずは現状を説明しよう。説明が終わるまで、余計な口を挟むな。私は邪魔をされるのが嫌いだ」
いくらかの人間は顔を青くしつつ、こくこくと頷いていた。
彼女が『魔王』であることを知っているのだろう。
「北大陸の果て……そこに現れた古城の名前は、『ラストレムナント』と言う。より正しい名称は、『対星核外殻決戦要塞ラストレムナント』……だ」
「大層な名前がついているが……まあ、実際に大層なものだ」
「簡単に言うと、星を脅かす存在と戦うために設計、建造された要塞だ。対人間、対最強種などの戦闘は想定されていない」
「ただ、その身に宿す炎は『すさまじい』の一言に尽きる。ラストレムナントは無数の武器、兵器を抱えている。私達が想像もつかないような切り札も持つだろう」
「正直、私もラストレムナントの全てを把握していない。先代が、アレの設計図を見た。実際に、建造に関わったこともある。ただ、最後まで見届けていないからな。全容はわからん」
「ただ……アレの刃は苛烈だ。人間を滅ぼすなど、たやすいことだろうな」
「付け足すのならば、とても堅牢な要塞でもある。超高度を飛行して、結界を全域に張り巡らせることも可能。攻防兼ね備えた、完璧な『兵器』だ」
「しかし、アレの真価は、その身に宿す刃ではない。別の機能にある」
「『星核進化』……星の中心にアクセスして、この星を自由に作り変えることができる。それこそ、『人間だけが生存不可能な環境』を構築することも可能だ」
「ラインハルトの狙いは、まさにソレだろう。だからこそ、ラストレムナントという過去の遺物を掘り返して、起動した。このまま放置すれば、すぐとは言わないが、人間は生きていくことが不可能となり、やがて絶滅するだろう」
「……以上だ」
「「「……」」」
エーデルワイスの話しが終わり……
そして、皆、黙ってしまう。
北大陸の果てで浮遊する古城。
それは、遥か昔に作られた兵器で……
人間だけを滅ぼすことが可能。
「ラストレムナント……そのようなものが、本当に存在するのか?」
「いや、しかし、古城が現れたのは確認されているぞ?」
「星に干渉するなどと、そのような話は……」
国の高官は、いまいちピンと来ていないみたいだ。
それも仕方ない。
あまりにスケールの大きい話で、正直、俺も頭が追いついていない。
「ちっ……まさか、あんなもんが残っていたとはな」
「妾達の先祖が破壊したと聞いていたが……むぅ。密かに再建されていたか?」
「あれはまずいですね……ただそこにあるだけで、周囲の環境に大きな影響を与えると聞いたことがあります。避難先に、と考えたことはありますが、それが問題で諦めたくらいですから」
アルさん達は心当たりがある様子で、苦い表情を作っていた。
前に出ていたエーデルワイスが戻ってきて、俺の隣に座る。
それから、ちらりと視線をこちらに。
「我が主は、私の話を信じられないか?」
「信じているよ」
「ほう」
「ただ、あまりにスケールが大きいものだから、頭が追いついていない、っていうところが本音かな」
とはいえ、これが現実。
実際に古城は存在して、ラインハルトも動いているのだろう。
そして、エーデルワイスが語った内容も全て事実。
ラインハルトを止めないといけない。
そうしなければ人間は滅んでしまう。
ラインハルトの想いは、わからないこともない。
愛する人を失い、人間に絶望して、道を失い……
全ての間違いを消すために行動を起こした。
愛する人の想いが正しいと、間違っていないと……そして、汚されないために立ち上がった。
もしも、カナデが殺されたら?
みんなが殺されたら?
俺は、俺でいられる自信はない。
ラインハルトのようになると思う。
彼は、もう一人の俺だ。
まったく別の道を歩くことになった、もう一つの可能性だ。
「我が主は、どうするつもりだ?」
「もちろん止める」
「即答か。迷いがないな」
「ラインハルトが考えていること、わからないでもないけど……でも、今の俺は、それが間違いだ、って思えるから」
どれだけ絶望しても。
どれだけ失望しても。
それで人間を滅ぼしていい理由にはならない。
ろくでもない人間は多い。
どうしようもない人間も掃いて捨てるほどいる。
それでも。
アクスやセル。
ユウキにサーリャさま。
ホライズンの人達、クリオスの人達……
今までの旅で出会った、たくさんの人を思い浮かべて。
そんな彼ら、彼女らに生きる価値がないとは思えない。
きっと、一緒に笑顔を浮かべることができるはずだ。
「ラインハルト……あんたは、答えを急ぎすぎなんだよ」