軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

944話 エーデルワイスの能力

「頼むから、私と同じ存在に堕ちてくれるなよ?」

エーデルワイスは、どこか切ない様子でそう言う。

俺のことを心配してくれている。

その気持ちがとても嬉しい。

こんな時だけど、笑顔になってしまいそうだ。

ただ……

彼女の今の台詞は自虐も含まれているようで、そこが気になる。

『魔王』についての問題は、まだ解決していない。

基本的な問題を先送りにしただけ。

エーデルワイスは、今もなお『魔王』であり、その力と覚悟を託されたままなのだ。

その重荷を取り払ってあげたい。

そして、なんてことのない普通の女の子に戻ってほしい。

「……わかった。『魔王』の能力は使わないよ」

「くれぐれも頼むぞ? 絶対に使うな」

「なんで、そんなに念押しされるんだ……?」

「誰とは言わないが、我が主は無茶をする性格と聞いているのでな」

誰だ、そんなことを言ったのは?

……全員かもしれない。

「まあ、暗い話はここまでにしておこう。それよりも、私と契約したことで得た能力を確かめることにしよう」

「そうだな」

酒とつまみを奥に移動させた。

それから庭に降りて、エーデルワイスと対峙する。

「で……どうして構えるんだ?」

「たぶん、能力は戦闘用だろう。なれば、戦うことがわかりやすいと思わないか?」

「そうかもしれないけど……また、エーデルワイスと戦うのか」

訓練のようなものだから、妙に気負うことはないんだけど……

「どうした、我が主よ? すでに疲れたような顔をしているぞ」

「訓練だとしても、またエーデルワイスと戦うと思うと、大変だなあ……ってね」

「良い鍛錬になるではないか」

「なりすぎるから困るというか……まあ、いいか」

せっかく、ここまで付き合ってくれているんだ。

それに応えるべく、がんばらないと。

「とりあえず、適当にやってみるか」

「うむ。適当が一番だ」

互いに笑い、

「「ふっ!」」

同時に息を吐いて、前に出た。

――――――――――

……30分後。

「おぉおおお……」

青い顔をしたエーデルワイスが、床の上に転がっていた。

時折、ぴくぴくと痙攣している。

「ほら、水」

「うむ……すまない」

「そんなに酒に強くないなら、そう言ってくれればいいのに」

酒を飲んですぐに運動。

思い切り気持ち悪くなったらしく、エーデルワイスは陸に打ち上げられた魚のようになっていた。

最強種は、大抵、アルコールに強いのだけど……

まあ、そこは個体差があるのだろう。

苦笑しつつ、介抱する。

「大丈夫か?」

「……すまない、背中をさすってほしい」

「こうか?」

「ああ、少し楽になった。それと……手も握ってくれないか?」

「はい、どうぞ」

「うむ……心地いいな」

エーデルワイスが普段より少し幼く見えた。

甘えてくる子供みたいだ。

二日酔いではあるものの……

体調が悪いから、ちょっと不安になっているのかな?

そういう時は、誰かが側にいると安心するからな。

「酒に弱いなら、無理をしなくてよかったのに」

「……知らなかったのだよ。私が酒に弱いなんて」

「そうなのか?」

「ずっと眠り……起きてからは、戦争のことだけを考えていたからな。酒なんて飲む機会はなかった」

「……そっか」

「ただ、無理をした甲斐はあった。おかげで、能力が判明しただろう?」

軽い手合わせをして……

その中で、エーデルワイスと契約をしたことで得た能力について判明した。

とても強い力で、ラインハルトとの戦いに役に立ちそうだ。

「エーデルワイスのおかげだ、ありがとう」

「……うむ」

「ただ、これからはあまり無理をしないでくれよ? ちょっと心配になるからな」

「我が主がそれを言うか」

「うっ」

たぶん、みんなから俺の無茶について色々と聞いているのだろう。

エーデルワイスのジト目に、俺は、ついつい怯んでしまう。

「だから……私も無理をするぞ」

「それは……」

「……お前の役に立ちたいのだ」

重ねた手に力が込められる。

「我が主に笑ってほしい、元気でいてほしい。隣にいてほしい、喜んでほしい。そう思うから……時に無茶をする。私も、なにかしたい。一緒に歩いていきたいと、柄にもなくそう思ったのだ」

「そっか」

その気持ちはよくわかるから、これ以上はなにも言えない。

「……なあ、我が主よ」

「うん?」

「今夜は、月が綺麗だな」

「そうだな」

しばらくの間、二人で一緒に静かな時間を過ごすのだった。