軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

932話 深淵

大地の下。

海よりもまだ深く。

光が欠片も届くことはなくて。

前人未到の地。

深淵。

星の中心に位置する場所に、ラインハルト達の姿があった。

大きな街が一つ、丸ごと収まりそうな広大な空間。

下に光が集まっていた。

海に似た青い光の粒子が穏やかな波を打っている。

その上に、小さな島がいくつも浮いていた。

おとぎ話を再現したかのような光景だ。

その浮島の一つに屋敷が建てられていた。

「あー! マジで久しぶりの我が家だー!」

リビングで、モナがソファーにダイブした。

そのままぱたぱたと足を振る。

「はしたないわよ、モナ」

「いいじゃん、これくらい」

「スカートの中、見えてもいいわけ?」

「べっつにー? ここにいるの、ボクらだけじゃん」

「マスターもいるんだけどね」

「それはそれ。それでマスターが変な気分になったら、きっちりボクが責任とるよ。くふふ」

「「あぁ?」」

「ヒィ!?」

ミツキとアリエイルに睨まれて、ついでに殺気をぶつけられて、モナは本気で怯えた。

「マスター、お茶をどうぞ」

「ああ、すまないな」

一方で、ラインハルトはオフィーリアにお茶を淹れてもらい、くつろいでいた。

人間を滅ぼすという宣言を違えるつもりはない。

本気だ。

とはいえ、魔王と戦った影響は大きい。

しばらくは療養に務めないといけない。

同時に、策を実行に移すための準備を進めていこう。

ある程度の時間はかかるだろうが……

「問題はない」

ラインハルト達が星の核……深淵を本拠点にしているなんて、誰もわかるわけがない。

仮に突き止めたとしても、移動手段を確保できない。

ここは、究極の天然の要塞なのだ。

「それで」

「「「?」」」

ラインハルトが静かに口を開いて、ミツキ達は怪訝そうな顔に。

「お前達は、本当に問題ないのか?」

「なんのことだ?」

「ボクがマスターを美味しくいただく、っていう……」

「「あぁ!?」」

「ピィ!?」

「……まともに話をさせろ」

ため息を挟みつつ、ラインハルトは続きを口にする。

「このまま俺についてきていいのか、ということだ」

ラインハルトの目的は、人間を滅ぼすこと。

老若男女関係なく、全ての人間をこの星から排除する。

それは虐殺だ。

暴挙だ。

大義があろうとなかろうと許されることではない。

ラインハルトは、大罪人として記録されることだろう。

だとしても、ラインハルトは足を止めるつもりはない。

人間という不完全な生き物の存在を認めることはできない。

他の生き物のために。

この星のために。

そしてなによりも。

愛した人の存在を証明するために。

ただ、それを『正しい』と主張するつもりはない。

もちろん、間違っているつもりもないのだけど……

正しいと信じて押しつけて、強制させるつもりはない。

あくまでもラインハルトがそう信じているからこそ、そう行動するだけなのだ。

それをミツキ達にも押しつけていいものか?

自分の覇道に巻き込んでいいものか?

ラインハルトは、そんな迷いを抱いていた。

「やれやれ、ですね」

オフィーリアが苦笑した。

その珍しい反応に、ラインハルトはわずかに目を大きくした。

「そのようなことを今更問われるとは、思ってもいませんでした」

「ちょっと、私達のことを舐めすぎじゃにゃい?」

「少し傷ついてしまいそうね。その程度に思われていたなんて」

「ボクは悲しいぜ」

「む……?」

困惑するラインハルト。

そんな主を見て、ミツキ達は優しく笑いかける。

「私は、マスターについていくだけ。それはもう、ずっと昔に決めた。今も変わらない。やることは単純」

「そういうことよ。今になって、覚悟を問われるとは思っていなかったわ」

「ボクら全員、最後までマスターについていく覚悟はあるぜ。とっくに、ね」

「行き着く先がどこであろうと、お供するまでです」

「……そうか」

ラインハルトは苦笑した。

それから、オフィーリアが淹れてくれた紅茶を再び飲む。

それは優しい味がして、とても温かい。